2024年04月19日( 金 )

生コン需要の今とこれから

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 福岡地区のある生コンクリート製造業の代表から「出荷、販売価格とも堅調さを維持しているものの、今後、生コン需要は、厳しい状況になります。なぜなら、生コンの使用を必要最小限に抑えた建築工法が、次々に開発され、実用化されているからです。工期短縮、建築コストを抑制するなど、施主・ゼネコンにとって最新で、かつ有益な工法や建築原材料がでてきて、生コンの使用頻度は、年々減少していくでしょう」と先行きを悲観視するコメントが寄せられた。

 全国生コンクリート工業組合連合会・全国生コンクリート協同組合連合会(ZENNAMA)のデータによると、2018年度の全国生コンクリート出荷量は8,548万1,476m3(前期比102.1%)、九州地方は、1,245万482m3(同101%)、福岡県下は、320万8,101m3(同101.3%)という結果になっている。現在の全国出荷量(2019年8月現在)の累計は3,362万264m3で、前期比97.4%とジリ貧の状況である。

 福岡地区生コンクリート協同組合の関係者に取材したところ、「福岡地区に関しては、まずまずです。出荷量は、前期比5%上昇で推移しております。新たに5社(サカヒラ、旭コンクリート工業、冨士機、環境施設、エフ・エム・シー)が組合に加入していただいたことがあり、市況が安定してきました。大口の需要は、アイランドシティ開発の事案で、そのほかは、福岡都心部とその周辺の民需─―マンションや商業施設の新設が中心の出荷がほとんどです。

 今後は、天神再開発などのプロジェクトがありますが、特需とされるクラスの出荷量は想定せず、現況を推移していくでしょう。今期の福岡地区の出荷量の計画は、150万m3を見込んでおります。」とコメントしている。

 販売価格についても、「現在は、13,000円/m3で取引しております。組合内からは“値上げすることが賢明である”という声があることもたしかです。現在、組合内と取引先などと協議を重ねております」

 販売価格の値上げについては、「九州地方の現況を考慮して、16,000円前後の価格に上げる方に向かっている」とコメントする同地区内の工場幹部。他方、「業界独特の“赤黒”調整により、“割決”(組合内で決められた仕事量の割り振り)より多く出荷している工場も存在し、組合へ課徴金を払うなど、不均等な状況も散見される。その工場は、自ら進んで出荷量を増やしているのではなく、発注したお客さまに迷惑をかけてはいけないからと、決められた出荷ができない工場の出荷のサポートを行っているのに…。つまり、想定したマネジメントを実行できず、シェア分の出荷ができない工場は組合から、“赤”調整金を受け取り、それを助けてシェア以上に出荷した工場は、組合に“罰金”を収める…何か違和感がありますが、業界の商慣習なので仕方がない。そのような事情もあり、値上げは、工場が適正な利益を確保していくための施策の一環でしょう」(同地区内工場幹部)。

 福岡地区の生コン市況の動向とともに、新たな建設工法について着目しながら、全国的な生コン需要についても、引き続き取材し、レポートしていく。

【河原 清明】

関連記事