2024年04月25日( 木 )

信頼を築いたのは顧客志向と機動力

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

(株) サンヨー建材工業

サンヨー建材本社外観
サンヨー建材本社外観

マンション主体にさまざまな建物に関わる

 自社施工であることを生かした高い施工力で受注先からの信頼が厚い(株)サンヨー建材工業。同社の越智多見男社長は、「特別なことはしていない。『努力と機動力』を理念に掲げ、顧客の求めるものを丁寧に聞き、それを徹底すること。それには、『勘―感性』も重要になってくる」と語る。

 顧客の潜在ニーズを引き出すため、コミュニケーションを密にして情報を収集。集めた情報に基づいて決断し実行する。時代の流れを読みながら、時代にあった経営を心がける。このように、当たり前のことを当たり前にできる経営力が同社の基盤を築き、それが右肩上がりの受注を支える要因になっているのだ。

 マンションデベロッパーを主体に構成される業界団体(一社)九州住宅産業協会に加盟していることからもわかるように、同社が施工するサッシ工事で最も多いのはファミリーマンションだが、商業施設や小中学校や高等学校、介護施設など、これまで窓のある建物すべてに関わってきた。

経営理念は『努力と機動力』

 理念である『努力と機動力』は、顧客ニーズを重視するサンヨー建材工業のスタンスをあらわした言葉だ。建築需要が高まるにつれ、職人不足が顕在化。「施工業者が見つからない」といった声も多く聞かれるようになったが、施工業者の獲得については、これまで積み上げてきた関係性によって決まることも少なくない。

 発注者―元請業者―下請業者と多くの事業者が関わる重層構造の建設業界では、お互いの信頼関係が最も重要視されるといっても過言ではない。同社もサッシ工事業者として重層構造に属しており、越智多見男社長は人脈を駆使し、マンションデベロッパーやゼネコン、介護施設運営会社、メーカーとの信頼関係を構築してきた。また、人脈だけでなく、その施工力を買われて継続的に受注することに成功。受注先は大手ゼネコンから地場ゼネコンまで多岐にわたっている。

 その結果として、40年を経てサッシ工事業者としては、ほかを圧倒するほどの規模を誇るまでに事業を拡大してきた。アルミサッシは木製サッシに比べて施工が容易であることから異業種による参入が増加。競合ひしめくサッシ工事業界で地道な営業活動を積み重ね、飯塚地区・福岡地区で知名度を拡大。住宅用アルミサッシ、スチール・軽量製、ステンレス製建具およびガラス・鏡などの建築資材の販売および施工を手がけてきた。

 工期や価格、施工品質などを重視する顧客目線の戦略が功を奏し、受注は好調に推移。7億~8億円で推移していた売上高は増収基調をたどり、15年9月期には13億円、17年9月期には14億円を超えた。業績を大きく伸ばしたのは、建設需要の高まりだけでなく、徹底的な顧客主義に基づいて長年蓄積してきた施工実績による同社への信頼が最も大きいといえる。

実績を裏付ける社長と社員の信頼

 このように、同社の強みは越智多見男社長の人脈と施工力だ。これらは経営の両輪であり、その相関性は躍進を続ける同社の原動力となっている。

 「とくに創業時は人の何倍も働いていた。その姿勢は今も変わっていない」と同業者が語るほど仕事熱心で知られる越智社長が同社を牽引しているのは間違いないが、そのリーダーシップと理念に共感した従業員が一丸となって仕事に取り組むことで高い施工力を裏付けていることも忘れてはならない。従業員を信頼しているからこそ、越智社長は経営者としての圧倒的な努力を続けることができ、業績の拡大につなげている。実際に越智社長が施工に関わることは少ないが、受注先から同社の施工力に対する信頼は厚い。

 建具とは住宅の開口部に取り付けられる「仕切り」の総称をあらわす。建物の外と室内を仕切り、風雨を遮る、個室をつくる、さらに個室内を仕切り、収納をつくる。このときに使用される玄関ドアや障子、ふすま、窓やサッシなどが建具の代表的なものだ。これらをみてもわかるように建具がない建物はないのだ。

 同社がメインに手がける金属建具工事とは、鋼鉄ドアやアルミサッシなどの取り付け工事のことで、ビルやマンションでは欠かせない工事を指す。とくに住居用では、断熱性や防音性ひいては防犯性など生活に関わる重要な部分にあたり、取り付ける建具によって建物の性能だけでなく見るものに与えるイメージも大きく変わってくる。

すべては顧客の声に「勘―感性」の重要性

 5年間勤務した税理士事務所での経験を基に、サンヨー建材工業を創業後も計数管理を徹底。効率を重んじる面を見せつつも、「勘―感性」の重要性を説く。

 「勘―感性は、私が会社を経営するのに最も大切にしているものです。感性を高めるには、常に顧客の声を聞き、その声を仕事に反映して進化させていくことであり、それを続けていくことが最も重要だと考えています。これが、弊社の理念である『努力と機動力』に集約されています」――越智社長は改めて掲げる理念の重要性を説いた。

 市況の波を捉え、近年の業績は右肩上がりで推移。徹底した計数管理のもと、売上高だけでなく採算性も大きく伸ばしてきた。これにより財務の健全化も進み、次の市況の変化に備える。メーカーでもなくデベロッパーでもないため、「サンヨー建材工業」の社名を見かけることは少ないが、創業から40年が経過した同社が関わった建物は街中にあふれている。

<COMPANY INFORMATION>
代 表:越智 多見男
所在地:福岡県飯塚市秋松941
設 立:1977年10月
資本金:1,000万円
TEL:0948-28-7727
FAX:0948-28-7723

<プロフィール>
越智 多見男(おち・たみお)
サンヨー建材工業 社長

 1947年、福岡県嘉穂郡(現・飯塚市)生まれ。税理士事務所に5年間勤務後、76年にサンヨー建材工業を創業し、77年10月の株式会社化とともに代表取締役に就任した。趣味は畑仕事とゴルフ。

関連キーワード

関連記事