2024年04月20日( 土 )

激変!米国コワーキングスペース ニーズが急増し、競争が激化(4)

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fabbit(株) 代表取締役社長 田中 保成 氏

米国市場の今後

 米国の先進的なIT企業ではコスト削減のため、オフィスすらもたない会社も出てきている。プログラミングやコーディング作業はリモートワークができるため、オフィスに人が集まる必要がなく、進捗管理ができて成果が目に見える体制が構築できていれば仕事をする場所に制限はない。

 IT技術が進歩して離れていても複数名でコミュニケーションができるようになったため、労務管理の課題を解決できれば、遠隔地でも勤務が可能だ。そのためコワーキングスペースは、企業のサテライトオフィスとしても多く活用されている。

 コワーキングスペースはオフィスの1.6%(Coliers International調べ)を占めている。これから大きく成長する余地がある市場だ。市場そのものが伸びているため、運営企業の淘汰はしばらく先になると予想している。業界内での競争が激しくなると、価格競争が起こり、経営が立ち行かなくなった企業はM&Aや閉鎖に向かう可能性も高い。市場が安定するまで、各企業の動向に目が離せない。

 WeWorkの売上は、2018年で18億2,000万ドルと前年度の約2倍に勢いよく伸びているが、収益としては黒字化が不透明な状況だ。現状のビジネスモデルは持続性があるのかということが、株式公開の申請書類を提出したことで米国でも議論されている。(注:その後、WeWorkは株式公開を先送りすることを決定)

 IT企業だとWeWorkは自負しているようだが、株式市場関係者の見方は本質的には不動産業と何ら変わりはないということだ。不動産を借りて内装を整えて利用者に提供するため、今のスピードで成長するためには施設の先行投資や入居者を広げる広告宣伝が欠かせない。

 どの時点で急速な成長拡大路線から収益性を上げることに舵を切るのかわからないが、収益化に向けた経営の筋道が見えていない点や経営者に対するガバナンスの欠如などが、投資家の不安を呼んでいるようだ。

 さらに、シェアを広げる成長のスピードを緩めると黒字化するとWeWorkはコメントしているが、今のビジネスモデルで新規展開し続けると、入居率が損益分岐点を上回り安定するまで半年ほどかかる。条件の良い人気物件を先手必勝で押さえることと、米国は赤字でも上場する企業が珍しくないため、高い成長率を評価する投資家への印象を重視して毎年規模を拡大することを最優先させた結果だ。

 日本を含めた海外との関わりのなかで、fabbitは差別化を図っていく方針だ。日本から米国での起業を支援するのと同時に、米国から日本やアジア市場へのビジネス拡大の双方向の流れを意識して展開する。

 fabbitを新規に展開するサンフランシスコは、ほかの米国の都市と比較して相対的に地理的にも日本と近い。そのためスタートアップ企業支援を始め、米国のスタートアップ企業と協業したい日本の中堅企業の入居促進とマッチングにも取り組む予定だ。

 シリコンバレーと日本での経済交流を図る非営利組織「シリコンバレー・ジャパン・プラットフォーム」(SVJP)にもスポンサーとして参加しており、スタートアップと大企業の双方で日米の経済交流が一層盛んになるよう、fabbitは貢献したい。

(了)
【石井ゆかり】

<COMPANY INFORMATION>
fabbit(ファビット)(株)

代 表:田中 保成
所在地:東京都千代田区大手町2-6-1
    朝日生命大手町ビル3階
設 立:2017年4月
資本金:1,000万円
売上高:(18/9)2億9,400万円

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