2024年04月20日( 土 )

ラグビーW杯日本代表の皆さん ごめんなさい!~難敵・アイルランド代表に快勝

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 ラグビーワールドカップ2019日本大会(W杯)各試合の熱戦は、連日大々的に報道されている。そんななか、日本代表は9月28日に小笠山総合運動公園エコパスタジアム(静岡県)でアイルランド代表と対戦し、19-12で勝利した。

 これまでの日本代表とアイルランド代表との対戦は、日本代表の0勝9敗だったが、今大会の大一番でアイルランド代表から初勝利をもぎとったのだ。この日は、歴史的な1日となり、後世まで語り継がれることになるだろう。そして、日本代表の皆さん、「ごめんなさい!」。前回の記事で日本代表が勝利する確率が10%程度と予想したことを、心よりお詫びいたします。

 試合内容などについては、すでに各報道で論評されているので割愛する(各方面からの多様な意見や分析などが報道を含め飛び交っている)。非常にタフな試合だったが、80分間フルタイム、日本代表が集中力を保ち続けたことが、秀逸だった。それは、数字が表している。ワールドラグビー(WR)の公式発表データによると、特筆すべきパフォーマンスの数値は、パス回数201回(ロシア代表戦:183回)、キックゲインメーター585m(同:933m)、タックル成功率93%(同:86%)、タックルエラーが14回でロシア代表戦と比較して7回減少させた。

 この日は、前のロシア戦とはまったく異なる戦法、つまりキックでテリトリー(陣地)を確保することよりも、ボールポゼッション(支配率)を優先させた戦法を採用した。

 日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、基本的にキックを多用した戦法を採用していたが、やはり百戦錬磨の知将である。常に準備を大切にするジェイミーヘッドコーチとともにコーチングスタッフ、アナリスト、メディカルなど全スタッフ、そして選手が一丸となって時間をかけて、綿密なコミュニケーションをとり試行錯誤しながら、チームをつくり上げた。そして、日ごとに進化を続けている。日本代表に改めて敬意を表したい。

 次は、10月5日、愛知県・豊田スタジアムでのサモア代表との対戦だ。サモア代表は、現在1勝1敗の勝ち点5。ベスト8進出のためには日本代表戦は、絶対勝利しなければならないため、必ず全力を尽くしてくるだろう。

 「次戦、日本代表は圧勝できる」という論評もあるが、楽観はできない。サモア代表は9月30日に行われたスコットランド代表戦に0―34で完敗した。パスとキックを織り交ぜながら、縦横無尽にフィールドを席捲したスコットランド代表の戦法に前半途中から「なす術もない」状況に陥り、心理的にも混乱していた。さらに、時間経過とともに明らかに運動量が激減。それが原因で、ペナルティ14回(ロシア代表戦:9回)イエローカード1枚、レッドカード1枚と規律を守れなかった。

 それでも、サモア代表を侮ることはできない。個々のアタック能力は、日本代表と同等である。9月24日のロシア代表戦では、ボールキャリー距離519m(スコットランド代表戦:299m)、ディフェンス突破44回(同:18回)、クリーンブレイク13回(同:2回)とリズムに乗ると驚異的なアタックを展開し、強靭なフィジカルを前面にした縦突破で波状攻撃を仕掛けてくる。

 日本代表は、アイルランド戦同様に、ディフェンスにおいてタックル成功率90%を維持し、ボールポゼッション(支配率)を60%以上でマネジメントすることが必須だろう。さらに、パントによる空中戦、テリトリーを確保するキックなど多彩な「飛び道具」を使いながら、サモア代表を心身ともに消耗させて、ディフェンスのシステムを崩壊させることが勝利のカギとなる。

 日本代表はこの試合に勝利することで、3勝。4トライ以上のボーナスポイントを獲得すると勝ち点14となり、ベスト8進出が現実的となる。注目の一戦であることは、間違いないだろう。

【河原 清明】

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