2024年04月19日( 金 )

見るだけで音楽を味わえるアート 目に見えない「ときめき」が絵のなかに躍る「山田ゆかり展 ~夏の宵~」

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目に見えない「ときめき」をかたちで描くアート

 雨の日に、水滴がついた窓越しに外の景色を眺める。何気ない毎日の風景に色がついたようだ。

 6月18日~8月31日に、土屋ホーム・軽井沢モデルハウスで開催された山田ゆかり氏の個展「山田ゆかり展 ~夏の宵~」の入り口では、写真に水滴をあしらったアート写真「All’s right with the world!」が出迎えてくれた。

 毎日暮らしていると、つい忘れてしまいがちな「幸せ」は、空気のなかにある水分のようで目に見えない。絵を見ていると、さりげない日常の風景のなかにも「幸せがあるよ」と語りかけてくれているかのようで、少し立ち止まって普段の景色を見たいと感じさせてくれる作品だ。

 見たり聞いたりしているだけでは気づかない「感覚」を、伝わるように表しているのが、山田氏独自のアートだ。日本や海外のさまざまな風景を写真で切り取った1コマや、クラシック音楽の奥に見え隠れする人の気持ちを、絵の具を使って自由に描いている。

山田ゆかり

写真の奥に潜むものが、カラフルな色で豊かに伝わってくる

 個展会場に入ると、写真の1コマの裏側に潜む気持ちや、その場面の空気の色合いを描いたシリーズが並んでいる。撮影した写真に絵の具を重ね、奥深い世界観を表した作品だ。

 アート作品のベースになる、さまざまな表情を見せる写真は、素材を探すところから始まるという。桜や鯉の写真などは国内で撮影もするし、日本では見られないような景色を探して、欧米を中心に海外にも撮影に出かけている。

 写真にさまざまな色の絵の具を重ねるという新しいアートでありながら、見ていると山田氏が好きなイギリスのトラディショナルな感覚が伝わってきて、そのバランスが絶妙な作品の「味」をつくっている。

音楽が見て味わうアートに

 オペラなどのクラシック音楽を聞き、浮かんできたインスピレーションから制作した作品が、「In short measures life may perfect be.」のシリーズだ。

 音楽と絵画のコラボレーションは、20年間、バイオリンを演奏してきた山田氏だからこそ描ける世界だ。

 絵を眺めていると「白鳥の湖」や「エフゲニー・オネーギン」の音楽の世界が伝わってくる。音楽が奏でる弾んだテンポや、落ち着いた流れ、作品に登場する登場人物の気持ちが色鮮やかに描かれている。

 リビングのスペースには、場面ごとの音楽を描いた「白鳥の湖」のシリーズが並ぶ。各場面の音楽のニュアンスや空気感が新鮮なタッチで自由に描かれており、絵の前でつい足を止めてしまった。

秋には中国・上海で個展を開催

 山田氏は、これまで海外の展覧会にも出展しており、今は10月に中国・上海で開かれる展覧会に向けた準備をしているという。

 外国でつくられたアートを見るとき、人は自分の国にはない文化に惹かれがちだ。だから、欧米人はアジア的な文化に憧れがあり、日本らしいアートや和を感じる作品に人気がある。一方、中国では、日本は気軽に行ける旅行先でもあるので、ヨーロッパへの憧れが強く、ヨーロッパの写真を使った作品がとくに人気だという。

 絵画の枠にとらわれず、自分の感性を大切にして独自の切り口で描かれている山田氏のアート。これから制作されるシリーズでは、いったいどんな世界が広がっているのだろうか。今後の作品が楽しみだ。

 

【石井 ゆかり】

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