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2019年10月15日 14:54

【特別連載】断たれた絆~幻の「浪川会壊滅作戦」の舞台裏(2)

■ゴト師を経て「白いタイヤキ」チェーンで成功

諸藤壮一氏(有限会社くるまドットコム代表)
諸藤壮一氏(有限会社くるまドットコム代表)

 名誉毀損書き込みを繰り返した動機について、有限会社くるまドットコム代表の諸藤壮一氏は、「中嶋(全克氏)に対して抱いていた感情が抑えられなくなった」と語っている。早朝や深夜など時間帯を問わずに、病的ともいえる執拗さで悪質な書き込みを連ねた暗い情念の源は何だったのか。

 加害者である諸藤氏と被害者である中嶋氏、2人の関係について大牟田市で取材すると、2人を含めた同年代の「元ワルガキたち」を包み込む、大牟田独特の「負の絆」が見えてきた。

 諸藤氏と中嶋氏は大牟田市内の隣接する中学校の同級生で、中嶋氏の表現によると「お互いヤンチャしていた」ため面識があったという。もっとも中嶋氏がその後「道仁会村神一家村神総業組長」という〈本職〉の道に進んだのに比べれば諸藤氏のグレ方は麻疹(はしか)のようなものだったようだ。「諸藤はタバコ吸うたりしながら中学校にはちゃんと通っていた。大牟田では普通の中学生の部類に入ると思う」(諸藤氏の同級生)。

 諸藤氏をよく知る同級生によると、諸藤氏は高校卒業後にパチンコのゴト師(いかさま賭博師)として全国をまわっていたという。「あいつ(諸藤氏)は2004年頃に大分県警にゴト行為で逮捕、起訴され、執行猶予判決を受けてるんです。この逮捕が正業へ進むキッカケになったんじゃないですか」と指摘するのは、諸藤氏の中学時代の同級生だ。

 「ゴトはもちろん悪いことやけれど、あいつ(諸藤氏)の偉かったのは、ゴトで貯めた金を正業に投資しようとしたところ。普通のゴト師だったら稼いだ日銭を夜の店などでその日のうちに使ってしまうものだが、諸藤は抜け目のないところがあった」(同)

 諸藤氏は大牟田市内の市立中学校を経て、県立三池工業高校を卒業。三池工業高野球部は、現・巨人監督の原辰徳氏の父である原貢氏(故人)が監督としてチームを率いた1965年に甲子園初出場初優勝を飾った「甲子園勝率10割」の伝説のチームとして知られている。

 三池工業高を卒業した諸藤氏はゴト師の世界に足を踏み入れると、2002年ごろに大牟田市内で中古車販売店をオープンさせ、現在の主力事業であるネット通販に乗り出す。

 「諸藤がネット通販と並行してやっていたのが、2008年ごろに大ブームになった〈白いタイヤキ〉です。もともとは大川市の小さな店から火が付いたものをフランチャイズでやりだし、すぐに喧嘩別れして、自分で粉を仕入れて『藤家』という商号でチェーン化しました。最盛期は100店舗以上の加盟店があったはずです」(諸藤氏の同級生)

 白いタイヤキは、いま流行中のタピオカを粉にしてタイヤキの生地に練りこむことで生まれる白い色と柔らかな触感が珍しかったため、大流行した。始まりはゴト師という裏稼業だったものの、諸藤氏には確かに商才があったようで、白いタイヤキの大ヒットによって徐々に、大牟田の同年代の若者たちの中で目立つ存在になっていった。

 近年マイルドヤンキーと呼ばれる地方在住の若者たちの習性にもつながるものだが、諸藤氏にとって「大牟田の仲間内でデカい顔をすること」が最大の行動原理であり、この時期、大牟田の同年代の若者には考えられないほどの大金を手にしていた諸藤氏はまさに我が世の春を謳歌していた。

■浪川会幹部に「ケツもち」を依頼

飲食店で楽しむ諸藤壮一氏(左の男性)と岡野勝英氏(奥の座席)。2016年から2017年にかけて撮影されたもので、岡野氏はこのころ浪川会吉田組の幹部だった
飲食店で楽しむ諸藤壮一氏(左の男性)と岡野勝英氏(奥の座席)。2016年から2017年にかけて撮影されたもので、岡野氏はこのころ浪川会吉田組の幹部だった

 ゴト師を振り出しに、次々に事業を展開させていく諸藤氏。しかし、大牟田市内で金回りの良さが目立ち始めることは、じつは良いことばかりとは限らない。羽振りがよくなるとトラブルに巻き込まれる可能性が高くなることを、大牟田で育った諸藤氏はよく心得ていたはずだ。ゴト師の過去を持つ諸藤氏ならなおさら、いわゆる「みかじめ料」(トラブルを防ぐため、暴力団に納める金銭)の支払いを含め、反社会的勢力がすぐに足元に食らいつき、悪くすれば骨までしゃぶられるようになるのは時間の問題だった。

 そこで、諸藤氏が何かあった際の保険・後ろ盾として頼ったのが、同じ中学校を卒業した同級生で、当時浪川会吉田組の幹部を務めていた岡野勝英氏だった。

 「もともと、諸藤がゴト師をしていたころに挨拶に来て、『なんかあったらお願いします』と言うてきたんですよ。こちらとしたら同級生からの頼みということで他意はなかったつもりだが、よそから見たら私が諸藤の〈ケツもち〉をしていたように見えたでしょうね」(岡野氏)

沖縄の海でジェットスキーを楽しむ諸藤壮一氏(前)と岡野勝英氏(後部座席)
沖縄の海でジェットスキーを楽しむ諸藤壮一氏(前)と岡野勝英氏(後部座席)

 それ以降、諸藤氏と岡野氏はプライベートで沖縄旅行に行くなど、親密な付き合いを重ねるようになっていく。

 この時期、諸藤氏から岡野氏に渡っていた金額は年間400万円ほどだったとみられる。昨年も、諸藤氏は現役の浪川会幹部だった岡野氏を含む浪川会の組員数人らと沖縄旅行に行くため飛行機チケットを用意するなどしたことがわかっている。これは明らかな反社会的勢力への利益供与にあたり、諸藤氏個人だけでなく企業経営者として重大なコンプライアンス違反にあたる(昨年の沖縄旅行は、岡野氏が公務執行妨害で逮捕されたためキャンセルされた)。

 特別取材班は諸藤氏に対し名誉毀損事件の詳細部分や、暴力団関係者に利益供与を行ったかなどの事実確認を含む取材を申し込んだが、諸藤氏はいっさいの取材対応を拒否した。

元浪川会吉田組若頭、岡野勝英氏(今年6月に引退)
元浪川会吉田組若頭、岡野勝英氏(今年6月に引退)
大牟田市内にある、諸藤氏の自宅。規模や造りで周辺の住宅を圧倒する「豪邸」だが、いま、諸藤氏が立ち寄ることはほとんどないという
大牟田市内にある、諸藤氏の自宅。規模や造りで周辺の住宅を圧倒する「豪邸」だが、いま、諸藤氏が立ち寄ることはほとんどないという

(つづく)
【特別取材班】

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