2024年04月19日( 金 )

一線を退いて1年、不動産総合センター元社長・三原一征氏に聞く~「引き際は今」

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 不動産の売買、賃貸、仲介を手がける(株)不動産総合センター(福岡市博多区)。同社は1990年12月に(株)不動産中央情報センター福岡支店として創業し、95年5月に福岡支店を分離独立するかたちで三原一征氏によって設立された。昨年9月28日に同社の代表取締役を退任した三原氏に話を聞いた。

 ――昨年9月に代表取締役を退任されました。理由はなんでしょう

三原一征氏(以降・三原):理由は複数あって、76歳(当時)という年齢的な問題、体調不良、そして何よりも大きかったのは「後継者の不在」です。自分の後を託せる人材を育てられなかったことが痛恨の極みでした。ただ、私は組織というものは流動化が必要だと考えています。人材が固定化していては、組織は硬直化してしまいます。そうしたことを考えるうちに「引き際は今だ」と考えたことも要因の1つだといえるかもしれません。

 

 最近、経営者として感じていたのは、我々の世代に比べて今の若い世代からは「何がなんでもやってやる」というガッツやファイティングスピリッツが希薄で、淡泊な印象を受けます。

 戦時中から戦後まもなくの時期に生まれた世代は総じてタフな人が多く、自己主張がはっきりできる人が多い印象があります。我々の世代ではお互いが自己主張をしてぶつかり合い、時にはケンカをして、そこから新しい人間関係が生まれたものです。

 国と国との関係も同じことがいえます。最近の日韓関係など、日本の外交姿勢に私は強い不満を抱いています。言われっぱなしで自国の主張が弱い。もちろん国同士がケンカするのはまずいわけですが、いうべきことはしっかりと言っていく必要があると思います。

 ――労働環境も昔とは随分かわりました
 三原:今は「働き方改革」で休みをしっかり与えなくてはならないし、残業に関しても厳しい。もちろん、今はそれが当たり前なので、決してそれが悪いとはいえませんが、このままでは日本の企業の競争力が落ちて、世界で戦えないのではないかという危惧しております。

 パワハラ、セクハラに関しても企業も社会も非常に敏感になっており、私たちの若い時代に比べると企業の価値観が大きく変わったと思っています。

 ――退任の理由に体調不良があったということですが…

 三原:腰痛とかれこれ20年以上付き合っています。21年前に1回目の手術。昨年も飯塚にある総合脊損センターで手術を行い、1カ月間入院しました。

 私の趣味はゴルフなのですが、腰に痛みがある時は、スコアがまったく伸びませんでした。手術後、医師に勧められ、腹筋や背筋などのリハビリに励んだおかげで、今ではすっかり全盛時のスコアを取り戻すことができました。

 今後は車でゆっくり国内旅行をしたいと考えていて、北陸方面に行きたいなと思っています。家にずっといると老け込んでしまう気がしますので、これからもゴルフに旅行に、とアクティブな生活を送っていきたいですね。

【取材を終えて】
 三原一征氏、そして前回取材した吉田晃氏( 【M&Aを経て】現状維持は後退~次のチャレンジへの原動力とは?) 。三原氏は一線から退き、吉田氏は新たな挑戦を続けて、両者の立ち位置は微妙に異なるものの、共通しているのは、昭和~平成という時代を駆け抜けてきた男としての「熱量」の高さだろう。

 三原氏が語るように今の現役世代と三原氏や吉田氏の世代の人々を比較すると後者の方が、よりエネルギッシュでよりパワフルだと感じることが多々ある。そこには単に「時代が違うから」というだけでは片づけられない何かがあるのだろう。

 働き盛りの現役世代のみならず、これから社会に出る若い人たちも彼らのような「人生の先輩」の声に耳を傾け、今後の自身の人生の指針にすべきであるし、「人生の先輩」世代もこれから日本を背負う世代への「語り部」として活躍していただきたいと願っている。

 

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