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2019年10月23日 12:37

【特別連載】反社勢力に利益供与の「くるまドットコム」に融資か~大牟田柳川信金、西日本シティ銀行ら金融機関の責任〈「断たれた絆」番外編・後〉

■「反社との決別宣言」は絵に描いた餅~西日本シティ銀行

 諸藤壮一氏(有限会社くるまドットコム代表)の取引銀行とみられる3行のうち、三井住友銀行大牟田支店については、諸藤氏が主に海外送金などで使用しているという情報を得て取材を進めた。

 三井住友銀行大牟田支店に取材を申し込んだところ、広報を担当する本部(東京都)が対応する旨通知があった。広報部によると、諸藤氏が口座を開設しているか、諸藤氏に対して融資を行っているかなどについては「個別具体的な取引情報については情報提供できない」としながらも、「三井住友銀行では、反社会的勢力(反社)に対する基本方針を定めて、〈反社会的勢力とは一切の関係を遮断します〉と宣言しています。今回の取材についても記事内容と合わせて情報提供として受け止め、内部で調査を進めていく」としている。

三井住友銀行・大牟田支店
三井住友銀行・大牟田支店
西日本シティ銀行・大牟田支店
西日本シティ銀行・大牟田支店

 実質的には取材に応えたとは言えないものの、顧客の守秘義務を守ったうえで、反社勢力を徹底して排除する姿勢を積極的に示すという意味では模範的な回答といえよう。さすが日本を代表するメガバンクといったところだが、これに対して、「九州地銀2位」西日本シティ銀行の対応はあまりにもお粗末すぎるものだった。

 西日本シティ銀行広報文化部は、特別取材班の取材に対して、「この件についてはいっさいお答えできない」と繰り返すのみで、さらに「一般論として、西日本シティ銀行は反社勢力の排除についてどのようにお考えか」などの質問に対しても、「回答できません」とオウムのように繰り返すだけだったのだ。西日本シティ銀行のウェブサイトでは「暴力団排除条項」を謳っているにも関わらず、「回答できない」とはどういうことなのか。西日本シティ銀行の対応はまったく意味不明と言わざるをえず、あるいは諸藤氏と反社勢力とのつながりを把握したうえで取引を続けていた可能性を強く疑わせるものだ。

 反社との関係性を強く疑わせる事実を知ってなお取引を続けるのであれば、「反社との決別宣言」は絵に描いた餅でしかない。西日本シティ銀行は、預金残高や貸出金残高などで九州の地銀で2位につけているものの、1位の福岡銀行から大きく引き離されて年々その差は開いている。まさに「貧すれば鈍する」、西日本シティ銀行の凋落が数字上のものだけでないことを如実に示す取材対応だったといえる。

■反社勢力でも融資を実行?~大牟田柳川信用金庫

 3金融機関のなかで対応が最も悪質だったのが、大牟田柳川信用金庫だ。取材当初は「個別の情報は答えられない」としていたものの、取材班が「指定暴力団への利益供与は重大な案件ではないか」と質したところ「対応を協議する」と態度を一変させ、しかしその同日中にはさらに「行内規定で個人情報については答えられない」と対応が二転三転したのだ。

 仮に行内規定があったのであれば最初からそう回答すればよかったにもかかわらず、協議したのちに取材拒否というのであれば理屈に合わない。しかも最後に対応に出た担当者は取材班の質問にまったく耳を貸そうとせず、「何を聞かれても答えられないので、切ります」と一方的に電話を切っている。

大牟田柳川信用金庫
大牟田柳川信用金庫

 大牟田柳川信金の慌てぶりと不自然な対応には、じつは理由がある。諸藤氏に対して3億円近い融資を行っている可能性があるのだ。

有限会社くるまドットコム代表・諸藤壮一氏(タイの性風俗店で撮影されたもの。隣に座る女性は、まだ10代前半の「少女」だ)
有限会社くるまドットコム代表・諸藤壮一氏(タイの性風俗店で撮影されたもの。隣に座る女性は、まだ10代前半の「少女」だ)

 「今年3月に諸藤氏が名誉毀損で逮捕されましたが、その1カ月後の4月に、諸藤氏の取引金融機関約10社の関係者が集められ、諸藤氏の弁護士を同席させて諸藤氏の正当性を主張する会合を持ったんです。その会合を主導したのが大牟田柳川信金でした。メインバンクの大牟田柳川信金にしてみれば、いま諸藤氏に倒れてもらっては困るわけで、言ってみればズブズブの関係なんですよ。他の金融機関はつきあわされたかたちで取引を続けたところ、今回のデータ・マックスの記事で諸藤氏と反社勢力とのつきあいが表面化してしまった。他行は大牟田柳川信金に文句のひとつでも言いたいんじゃないですか」(大牟田市内の金融機関関係者)

 大牟田柳川信金は、反社会的勢力に対する基本方針を定めており、「当金庫は、反社会的勢力に対して資金提供、不適切・異例な取引および便宜供与は行ないません」とする。しかし、諸藤氏の反社勢力とのつながりや名誉毀損で逮捕されたことを知りながら融資し続けてきたこと、さらに都合の悪い事実を隠蔽する企業体質をみる限り、「反社との決別宣言は建て前だけ」と指弾せざるをえない。

■末端組員には口座開設も認めず、一方で「半グレには融資」の愚策

 1992年に暴力団対策法(暴対法)が施行されて以降、各自治体が制定する暴力団排除条例の整備が進み、暴力団組員に対する締め付けは厳しさを増している。そうした締め付けは現役組員だけではなく、暴力団を離脱してからも5年間は銀行口座の開設が認められない(※)など、特に金融機関は暴力団関係者との取引をいっさい認めないという姿勢を徹底しているようにみえる。

 (※「元暴5年条項」。生活用口座については開設が認められるケースもある)

 その間隙をついて勢力を伸ばしているのが俗に「半グレ」と呼ばれる、正式に暴力団組織に組み込まれていない勢力だ。組織に属さないかわりに暴力団組織に寄生することで恩恵を受けており、暴力団組織も半グレを通して収益を確保するビジネスモデル(いわゆる「シノギ」)を構築するなど、いまや持ちつ持たれつの関係性が常態化している。

 こうした現状をみるならば、むしろ組織に属さないフロント企業(企業舎弟、暴力団関係者が関与する企業)や半グレ企業らの銀行取引などを強く規制すべきところ、金融機関は機械的に判別できる末端組員の口座開設は頑として認めないにも関わらず、より多くのシノギをあげるフロント企業や半グレ勢力を野放しにしてはいまいか。更生を誓って暴力団から離脱した者が5年間も銀行口座を開設できないことと、反社勢力に利益供与を続ける諸藤氏が3億円もの融資を受けているという現実は、真の意味での暴力団排除や反社勢力との決別のありかたについて再考を迫るものだ。

■問われる、金融機関のコンプライアンス

 金融機関、とくに地方銀行にとっては、たとえ反社勢力の疑いが濃い場合でも警察のデータベースに名前がない以上、上顧客として繋ぎ留めておきたいという思惑もある。急激な人口減による地方経済の疲弊など、地方銀行を取り巻く環境に明るい材料はほとんどない。今後15年~20年後には地方銀行の半分近くが経営統合などによって姿を消すとされており、地銀それぞれになりふり構わぬ生き残り策が練られている真っ最中だ。

 仮に、金融機関側に利益をもたらすことも多い反社勢力との取引が形だけのザル審査になっているとすれば、それは反社勢力を甘く見すぎている。「白猫でも黒猫でもどちらでもいい。ネズミを取ってくるのが良い猫だ」は鄧小平の言葉とされるが、たとえ「良い猫」といえどその鋭い牙を飼い主に向けることがままあることは、金融機関の不祥事の歴史をちょっとでも振り返ってみればすぐにわかるはずなのだ。

 大手PR企業にきくと、西日本シティ銀行や大牟田柳川信金の取材対応は「広報部の対応としては〈最悪〉の部類」だという。反社勢力と取引があるのか「答えられない」、さらに取引があることがわかった際にどう対応するかも「答えられない」、というのであれば、反社勢力との決別はポーズだけと批判されてもしかたあるまい。企業に問われているコンプライアンス(法令順守)とは、都合の悪いことを隠し通すことではなく説明責任も含むということを、金融機関は再認識すべきだ。

【特別取材班】

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