2024年03月30日( 土 )

【医療専門家に聞く】100歳まで自分の足で歩く方法(前)

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下北沢病院 院長 菊池 守 氏

 日本初の「足の総合病院」として足の病気を治し、「100歳までスタスタ歩ける足のつくり方」を執筆している下北沢病院・院長・菊池守氏に、生涯自分の足で歩くための方法と、足と関わりが深い糖尿病への対応を聞いた。

足と体はつながっている

下北沢病院 院長 菊池 守 氏
下北沢病院 院長 菊池 守 氏

 元気に歩くためには、足が健康であることが欠かせない。足が健康ならスムーズに歩けるが、巻き爪やウオノメが痛い、踵が痛いなど足に悩みがあると、どうしても歩きにくくなってしまうからだ。

 ヒザも足も腰も体全体はつながっているので、痛みがあるときも、そこだけでなく、体全体で見ることが大切。足の調子が悪いと体のバランスが悪くなり、体に痛みが出ることもある。だから足の健康を保って、身体全体のバランスが取れるように調整することが大切だ。

何に気をつけたらいいのか?

 生涯自分の足で歩くために、気をつけたいところは7つある。

 1つ目は、足の裏だ。足の裏には脂肪のクッションがあって、皮膚も柔らかい。だが、年齢とともに、足の裏の皮膚は固くなり、脂肪のクッションも薄くなってしまうため、歩く際の衝撃が吸収しきれず痛みが出やすくなる。2つ目は、足の血管が固くなる動脈硬化になると、血が流れにくくなって、足が冷えやすくなってしまうことだ。

 3つ目は、足の静脈だ。心臓から足に流れた血は、ふくらはぎがポンプのように下から上に押し上げて、心臓に戻る。そのため、足の静脈には血が足に逆流するのを防ぐ弁がある。この静脈弁が壊れると足の血が心臓に戻りにくくなって、足がむくみやすくなる。歩くのが健康に良いといわれるのは、歩くとふくらはぎのポンプが働いて、血が足から心臓に戻りやすくなり、血の流れが良くなるからだ。

 4つ目は、足の筋肉の力だ。歩くときには足の指で地面を踏ん張って、足を支えている。足の筋肉が落ちると、足の指で踏ん張れなくなり、転倒するリスクが高くなってしまう。5つ目は、足の関節だ。足首や足の指の関節が固くなると、歩くときに足から足にスムーズに体重を移しにくくなる。指の曲げ伸ばしができないと、足の冷えやしびれの原因にもなる。

 6つ目は、年齢とともに筋肉の力が衰えるため、足の裏の土踏まずのアーチが落ちてくること、7つ目は、巻き爪などの爪のトラブルだ。

足を元気に保つには?

 足を元気に保つためには、足の筋肉の力と、足の柔らかさの両方が大切だ。運動には必ずストレッチを組み合わせたい。筋肉を鍛える運動をすると、筋肉が縮んで固くなる。だから、逆に筋肉を伸ばすストレッチをして、足の筋肉を柔らかくする。運動だけをしてストレッチをしていないと、足が固くなって痛みやケガにつながることがあるからだ。

 知らず知らずのうちに体が硬くなったり、筋力が落ちていることがあるので、新しく運動を始めるときはいきなり体を使ってキャパシティーを超えないように、調子を見ながら、だんだん運動の強度を上げていった方がいい。

ストレッチの効果的な方法は?

 体を柔らかくするストレッチは、「どんなやり方でするか」でその効果が大きく変わる。見落としがちなことだが、やり方を間違ってしまうと、時間をかけても効果が出にくい。たとえば、アキレス健のストレッチでも、つま先が斜めに向いたり、時間をかけて伸ばしていないことがあるが、つま先をまっすぐに向けて、ゆっくり伸ばさないとストレッチの効果がない。だから、自己流ではなく、プロにカウンセリングや指導を受けて、正しいストレッチをすることが一番効果的だ。

 足が固いときは、少しずつでもいいからストレッチを毎日続けてほしい。たとえば、お風呂に入りながら、足の裏をマッサージしたり、足の上に足首をひっかけて足首を回すのもいい。下駄や草履を履いていた江戸時代とは違って、今は靴を履いて過ごしているので、足の指が固まりがちだ。足の指もストレッチで動かすようにしたい。

(つづく)
【取材・文・構成:石井 ゆかり】

【INFORMATION】

下北沢病院内設備

下北沢病院
所在地:東京都世田谷区北沢2-8-16
TEL:03-3460-0300(代表)
FAX:03-3465-0565
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