2024年04月19日( 金 )

約80haの巨大プロジェクトも進行中 福岡の「セントラルパーク」エリア(中)

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舞鶴公園
舞鶴公園

大濠・舞鶴公園の歴史

 「大濠公園」は、都心部にありながら約39.8haもの広大な敷地をもち、うち約22.6haを占める大きな池を有する全国でも有数の水景公園である。福岡市内の都心部のオアシスとして、長らく市民を始め多くの人々に親しまれている。

 池の中央部は柳島、松島、菖蒲島の3つの島と、島をつなぐ観月橋、松月橋、茶村橋、さつき橋の4つの橋で南北に貫かれているほか、池の周囲には全長約2kmの周回園路が整備され、ウオーキングやジョギング、サイクリングを楽しむ人の姿も多く見られる。

 大濠公園のシンボルともいえるこの大きな池だが、実はかつては海とつながっており、「草香江」と呼ばれた博多湾の入り江であったもの。

 慶長年間に黒田長政公が福岡城を建築する際、この入り江の一部を埋め立て、城の守りを固めるために外濠として利用したのが現在のかたちとなる始まりとされる。その後、明治期になって福岡城の廃城にともない、一時はこの大濠を埋め立てることも検討されたが、1927年に開催された「東亜勧業博覧会」を機に造園工事が行われ、29年3月に「県営大濠公園」として開園した。

 その後、49年には池に浮かぶかたちで浮見堂が設置。また、66年3月に開催された「福岡大博覧会」の会場として、公園東側を中心に再整備がなされた。

福岡市美術館
福岡市美術館

 79年には敷地内に福岡市美術館が開館。その後、84年に日本庭園、86年に能楽堂と、園内での文化施設の充実が進んでいった。また、90年代に入るとゴムチップ舗装がなされるなど周回園路の整備が進められ、95年に開催されたユニバーシアード福岡大会では、徒歩競技の会場として利用されたこともある。

ボートハウス大濠パーク
ボートハウス大濠パーク

 現在、園内には遊具などを備えた児童公園も2カ所整備されているほか、水辺には4つの店舗からなる複合飲食施設「ボートハウス大濠パーク」や「スターバックスコーヒー 福岡大濠公園店」などもあり、観光や娯楽、憩いの場として親しまれている。

 その大濠公園の東側に隣接する「舞鶴公園」は、かつての福岡城の本丸跡を中心とした、約39.3haの広大な公園である。城址には約500本の桜が植えられており、毎年春には大勢の花見客で賑わうなど、こちらも市民の憩いの場となっている。

 福岡城は、初代・福岡藩主の黒田長政公が1601年に築城した城で、天守台を中心に、本丸、二の丸、三の丸の4層に分かれ、潮見櫓(やぐら)、花見櫓、多聞櫓など47の櫓が設置されていたと言われている。現存する建物はほぼないものの、石垣群は比較的きれいな状態で残っている。

 1871年の廃藩置県にともない同地に福岡県庁が置かれ、76年に福岡県庁が中央区天神に移転した後は、旧陸軍第12師団歩兵第24連隊駐屯地が置かれていた。そして終戦後、福岡城跡と駐屯地跡地をまとめるかたちで、舞鶴公園として開園となった。

 48年には園内に平和台陸上競技場、49年には平和台野球場などを含めた「平和台総合運動場」が併設されたほか、福岡高等裁判所、福岡地方裁判所、福岡簡易裁判所、福岡県弁護士会館といった法曹関連施設が集積していった。

 87年には、三の丸および平和台野球場一帯から平安時代の外交施設「鴻臚館」の遺構を発見。その後、95年に「鴻臚館跡展示館」が建てられ、97年には歴史公園整備事業の開始にともなって平和台野球場が閉鎖となった。

 現在、福岡城跡を中心に、東側に鴻臚館広場および鴻臚館跡展示館が、北側に平和台陸上競技場が、西側に廃校となった舞鶴中学校跡地を再活用した福岡城・鴻臚館案内処「三の丸スクエア」のほか、牡丹杓薬園と西側広場があり、西側広場がそのまま大濠公園に接続している。また、東側の裁判所関連施設はすでに九大・六本松キャンパス跡地に建てられた「福岡高地家簡裁庁舎」に移転を完了しており、今後の再開発に向けての旧庁舎建物の解体工事などが進められている。

 この隣接する2つの公園を合わせた面積は約80haであり、米・ニューヨーク市マンハッタンの中心部にある都市公園「セントラルパーク」(約341ha)に比べると、その広さは約4分の1といったところ。それでも、再開発の動向が注目される東区箱崎の九大・箱崎キャンパス跡地周辺エリアが約50haということを考えれば、福岡都心部においては非常に広大な面積であるといえよう。

 両公園の周辺には、すぐ南側に福岡都心部の鎮守の杜である「福岡縣護國神社」があるほか、少し離れた北側には「西公園」もあり、ほかに「浜の町公園」や「簀子公園」「福崎公園」「唐人町公園」などの小規模な公園も点在している。

そうした都心部のオアシス的な機能を十分有していることに加え、地下鉄空港線の沿線である交通利便性も考えると、周辺エリアの住環境としての人気が高いのもうなずける。

(つづく)
【特別取材班】

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