2024年04月19日( 金 )

「憲法九条」ほどノーベルの遺言を忠実に反映したものはない!(後)

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国際ビジネスコンサルタント 浜地 道雄 氏 

国際ビジネスコンサルタント 浜地 道雄 氏
慶應大学 OBクラブ「萬來舍」(三田)にて

<プロフィール>
浜地道雄(はまじ・みちお)

 1943年、上海生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、ニチメン(現・双日)に入社。貿易大学で学んだ後、石油部に配属となり中近東に駐在。世界初の原油長期DD(Direct Deal)に成功。45歳で退職し帝国データバンクへ。アメリカ支社(NY)設立後、翻訳会社、日米通信会社を経て2002年に独立。その後外資系数社のコンサルタントを務める。現在は世界最大規模の国際教育事業者でノーベル博物館のスポンサーでもあるEF(Education First)ジャパン(株)など数社の顧問を務める。長年、(社)日本在外企業協会の月刊誌「グローバル経営」に「ビジネス英語エッセー」を連載中。

ICANの受賞は、同時に被団協の受賞を意味する

 ――浜地さんは「憲法九条」はなぜ「ノーベル平和賞」に相応しいとお思いですか。

 浜地 私は現在「憲法九条にノーベル平和賞を」と裏方として活動しています。しかし、誤解していただきたくないのは、ノーベル賞のHPに載っていることですが、「ノーベル平和賞の授賞対象は個人か団体に限られる」となっており、「憲法九条」そのものはノーベル平和賞を受賞できません。また私はICAN(各国政府に対して、核兵器禁止条約の交渉開始・支持のロビー活動を行う目的で設立された国際的な運動の連合体)の川崎哲共同委員とも話しているのですが、「憲法九条」と「戦争放棄」と「核兵器廃絶」は三位一体だと考えています。

 そこで、私は2017年にICANが「ノーベル平和賞」を受賞したときには、「九条の会」と「被団協」(日本原水爆被害者団体協議会)をセットで推薦(ノミネーション)活動を行いました。被団協とは、広島・長崎で原爆の被害を受けた被害者の生存者(被爆者)によって都道府県ごとに結成されている被爆者団体46団体が加盟する被爆者唯一の全国組織です。

 結果的にICANが受賞し、被団協は受賞できませんでした。しかし、もともと、ICANと被団協は密に連絡をとっており、思いも同じで、友好的なことから、私はICANが受賞したことは、「被団協」の受賞であると確信しています。

戦争を永久放棄し戦力を保持しないと定めた第九条

 「九条の会」とは、日本が戦争を永久に放棄し戦力を保持しないと定めた第9条を含む日本国憲法の改定阻止を目的として、日本の護憲派の作家ら9人(井上ひさし、梅原猛、大江健三郎、奥平康弘、小田実、加藤周一、澤地久枝、鶴見俊輔、三木睦子)によって結成された会のことを言います。この9人の方の多くが亡くなられた現在、12人からなる「世話人会」が設置されてます。

 現在、科学、スポーツ、宗教、医療など各分野、また地域で、「~九条の会」など、九条の会のアピールに賛同する人々の会が結成され、その数は7,000を超えています。

 私は今回、この「九条の会」を「ノーベル平和賞」に推薦すべく活動しています。

今憲法九条に賛同する人々が世界中で増えている

 ――浜地さんは「九条地球憲章の会」の世話人をされています。これは、どのような団体なのですか。

 浜地 教育学者である東京大学名誉教授の堀尾輝久氏が世話人代表を務める、非戦・非武装・非核・非暴力の世界を実現するために「憲法前文・九条の精神で地球平和憲章を創ろう」という会です。世界の危機、日本の危機が叫ばれるなかで、「世界から戦争をなくすために」平和を希求する市民の国際的な思想運動、人類と地球を護る運動を展開しています。今日本の憲法九条とその理念に共感し、賛同する人びとが世界中に増えています

アルフレッド・ノーベルの遺言を逸脱している

 ――「ノーベル平和賞」には極めて「政治的」とか「米国偏重」という声もあります。

 浜地 真偽のほどはわかりませんが、そういう観点からいえば、最初から政治的ともいえます。たとえば、ノーベルはスウェーデンの生まれですが、平和賞の授賞だけは当時の政治的理由で隣国ノルウェーの首都オスロで行われています。

 そのお膝元のノルウェーからも異議申し立てが上がっています。たとえば、同国の平和問題の識者・フレドリック・ヘッファメール氏は、オバマ米大統領受賞など歴代のノーベル賞委員会による決定に対し「アルフレッド・ノーベルの遺言(軍の廃止・削減や平和の推進)から逸脱している」と異議を唱えています。

ヨハン・ガルトゥンク氏、チョムスキー氏も賛同

 ――ところで、浜地さんは、「ノーベル平和賞ウオッチャー」と知られるオスロの国際平和研究所(PRIO)創立者である「平和学の父」ヨハン・ガルトゥンク氏や「世界で最も重要な知識人」(ニューヨークタイムズ)のノーム・チョムスキー氏(MIT)にもお会いになっていますね。先生方の感触は如何でしたか。とくにPRIOは、2014年10月には、戦争放棄を定めた憲法九条を保持してきた日本国民を最有力候補に挙げ、日本国内も騒然としました記憶があります。

 浜地 何度かございますが、最近では、ガルトゥング氏には、昨年5月25日に青山学院大学国際研究センター主催(共催:鹿児島大学)の講演会会場で、チョムスキー氏には同じく昨年5月12日のニューヨークで行われた平和会議“TWO MINUTES TO MIDNIGHT”(人類滅亡まであと2分)の会場でお会いしました。両先生とも、「世界の宝九条」を賛同、励ましてくれています。

国連に飛び「核兵器廃絶」の事務局と会います

 ――時間になりました。今後の活動について教えてください。

 浜地氏 この後、9月にはニューヨーク・国連に飛び「核兵器廃絶」の事務局と会います。

また、志を同じくすると思われる、国際アジア共同体学会(進藤榮一会長)や東アジア共同体研究所(鳩山友紀夫理事長)、またマレーシアのマハティール首相などとも連絡をとって活動を進めていけたら嬉しく思います。私は今年5月には、鳩山元総理も提唱する平和思想「友愛」の創始者である、「リヒャルト・クーデンホーフ伯」の汎ヨーロッパ事務所をウィーンに訪ねました。

 ――浜地さんの国連での活動の成功と今後のますますの進展をご期待申し上げます。

(了)
【金木 亮憲】

【ICAN】(核兵器廃絶国際キャンペーン)
核兵器を禁止し廃絶するために活動する世界のNGOの連合体。スイスのジュネーブに国際事務局があり、2017年10月現在、101カ国から468団体が参加。ICANは、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)を母体に2007年、オーストラリアで発足。2011年にジュネーブに国際事務所を設置して以来、核兵器の非人道性を訴える諸国政府と協力して核兵器を国際法で禁止するキャンペーンを世界的に展開している。2017年に核兵器禁止条約が国連で成立し、同年のノーベル平和賞に輝いた。

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