関電疑獄(4)~死人に口なし論の濫用
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3 仮説
(1)「元助役は誠実に地方公務員の業務を遂行した、普通の平凡な公務員で、やくざまがいの言動で理不尽な賄賂受領を強要するような人物ではない。やくざまがいの自己顕示欲の強い傲慢不遜像は、元助役が死亡後、すべての不祥事を隠蔽し、責任転嫁するために考案された不実の人格像である。」
この仮説に従えば、元助役が受注案件ごとに関電社屋に手土産をもって訪問したことは極めて当然・自然で、高額な金品も事前に関電役員や重職者から要求ないし期待されていたから持参したもので、授受において、何らのトラブルも存在しなかったものである。だからこそ長年にわたり、多数回の賄賂の提供が実現されたのである。
関電の弁解によれば、元助役の関電社屋訪問の際には必ず授受について押し問答があったことになるが、それにもかかわらず、機密にわたる情報が提供された、という完全に矛盾する説明の存在自体が必要なくなる。機密にわたる情報提供事実は関電に不利益事実であり、その自白は真実であるから、その事実と整合するためにも、賄賂授受をめぐり必ず一悶着あったとする関電の主張は矛盾・虚偽である。
(2)「架空の元助役の人物像とそれに基づくシナリオは会社犯罪に詳しい人間によってつくり出された。死人に口なし論法は証拠法に精通したものが濫用するもので素人には思いつかない論法である。シナリオの作成人物は関電の顧問弁護士、天下り弁護士である監査役、ないし社外取締役である可能性が大である。それは、本件事件の推移において、当然、相談を受け、解決に向かって業務遂行し関与した筈であるが、その関与事情が一切、不明(隠蔽されている)ことがその理由である。」
死人に口なし論は両刃の刃である。それは攻撃側を立証不可能に追い込むと同時に自分の側も立証不可能だからである。
結局、立証不可能事実であるから、「先に言ったが勝ち」の結果となる。そのためにも、元助役が「天皇」であったとか、「影の実力者」であったとかの具体性を必要としない風評が不思議なことに地元では流布することになる。その真実性になると一層証明不可能である。
日本のマスコミが何の配慮も注意力もなくこれを全国的に電波に乗せるため、いつの間にか、「天皇」「影の実力者」は実在事実・既成事実となる。この間の事情を知る法律専門家がシナリオを作成したと筆者が考える所以である。
調査報告書作成の段階では当然に上記の法律専門家は関与しているから、報告書で故意に隠蔽された事実などは紛れもなく上記法律家の見解指導によるものといえる。つまり、報告書における前述した矛盾はすべて上記法律家の関与の結果である。
4 重大な事実関係
事件は税務調査により発覚した。税務調査は元助役の死後に行われたものであるため、関電に死人に口なし論の濫用を許してしまった。関電にとって、極めて予想外なことは、元助役が詳細な賄賂提供記録を残していたことである。関電の主張シナリオ(自己顕示欲説)でも、元助役が詳細な賄賂提供記録を作成保存した理由を説明することはできない。
筆者は当初、当該記録は元助役が賄賂授受に関して一方的な「とかげの尻尾切り」に会わないための護身用備忘録と理解した。しかし、そうであれば、もともと贈収賄に関与しないことが最善選択肢であるから、備忘録作成は元助役が公務員としての習性となった何でも記録保存する結果にすぎないと考えた。そして、そのような公務員であれば、やくざまがいの言動で関電社員を恫喝するなどあり得ないと考え、上記の仮説で事件を見直した。
すべての不条理・矛盾が人為的な加工・シナリオの結果と考えれば、まったく不思議ではないことになる。ただの稚拙な虚構のほころびにすぎないからである。
今後解明されなければならない重要事実は、関電が元助役の賄賂提供記録の存在を知った時期とその経緯、そして、その後の対応として行った行為の全容である。それらの事実が明白になれば、筆者の仮説は真実と評価されることになる。
元助役の残された遺族は元助役だけが悪者となる関電報告書の主張について何の異義もないのであろうか。遺族の異義も関電が何らかの圧力(方策)によって封じているとしたら、これ以上の不条理はない。
(了)
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