2024年03月29日( 金 )

東電が九州全県で電力販売を発表~狙いは「転勤族」、低価格以外で差別化図る

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 東京電力ホールディングス傘下の東京電力エナジーパートナーは、東北地方と九州全県での家庭向け電力の販売を行う。同エリアの一般的な電力販売・従量電灯Bの価格と比べ3%程度安いとしている。

 サービスエリア拡充の背景には新電力の攻勢があるといわれているが、いっぽうで電力販売はすでに値下げ合戦の様相を呈している。事業者のなかには、一般的な電力販売プランと比して年間2万円低減すると試算するプランもあるが、その価格差の内訳には契約に際して与えるギフト券の価格が含まれているなど、低価格路線にも限界がある。再生可能エネルギー由来を打ち出す事業者も少なくない。

 同社はこれまで中部地方と関西地方でも同様にサービスを展開してきた。今回のエリア拡大においては、スタンダードプランのみを提供するとし、「プロモーション展開は今のところ考えていない」(同社広報)とするなど落ち着いている。

 そこには、必然的に電力会社の切り替えが必要な転勤者のニーズを拾いたいという戦略がある。引っ越しに際しては現在の契約をまず廃止(解除)し、転居先で新しい契約を結ぶことになる。そこで、関東からほかの地域へ移るという廃止の連絡を受けた際に、転居先でも住所変更のみで変わらず提供できるという利便性を武器にしたい考えだ。

 関東は電力需要の大きさから地方の新電力も所在地域に加えて提供エリアにしているなど、競争がとくに激しい。先述のように特典が付いたプランもあるため、単純な低価格戦略では顧客の定着は難しい。

 今回のエリア拡大は、九州電力にとっては新規顧客を獲得する機会を減らすことに繋がる。同社は4月に販売価格の値下げを行ったばかりだが、今となっては周回遅れの戦略だったといえる。電力には既に安さ以外の部分――利便性や付加価値が問われている。

【小栁 耕】

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