2024年03月29日( 金 )

誰もが「自分の未病の医者」になれる 未病メソッドを提唱し、未病産業を振興(4)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

(一社)日本未病総合研究所 代表理事 福生 吉裕 氏

経済交流を深め、未病産業を発展させる

 2017年11月には韓国・大田(テジョン)で日韓未病フォーラムが開催されました。日本ではあまり報じられませんが、実は韓国も少子高齢化対策が国家的な問題となっているのです。高齢者を支える現役世代は、2014年には5.8人だったのに対し、2060年には1.3人になるという深刻な事態が予想されています。まさに日本の後を追って高齢社会をひた走っているのです。

 この日韓未病フォーラムでは、韓国韓医学研究院(KIOM)が中心となり、得意のITや画像認識装置、ビッグデータを駆使し未病への応用の研究が行われております。年間予算は、60億とも言われています。昨年8月にはKIOMの李時雨教授らの未病研究チームが来日し、日本の未病改善施設やメンタルヘルスケアの現状を視察しました。

 今年1月には台湾にも行ってきました。台湾ではこれから介護保険制度をつくるにあたり、日本の介護保険制度をモデルにする予定だったのです。しかし、総人口が2,300万人の台湾では日本モデルでは難しいことがわかり、「介護の前の未病ケア」の案が浮上し、未病の解説に行ってきました。これは日本医師会の横倉義武会長のご紹介もあり、台湾医師会の邱泰源会長との会談と国立台湾大学での未病の解説を行うことができました。未病のパイプが台湾にも広がったといえます。

 これからも東アジア諸国との交流を深め、「未病」の研究、普及、情報共有に取り組んでいきたいと思います。それと、これまでは学術面での交流がメインでしたが、今後は経済交流を深め、お互いの国の未病産業の発展に寄与していきたいと考えています。これを世界保健機関(WHO)が推奨しているユニバーサル・ヘルス・カバレッジになぞらえ、東アジア圏独特の医療事情を共有する日本、中国、台湾と韓国で「ユニバーサル・未病・カバレッジ」を提唱していきたいと考えております。

 最後になりましたが、日本未病システム学会では、「養生訓」を著した貝原益軒の生誕日(1630年12月17日)を記念して、12月17日を「未病の日」と定めました。未病総研もこれに呼応して今年も「12.17」を記念した公開市民セミナーなどを行う予定です。

 養生訓には「腹八分に医者いらず」という言葉が出てきますが、これはまさしく未病ケアなのです。自分が、自分の身体の医者になって養生する。養生訓の理念を現代に復活させるために、未病総研では「誰でも自分の未病の医者になれる」を合言葉に、さまざまな事業活動を展開していきたいと考えています。

(了)
【吉村 敏】

<プロフィール>
福生吉裕(ふくお・よしひろ)
 
医学博士。1947年生まれ。日本医科大学卒。三重県出身。
日本医科大学連携教授。(一財)博慈会老人病研究所所長。(一社)日本未病システム学会前理事長。

 1995年第1回 東京未病研究会創設会長。1997年、日本未病システム学会を設立、常任理事。2003年、第7回アジアオセアニア国際老年学会においてMibyouシンポジウムを開催。博慈会老人病研究所紀要「未病と抗老化」編集長。2013年、第20回日本未病システム学会会長。2014年日本未病システム学会理事長。2019年、(一社)日本未病総合研究所代表理事。
資格/日本未病システム学会認定未病医、日本内科学会認定内科医、日本動脈硬化学会評議員・功労会員、日本老年医学学会指導医・評議員。中国長春中医薬大学客員教授。

(3)

関連記事