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2019年10月15日 17:12

【特別連載】断たれた絆~幻の「浪川会壊滅作戦」の舞台裏(3)

■〈名誉毀損で逮捕〉~諸藤氏の主張

諸藤壮一氏(有限会社くるまドットコム代表)
諸藤壮一氏(有限会社くるまドットコム代表)

 有限会社くるまドットコム代表の諸藤壮一氏はなぜ、中嶋全克(まさよし)氏に対する名誉毀損を続けたのか。特別取材班が独自に入手した資料には、諸藤氏の生々しい告白が記されている。

 諸藤氏の主張によると、中嶋氏との本格的なつきあいは、中嶋氏が現役の暴力団組長だったころに始まったという。中嶋氏配下の組員から呼び出しを受けて「自分とこの若いもんがインターネットの仕事に興味がある。教えてやってくれんか」と中嶋氏から頼まれたため、軽い気持ちで引き受けた、諸藤氏はそう語っている。

 その後、ネット通販業を手ほどきした者たちの事業が本格化し、中嶋氏も加わって会社組織として動き出すと、「(中嶋は)私の仕事にどんどん食い込んできて(中略)私はライバル会社を自分で育てるという、会社を経営する者としては矛盾する行為へとはまって行った」(諸藤氏)。

 さらに諸藤氏は、「中嶋氏から手数料を高くとられた」「(中嶋氏に)脅されて1500万円くらい渡した」などと主張し、2016年10月には中嶋氏の会社を「無理やり買わされた」ため、それが今回の名誉毀損行為につながった、と主張している。中嶋氏との縁を切らないとすべてを失ってしまう、と考えた諸藤氏は民事訴訟(※)を起こし、この時期に中嶋氏や中嶋氏の会社を誹謗中傷する内容のはがきが郵送されてきたため、その中身を世間に知らしめ、「中嶋氏が不正を行っていることを訴えて、正すために」ネット掲示板「爆サイ」にスレッドを立ち上げたというのだ。

(※現在も係争中で、中嶋氏側は現在、諸藤氏の自宅など3件の不動産を差押えている)

■「ここまでこじらせたのは自分にも責任」(中嶋氏)

株式会社MRの代表取締役、中嶋全克氏。指定暴力団・道仁会と激しい抗争を繰り広げた九州誠道会で組長を務めていた(2007年に引退)
株式会社MRの代表取締役、中嶋全克氏。指定暴力団・道仁会と激しい抗争を繰り広げた九州誠道会で組長を務めていた(2007年に引退)

 もっとも、諸藤氏の言い分を記した文書は諸藤氏側の主張を一方的に記述したものであることに注意すべきだろう。実際、諸藤氏は中嶋氏に搾取され続けたと主張している期間に、諸藤氏は中嶋氏や友人らと福岡市・中洲での飲み会やプライベートマリーナでの遊興を行っていたことがわかっている。諸藤氏と中嶋氏の両氏を知る関係者に話を聞くと、「諸藤と中嶋はうまくやっていた時期が長かったはず。諸藤が語っていることは事実と違う」という証言が次々と出てきている。

諸藤氏(後列左端男性)が、中嶋氏(後列中央サングラス姿)らと共に訪れた海水浴で開いたバーベキュー会場で(2016年夏)。
諸藤氏(後列左端男性)が、中嶋氏(後列中央サングラス姿)らと共に訪れた海水浴で開いたバーベキュー会場で(2016年夏)。

 中嶋氏自身は諸藤氏との関係について、次のように語っている。

 「諸藤とつきあうようになったのは、私が道仁会3代目村上一家村神総業組長をしていた時期で、組員を通して『ヤクザと揉めたときはお願いします』と接触してきました。この時、諸藤はゴト師や事故車を整備して売るなど法律スレスレの仕事をしていたので、困った時に私の力が必要だったのでしょう。諸藤の面倒を見ることで彼からお金をもらったことはありませんが、代わりにインターネット通販の仕事について教えてもらいました」

 ちょうどその時期、道仁会は人事をめぐる分裂から激しい抗争を繰り返すようになり、中嶋氏は東京に滞在することが多くなったため諸藤氏とは疎遠になっていったという。

 「数年ぶりに大牟田に戻って正式にヤクザから足を洗うにあたり、諸藤から本格的に仕事を教わることにしました」(中嶋氏)

 主にカー用品を中国から仕入れ、それをネット経由で販売する事業を手掛けるようになった中嶋氏。あくまで中嶋氏側の主張だが、「諸藤は仕入れ値に上乗せした額で自分に卸すようになっていった」という。中嶋氏によると約2年間で1700万円が上乗せさせられていたといい、これについて中嶋氏は諸藤氏を「平手打ちした」ことと、かなり強い口調で責めたことを認めている。

 「いろいろありましたが、商売のやり方を教えてくれたのは諸藤でしたし、一緒に海に行ったりして仲良くしていた時期もありました。ここまでこじれてしまったのは、自分に落ち度があったのかもしれません。諸藤のグループは儲けの大きいネット事業だけに集中せず、飲食店を複数出すなどして会社の業績が急激に落ちてきました。諸藤がおかしくなり始めたのもそのころで、地元の友人と一緒に何度か叱ったりアドバイスしたこともあったんですが……。もっときちんとしておけば、ここまでこじれなかったのかもしれません」(中嶋氏)

 ネット上には中嶋氏のことを「人殺し」と罵るような書き込みがまだ削除されずに残っているが、そのことについて聞くと、意外な答えが返ってきた。

 「もともとあの手の掲示板を見ることがないので、自分のことを書き込まれてもそれほど気にはならなかったんですよ。ただ、家族や子どものことが掲示板に書き込まれたりしたときには、頭に血が上ってカッとなった時もありました。ただ今は不思議と腹が立つこともなく、むしろ諸藤がかわいそうにも思えてるんですね」(中嶋氏)

「株式会社MR」本社(大牟田市西浜田町)
「株式会社MR」本社(大牟田市西浜田町)

■浪川会の代紋を偽造したのは「大きな間違い」

怪文書には、指定暴力団・浪川会の、偽造されたとみられる代紋印が押されている
怪文書には、指定暴力団・浪川会の、偽造されたとみられる代紋印が押されている

 諸藤氏が名誉毀損書き込みをする際に「お手本とした」と主張する怪文書(ハガキ)について調べると、数多くの不自然な点が浮かび上がってきた。怪文書がばら撒かれた時期に、諸藤氏自身が大牟田市内の企業に怪文書を持参していたという証言を得たのだ。さらに怪文書の一部は韓国のソウル市江南から投函されたことが消印からわかっているが、消印の日付を元に調べた結果、同じ時期に諸藤氏がソウル市に滞在していたこともわかっている。

 諸藤氏と中嶋氏の両者をよく知る、元浪川会吉田組幹部(若頭)の岡野勝英氏はこう語る。

 「(諸藤氏と中嶋氏の間で)商売上のトラブルはあったかもしれんけども、もともと諸藤は異常にねちっこい性格なんですよ。思い込んだらがーっと突っ走るとこがあった。いったん中嶋のことが許せんと思い始めたら止まらなくなったんやないですか。中嶋はあんな経歴だから怖がられるけども根っこは優しいし、何か決めないかん時にはやっぱりあいつが決めることになるんですよ。要するに、根っからのリーダーなんですね。ヤクザもんの中嶋が一般の人からも含めて慕われる一方、諸藤は口のきき方を知らないところがあって嫌われていた。だから諸藤は自分が金を持っていないと誰も相手をしてくれないことを良くわかっていた。普通だったら暴力団組長だった中嶋のほうが(社会的な)評価は下になるはずですが、男としての値打ちは諸藤と中嶋で比べ物にならなかった。そういう世間の目に対するいらだちが、案外今回の名誉毀損の引き金だったかもですね」(岡野氏)

2018年11月ごろ、大牟田市内の企業や銀行などにばら撒かれた怪文書
2018年11月ごろ、大牟田市内の企業や銀行などにばら撒かれた怪文書

 大牟田市内の企業を中心に広くばら撒かれたこの怪文書には、「外国人労働者派遣業が指定暴力団の資金源、利益供与問題」などの文言に加えて指定暴力団・浪川会を意味するマーク、いわゆる「代紋」がでかでかと押されている。中嶋氏を誹謗中傷する怪文書に浪川会の代紋が使われていることについては、岡野氏は浪川会吉田組の元幹部として独特の見解を示した。

 「一般の方は『たかが代紋』と思うかもしれんけども、あの小さなバッジに命を賭けるのがヤクザなんですよ。最近、子どもがヤクザの事務所におもしろ半分で電話して、その様子を動画投稿サイトにアップしたりすることがあるでしょうが。誰がやったかはわかりませんが、もし、そんな軽い調子で浪川会の代紋を使ったのだとしたら、それは大きな間違いを犯したことになるんじゃないですか」

(つづく)
【特別取材班】

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