2024年04月26日( 金 )

【閲覧注意】「久留米・指ペンチ事件」凄惨リンチ現場の動画を入手~問題企業は依然として久留米市発注工事を受注

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傷害致死や傷害事件の過去もある「経営者」

 坊主刈の大柄の男性が何事かわめきながら、足元にしゃがみ込む男性を殴り続ける姿を捉えた動画。別の動画では、同じ加害者男性が相手の指をペンチでねじり上げ、被害者が絶叫する場面も撮影されている。加害者男性の顔には時折笑顔も浮かび、発する言葉からは楽しみながら暴力を振るっている様子も伝わってくる。

「痛み伴わんと分からんと?あ? なら忘れんようにしちゃろうか、また! ペンチ持って来いや、はよ。はよペンチ! (指をペンチで挟みながら)ちぎってよか? あ? あ? あ? 破ってよか?」

「だめです! あぁー(絶叫)」

野崎研二被告(右)

 目を覆いたくなるような凄惨なリンチが行われていたのは、久留米市にある建設会社「(株)福子建設」。暴行を加えているのは、同社の実質的経営者である野崎研二被告(46)。被害にあったのは、同社従業員のNさんだ。

 野崎被告は昨年10月、Nさんの指をペンチで挟んで骨を折るなどの重傷を負わせた容疑で逮捕された。今年9月10日に暴行罪で懲役1年10カ月の判決が下され、野崎被告が控訴したため12月10日に控訴審が開かれる予定だ。

 野崎被告が暴力事件で逮捕されたのはこれが初めてではない。今回の事件を含め過去3回、暴力事件を起こして逮捕されている。1回目は2005年12月、金を貸していた知人に暴行を加えて死亡させ、傷害致死で懲役3年、執行猶予5年の判決。2回目は2014年5月、従業員に対する傷害罪で懲役1年、保護観察付き執行猶予の判決を受けていた。

 Nさんは2015年ごろ、知人の紹介で福子建設に入社した。慣れない仕事のためミスを繰り返したNさんに対し、野崎被告はしだいに暴力を振るうようになっていったという。

「作業の失敗や発注ミスなどを繰り返すうちに、入社して1年後くらいから、殴る蹴るの暴行を受けるようになりました」(Nさん)

Nさんの指をペンチで締め上げる野崎研二被告(左)

 Nさんは暴力を止めてほしいと何度も訴えたが、暴力行為が止むことはなく、それどころか暴力行為は次第にエスカレートしていく。

「2017年の12月中旬、車の清掃をしていたところを野崎氏に呼ばれ、行ってみると野崎氏が両手で鉄パイプを握りしめ、振りかざした状態で待っていました。野崎氏は持っていた鉄パイプを振り下ろし、私の右脛を殴ったんです。痛みに悶絶する私を見て野崎氏は『お前の足は頑丈だな』などと言い、その後、あばら、右手首など、体全体を殴りました。足を引きずりながら作業に戻りましたが……その当時、社有車で事故を起こしたことがあったため、会社に対する負い目から被害届などは出しませんでした。家族や知人に対しても、『通勤中に自転車に乗っていたが、自転車から転んで足の骨を折った』と説明しました」(Nさん)

依然として久留米市から工事受注の「なぜ?」

Nさんを殴打する野崎研二被告(左)

 撮影された暴行動画からわかるように、野崎被告の言動は明らかに常軌を逸している。従業員に対して暴力を振るうことが常態化していることがうかがえ、恐怖心からか他の従業員もNさんへの暴力を止める素振りすらみせていない。

 建設業の経営者が逮捕された場合、公共工事への参加を締め出す指名停止処分や建設業許可の取消処分などが行われるのが通常だ。福子建設の場合も、野崎被告が2014年5月に従業員に対する傷害罪で懲役1年(保護観察付き執行猶予5年)の判決を受けた際、8月13日付で建設業許可の取消処分を受けている。昨年の事件が発覚した際、福子建設は久留米市発注工事を落札していたが、野崎被告の逮捕を受けて福子建設側が契約を辞退し、久留米市は6カ月間の指名停止措置(2018年11月1日~19年4月30日)を行っていた。

 しかし福子建設は指名停止措置が解けた後、久留米市から道路改良工事などすでに2件の工事を受注している(受注総額約3,200万円)。傷害致死や傷害事件の前歴を反省するどころか、より悪質な凄惨リンチ事件を引き起こした人物が実質的に支配し、その親族が代表を務める企業が、税金が投入される公共工事を請け負うことがはたして妥当なのか。

Nさんは、野崎被告にハンマーで殴られるなどの暴行も受けた

 久留米市総務部契約課は、「従業員などの犯罪行為は指名停止用件に該当しない。登記上代表者(母親)の管理監督責任があるのではないか、という議論もあったが、(暴行が)業務時間外に行われた行為ということで、結論に至らなかった」とする。

 福子建設では野崎被告が2014年に有罪判決を受けた後、法人代表者を野崎被告の母親に変更したうえで、久留米市発注工事を受注して営業を続けてきた。野崎被告を法人登記から抹消したかたちだが、そもそも野崎被告は福子建設の株主でもあり、動画でもわかるように同社の圧倒的な支配者なのだ。

 しかし、野崎被告は法廷で「アルバイトの身分」だと供述した。役員でもなければ正社員でもないため、野崎被告が暴力事件などで逮捕や起訴された場合でも、それが直接福子建設に対する処分につながりにくい仕組みになっているのだ。そうした「実態を反映しない登記」が野崎被告の暴力行為を助長したことはないのか。法人代表者である母親の管理監督責任を問う余地は十分にあるはずだ。

 前出、久留米市総務部契約課は「世論などの状況を鑑み、極めて悪質と判断した場合には(新たな処分の)検討もあり得る」ともしている。凄惨なリンチ動画をみた久留米市民は、どう判断するだろうか。

【特別取材班】

※マスコミ関係者で、動画提供を希望される方は編集部の特別取材班宛てにご連絡ください。

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