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2020年01月19日 07:30

博多の食文化を次代に伝える役割を担い魚の熟成で新たな調理法の確立に挑む 一樹百穫 

日本料理店
(株)てら岡

博多の食文化に貢献

日本料理てら岡 中洲本店
日本料理てら岡 中洲本店

 福岡の食文化に多大な貢献をはたしてきた「日本料理 てら岡」の会長・寺岡直彦氏が博多で創業したのは1976年9月、43年前のことである。わずか27坪で始めた店は、玄界灘の新鮮な魚を始め地元の食材を使った独創的な料理でお客を魅了し、瞬く間に繁盛店となり店舗数も増えた。89年には現在の地に「日本料理てら岡 中洲店」をオープン。2017年に新築し、7階建ての「日本料理てら岡 中洲本店」を完成させ、店舗も集約した。

 「長年の念願が叶った」と寺岡氏が笑みをこぼすほど、その出来栄えはすばらしい。1階から7階まで、修行時代から使ってきた道具や器、高価な食器や書画、装飾品など、これまで寺岡氏が国内はもとより、中国やアメリカなど海外で買い付けた貴重なものが配置、あるいは、店舗の一部として使われている。品物によっては、博物館級のものもありこだわりが伝わってくる。「良い物を残し、伝えていきたい」という思いが溢れており、寺岡氏の集大成ともいえる世界をつくり出した。

 連日、常連客を中心に幅広い層の客が店を訪れる。近年は、海外からの客も増加しており、「てら岡」の名はシンガポールや中国でも知られる存在となっている。

襖絵が見事な5階の高砂子
襖絵が見事な5階の高砂子

縁を守り、縁を活かす

数寄屋造りの本格的茶室
数寄屋造りの本格的茶室

 「小才は縁に出会って縁に気づかず。中才は縁に気づいて縁を活かさず。大才は袖すり合って縁をも活かす」。江戸時代初期の武将で徳川家の兵法指南役を務めた柳生宗矩(やぎゅう・むねのり)が遺し、柳生家に代々伝わる家訓である。寺岡氏はこの言葉を胸に刻み、料理人として、経営者としての道を歩んできた。

 たとえば、調理長時代に3年間、茶道を学んだ。茶懐石など料理だけでなく日本文化そのものを学ぼうと、博多の天与庵の老師に師事した。「建物や庭に限らず、掛け軸や生け花、屏風、焼き物、着物などさまざまな日本文化が凝縮したものが日本の茶道。茶道を学んだことが、大いに役に立った」と振り返る。修業時代から独特の美意識や感性を有していたが、茶道がその力を増幅させたといえる。

 お世話になった高僧との縁に応えたいと、旧中洲店を建設する際に数寄屋つくりの本格的な茶室をつくった。しかも、中洲本店を新築する際には、その茶室を解体し、新館で再現したのだ。茶室を新しくつくるよりもコストはかかるが、寺岡氏は縁を大切にした。こうしたところに寺岡氏が料理人として経営者として大きくなった要因があるように思えてならない。

成長のキーワードは「守破離」

 寺岡氏は、料理人として成長する基本を「守破離」だと考える。教えられたことを素直に吸収し基礎をつくる「守」、そのうえで工夫を凝らす「破」、そして自分の世界をつくる「離」。寺岡氏はまさに、守破離を実践し自分の世界をつくり上げてきた。それが、てら岡流の味や盛り付けであり、店づくりである。

 守破離を経て成長するなかでも、「変えてはいけないものと変えるべきもの」があるという。日本料理の基本となる考え方や刺身の引き方などの技術、仕事のやり方は変えてはいけないものだが、時代とともに変わるお客の嗜好などには柔軟に合わせていくべきだという。「昔は砂糖が貴重だったので、甘い味付けが好まれました。今は健康志向の高まりから、砂糖やみりんなどをあまり使わなくなるなど、味付けも時代に合わせて変わらなければお客さまの要望に沿えなくなります」と語る。

 寺岡氏は、自身で茶道を嗜むなどして感性を磨いてきた。店の料理人にも感性を磨く大切さを常に語り、教え、機会を与えている。てら岡のブランドは、こうした人づくりのなかで育まれているのだ。

次代に伝える責任

代表取締役会長 寺岡 直彦 氏
代表取締役会長 寺岡 直彦 氏

 時代や道を切り拓いた者に求められるのは、思想や技を次の世代に伝えていくことであろう。寺岡氏も、これまで受けてきた教えや縁に感謝しながら、養ってきた技や感性、知恵を次の代に伝えることで、その役割を果たそうとしている。

 料理人の世界では、技術は先輩の技を見て盗んで覚えるものだから、一人前になるまでに10年かかるといわれる。しかし、寺岡流では、時代に合わせて自分が知っていることは隠さず積極的に教える。そうして寺岡氏が育てる料理人は8年ほどで一人前になり、自分なりの世界を創っていくのだが、寺岡氏の思想や技は成長する料理人たちのなかで、次の時代にも生き続けることになる。

 料理人として、新しい味の探求にも挑戦し続ける。最近は、魚の熟成法について研究している。肉を熟成するのと同じように魚を熟成すると旨味が出るという。しかし、魚は種類が多い。種類や鮮度、季節、天気などによって熟成方法も変わる。「フグやマグロ、ブリなどの熟成を試したが、とても美味い。しかし、熟成の概念というか規格がないので、これを確立したい」と目を輝かせる。料理人としての向上心はさらに高まっている。こうした姿勢を見せ、伝えることも寺岡氏の役割であろう。

 次代を背負う人材を育てながら、熟成という新しい分野を開拓し、技法を確立することで、自分を育ててくれた博多の街への貢献も果たそうとしているのだ。寺岡氏の世界はまだまだ広がっている。

<COMPANY INFORMATION>
代 表:寺岡 直彦
所在地:福岡市中央区渡辺通5-2-10
設 立:1981年8月
資本金:5,000万円
TEL:092-714-4411
URL:https://www.teraokagroup.co.jp

25周年記念出版雑誌 『一樹百穫』 一覧

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