2024年04月19日( 金 )

街全体に最先端のテクノロジー 竹芝地区でスマートシティ共創へ(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ
竹芝地区開発計画イメージ

ソフトバンクの役割――

 ソフトバンクは、移転予定の本社オフィスのデザインをWeWorkに委託することで、部署をまたぎ、コミュニケーションを深められるオープンイノベーションの創出を目指す。また、東京のほか横浜、名古屋、大阪、福岡のWeWorkの拠点を最大限活用し、場所や空間・コミュニティに縛られない、イノベーティブでクリエイティブな働き方を追求するという。

 ソフトバンク・今井氏は、「竹芝に本社を構えながら、社員は場所に縛られない職場環境を構築します。仮に今日のお客さまが横浜であれば、横浜のWeWorkで仕事をこなすことができる環境を整えます。WeWorkは年内に国内30店舗まで広げたい。この場でデベロッパーの方がいれば、ぜひWeWorkの入居の検討をお願いしたい」と呼びかけた。

 それでは、東急不動産とソフトバンクが描くスマートシティとはどのようなものか。これについて今井氏は、「最先端のテクノロジーの実験場」と語る。

 温度や二酸化炭素濃度などによる環境の変化や、歩行者の滞留、設備の不具合、公共交通機関の遅延など、エリア内で発生するさまざまな「イベント」をデータとしてリアルタイムに収集し、時間帯や個人の位置情報、行動の制約やそのほかの予測などと関連付けて分析することで、竹芝地区に滞在する人の的確な判断や最適な行動を支援するアプリケーションを提供できるプラットフォームを導入するという。

 具体的な活用事例としては、ビル内での映像解析やセンシングにより不審者や異常な行動、設備の不具合などが検知された場合、屋内位置情報システムにより発生場所から最も近くにいるスタッフのスマートフォンに自動で状況を通知して対応を促し、迅速な警備を実現する。

 また、指名されたスタッフがスマホで対応依頼を受諾すると、その情報がほかのスタッフに自動で通知されるため、スタッフ間で効率的に情報を共有することが可能になる。

 さらに、動画顔認証システムをセキュリティシステムと連携させ、社員がICカードなどをゲートにかざすことなくスムーズに入館できるようにする。単なる顔認証で社員を確認するだけではなく、その社員は誰であり、何階のフロアにいる人かもわかるようにし、それをエレベータと連動して、動く仕組みにするというものだ。エレベータの混雑状況やその予測をも配信し、エレベータの混雑緩和が図られるほか、公共交通機関の遅延を検知した場合、最適な代替手段をスマホアプリやサイネージで案内する仕組みも取り入れられる予定だ。

 ソフトバンクは5Gネットワークを整備することで、5Gの「超高速」「大容量」「低遅延」「多接続」「高信頼」などの特長を生かし、ロボティクス、モビリティ、AR、VR、ドローンなどの幅広い領域でさまざまな事業者と共創し、地区の発展や課題解決を実現するスマートシティのモデルケースの構築に取り組むことになる。

 「たとえば、電車が遅延すると、帰宅方法が変わるかもしれません。交通状況や店の混雑データが事前にわかれば、交通手段の変更やランチで店に行く選択があります。そういうさまざまな情報がリアルタイムにスマホに伝達されれば、行動の選択の幅が広がります」(今井氏)。

東急不動産の役割――

東急不動産の岡田副社長

 地震や各種災害に強い建物構造を備えた建物とするとともに、エネルギープラントを導入するなど、最先端のBCP計画で入居企業の事業継続性をサポートする東急不動産の岡田氏は、次のように話した。

 「計画地から浜松町駅まで、空中の歩行者専用のデッキを設けます。浜離宮、芝離宮のような緑も隣接していることから、最大の魅力は横浜から房総半島まで一望できるベイエリアの眺望です。さらに、オフィスビルでは最高水準となる非常時5日間の電力供給が可能です。浸水、高潮対策として、受変電設備などの主要設備は2階以上に設置しており、地域の防災拠点として、オフィスロビーなどの低層部共用空間を一時滞在施設として整備するとともに、6,300人・3日分の防災物資も完備しています。竹芝を最先端技術のショーケースにしたい。東急不動産がハードとエリアマネジメント、ソフトバンクがテクノロジーを担当し、両社で竹芝をスマートシティとすべく共創することになりましたが、この事業は2社だけではできません。これから多くの企業と一緒に、サービスの提供に向けた社会実装へつなげていきたい」。

 竹芝は2020年をメドにスマートシティへと生まれ変わり、テクノロジーの実験場へと変貌する。近隣の再開発プロジェクトとともに、浜松町・竹芝周辺がさらに賑やかになりそうだ。

竹芝でスマートシティの実現へ

(了)
【長井 雄一朗】

「(仮称)竹芝地区開発計画」の概要

事業主体:(株)アルベログランデ
(「(仮称)竹芝地区開発計画」を整備するため東急不動産と鹿島建設が設立した事業会社)
所在地:東京都港区海岸1-20-9ほか
敷地面積:約1万5,590m2
延床面積:約20万1,159m2
開業:2020年(予定)

(前)

関連記事