2024年03月29日( 金 )

世界的に“市民権”を得た日本ビジネスインテリジェンス協会!(3)

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日本ビジネスインテリジェンス協会 会長 中川 十郎 氏

日本では「本のタイトルに“情報”が入ると売れない」

 ――日本ビジネスインテリジェンス協会設立から約30年が経過しようとしています。当時と比べて現在の周りの環境に大きな変化はございますか。

 中川 奇しくも今はまさに約30年前と同じです。当時は米ソの対立があり、現在は米中の対立があります。また、当時すでに、日本の大企業は商社を筆頭に、世界に100を超える支店がありました。しかし、競争情報、経済情報などインテリジェンスに関する教育は行われていませんでした。民間企業に関わらず、経産省・ジェトロ、外務省・大使館などを含めて、現在も状況はまったく変わっていません。面白い話で、出版社に言わせると、日本では本のタイトルに「情報」と入ると売れないそうです。

 私は2、3日前に鳩山友紀夫元総理に同行して、中国安徽省合肥で開催の「世界製造業大会」(元ドイツ大統領で中小企業世界連盟のグローバル会長のクリスチャン・ウルフ氏が大会宣言)に出席して帰国したばかりです。合肥には、中国を代表する理系重点大学の「中国科学技術大学」があります。同大学は中国そして世界のAIのメッカです。ノーベル賞クラスの学者が集合、電気自動車や人工知能(AI)用の半導体に巨額の資金を投じている様子がよくわかりました。

 本大会に参加して、日本企業のビジネスインテリジェンスの無さを痛感しました。大会は9月18日~23日まで開催され、フォーチュン・グローバル500社から100人以上の幹部と製造業内外企業の約500人の代表を含め、4,000人以上が参集しました。しかし、日本からは企業はもちろん、有識者の数も少なかったです。大会は総額4,470億人民元(701億9,000万ドル)に上る430件以上の投資プロジェクトを調印、大きな成果を上げて幕を閉じました。来年は、ヨーロッパ勢の独壇場とせずに、日本企業もぜひ参加いただきたいと感じました。

参加会員累計は約2万名、登壇いただいた講師は累計約500名

 ――日本ビジネスインテリジェンス協会(BIS)のこれまでの活動についてお聞きします。延べ会員はどのくらいですか。会員のエピソードもご披露ください。

 中川 現在の会員は約200名で、これまでの累計参加会員は約2万名に達しています。

 2カ月に1回の例会は28年間1度も休んだことはありません。毎回約70名の有識者が参集されます。これまでご登壇いただいた講師は約500名です。会員は初回から約166回のうち、150回以上ご参加いただいている、91歳のドクター中松義郎先生をはじめ、すばらしい方々ばかりです。中松先生とは私が商社でニューヨーク駐在中の1988年にお目にかかり、以来31年間、公私ともにお世話になっています。現役の方のお名前を挙げるときりがありませんので、ここでは、残念ながら、鬼籍に入られた先生方の思い出を振り返らせていただきます。

 まずは石川昭先生(青山学院大学名誉教授、大学院国際政治経済研究科の初代科長)です。先生には2000年以来16年間、BIS顧問として、長年にわたってご指導をいただきました。2011年2月には、日本ビジネスインテリジェンス協会(BIS)創設20周年と研究会開催100回を記念して共編著で『知識情報戦略』(税務経理協会刊)を出版しました。

 同書は2013年には英訳され、シンガポールのWorld Scientific社から“An Introduction to Knowledge Information Strategy~From Business intelligence to Knowledge Sciences~”の書名で出版されました。BIS20年間の情報研究成果が英文で発信され、海外でも好評を博したことを今でも思い出します。

 豊島格先生(日本貿易振興機構・ジェトロ理事長、世界貿易センター会長、エネルギー庁長官、アブダビ石油社長、丸善石油副社長)も忘れることができません。1975年に駐在先のブラジル・リオデジャネイロでお目にかかって以来、お父上が私と同郷の鹿児島出身であったこともあり、40年近く目をかけていただき、情報の専門家の紹介などでご助力をいただきました。

 1974年にリオデジャネイロ総領事、76年にサンパウロ総領事を務められ、以来約40年ご指導をいただいたのは、スーダン大使、ウルグアイ大使を務められた平野文夫先生です。私がブラジルで主宰していた「ブラジル経済研究会」で顧問をお願いし、帰国後はBIS顧問に就任いただきました。外務省関連では、兵頭長雄先生(欧亜局長、ポーランド大使、ベルギー大使)も忘れることができません。ベルギーよりご帰国後の2000年から17年間、BIS顧問としてご指導をいただきました。

 郷里の先輩でもある米盛幹雄・時評社会長にはBIS顧問として、20年に渡りご指導をいただきました。義理人情に篤く、温厚でいつも笑顔を絶やさない人格者でした。

 宮脇磊介・中曽根内閣初代広報官(元皇宮警察本部長)には、20年近く情報研究でお世話になりました。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
中川 十郎 (なかがわ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現・双日)入社。海外駐在20年。米国ニチメン・ニューヨーク本社開発担当副社長を経て、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、2006年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師、ハルピン工業大学国際貿易経済関係大学院諮問委員。米国コロンビア大学経営大学院客員研究員。中国対外経済貿易大学大学院客員教授、同大学公共政策研究所名誉所長、WTO-PSI貿易紛争パネル委員。JETRO貿易アドバイザ――。日本ビジネスインテリジェンス協会会長。米国競争情報専門家協会(SCIP)会員。中国競争情報協会国際顧問。日本コンペティティブ・インテリジェンス学会顧問。天津市河北区人民政府招商大使、産業発展顧問、世界銀行CSR(企業の社会的責任)コンサルタント。オリンパス(株)特別委員会委員。日本貿易学会理事。国際アジア共同体学会学術顧問(前理事長)。一帯一路陝西友愛研究所副会長などを歴任。2014年に東久邇宮国際文化褒賞を授章。

 主要著書として、『よくわかる商社業界』共著(日本実業出版社)、『貿易と海外投資の分析と実務』共著(文真堂)、『国際経営戦略』共著(同文館)、『北東アジアのグランドデザイン』共著(日本経済評論社)、『東アジア共同体と日本の戦略』共著(桜美林大学北東アジア総合研究所叢書)、『CIA流戦略情報読本』共訳(ダイヤモンド社)、『グローバル企業の情報組織戦略』共訳(エルコ社)。『成功企業のIT戦略』共訳(日経BP)、『知識情報戦略』編著
(税務経理協会)など多数。

 主要英文共著書には“Global Perspectives on Competitive Intelligence”(Society of Competitive Intelligence Professionals)Virginia, USA、 " The Intelligent Corporation" The Privatisation of Intelligence (Taylor Graham)、London、“An Introduction to Knowledge Information Strategy~From Business intelligence to Knowledge Sciences~”(World Scientific)、 Singaporeなどがある。

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