2024年04月20日( 土 )

日本の大手企業に技術伝承力なし~中小企業に頼りきり

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 機械設計企業のA社は毎年、機械科卒業の大卒新人を4名採用しているが、4人のうち、2名はうつ病を理由に辞めていく(同社社長は、うつ病ではないと見立てている)。この夏、入社4カ月で退職した新入社員の母親が来社してきたことには、普段は多少のことには動じない同社社長も開いた口が塞がらなかったそうで「世も末だ」と呟やいていた。

 決して悲観論を言っているのではない。以前「貴方が紹介してくれた青年は、もう入社5年になる。5年鍛えるとたくましくなり、今では単独で12億円のプラントの設計をしている。ありがとう」と感謝されたことがある。

 要するに5年間、しっかり教育すれば、50%の確率で立派な設計士に育つということである。そうなると30歳にもなれば、他社から破格の待遇を提示されるスカウト攻勢を浴びる心配も生じてくる。

 A社が最近、業界で注目される工法を開発した。35才の社員を中心としたメンバー3名が開発し、特許申請へと漕ぎつけた。この情報を耳にした得意先である大手企業の課長が来社して「この特許プロジェクトのチームに加えてくれ!」と嘆願するのである。

 この大手企業の評価査定は「特許申請までの実績」を最重要項目にしているとか。「付き合いもあるし、チームに加えよう」と判断し、許可したという。

 結局、この課長の上司である部長を含めた総勢4名がチームに名を連ねることになる。大手企業が技術を伝承する力を失ってしまい、中小企業に頼りきってしまっているのは明白である。

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