2024年04月25日( 木 )

誰もが「自分の未病の医者」になれる 未病メソッドを提唱し、未病産業を振興(3)

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(一社)日本未病総合研究所 代表理事 福生 吉裕 氏

「未病産業コンソーシアム」をつくる

 以上の目標に向かって未病の啓発とともに重要になるのが、未病状態をケアする具体策です。未病総研は、医療に携わる人、健康産業に関わる人、そういう人たちと未病の考え方を共有しながら未病産業を後押ししていくことも大きな課題だと捉えています。幸いにして未病総研は、日本未病システム学会と日本薬科大学と連携していますので、未病ケアに役立つ製品・サービスの研究開発をサポートできる体制にあります。日本未病システム学会には、薬剤師、臨床検査技師、管理栄養士、看護師、医師など、さまざまな医療職種が会員となっています。

 私が所長を務める(一財)博慈会老人病研究所では、「未病と抗老化」という学術誌を発刊していますが、そこには約100名の研究者が登録されています。また、私が主宰する研究会に「21世紀医療課題委員会」というのがあり、毎回テーマごとに企業の方と情報交換、勉強会を開いています。

 こうしたネットワークを活用しながら、未病総研の主旨に賛同する企業と連携して「未病総研コンソーシアム」を活性化していければと考えております。マクロ未病学とミクロ未病学が出会うことで、融合化が図れます。それぞれの得意とする分野を生かし、グループで未病の分野を共有し、5G世代へ向けて未病を発信していきます。

 ここでミクロ未病学について解説をしておきます。現代未病の概念は、ミクロ未病学としては大きく2つに分けられます。1つは、「自覚症状はないが、検査で異常所見が見られる状態」です。たとえば、血圧が高い、血糖値が高い、でも自覚症状がない。これを西洋医学的未病と言います。

 もう1つは、「自覚症状があっても検査で異常がない状態」。肩がこる、冷え性などがこれに該当します。これを東洋医学的未病と呼んでいます。そして、未病期が健康と病気の間のどの状態にあるかを判別すると、セルフメディケーションや保健指導で改善できる状態の「未病1期(自立支援)」と、受診勧奨が必要な状態である「未病2期(治療支援)」の2段階に分けられます。未病総研が主に担うのは「未病1」の状態の人です。この「未病1」の改善だけでも、試算では2兆円の医療費の削除が可能です。

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未病の概念は東アジア共通の資源

 未病総研のもう1つの仕事として、海外との交流活動にも力を入れております。とりわけ漢字文化圏である東アジア諸国は、未病の考え方は受け入れやすい土壌があります。そして、迫り来る少子高齢社会が抱える問題も、東アジア各国で共通する深刻な課題です。

 とくに人口が14億人の中国では、60歳以上はすでに約2.2億人に達しており、2011年から2015年までは年間600万人ずつ増え続けています。これは80年より始まった一人っ子政策が影響していますが、今後は日本より少子高齢化の率が急カーブで上昇し、その深刻さは日本以上になってくるでしょう。

 私は2016年5月に中国長春を訪れ、長春中医薬大学の方々とフォーラムを交え、両国間に迫っている社会保障制度や医療制度の問題の対策を議論してきました。そこで確信したのは、両国間で理解されている未病の有効活用がこの問題を解決する大きな資源になることでした。すでに2015年には、長春中医薬大学の付属病院に「治未病センター」が開設されておりました。その背景には、2005年当時に国務院の呉儀副総理が来日し、その折に日本での未病医学の現状に関心をもたれたことがあります。

 その2年後の2007年には中国各地に200程の施設「治未病センター」があっという間に建設されました。この未病センターでは、疲労、睡眠不足、肩こり、むくみ、のぼせ、動悸、虚弱、食欲不良など高齢者の軽症状態に対応するなど、最前線の診療所として活動しています。さらに中医問診を行い中医学的治療については医療保険も適用されているのです。早くも中国では、介護保険ができる前に未病ケア政策を打ち出しています。

(つづく)
【吉村 敏】

<プロフィール>
福生吉裕(ふくお・よしひろ)
 
医学博士。1947年生まれ。日本医科大学卒。三重県出身。
日本医科大学連携教授。(一財)博慈会老人病研究所所長。(一社)日本未病システム学会前理事長。

 1995年第1回 東京未病研究会創設会長。1997年、日本未病システム学会を設立、常任理事。2003年、第7回アジアオセアニア国際老年学会においてMibyouシンポジウムを開催。博慈会老人病研究所紀要「未病と抗老化」編集長。2013年、第20回日本未病システム学会会長。2014年日本未病システム学会理事長。2019年、(一社)日本未病総合研究所代表理事。
資格/日本未病システム学会認定未病医、日本内科学会認定内科医、日本動脈硬化学会評議員・功労会員、日本老年医学学会指導医・評議員。中国長春中医薬大学客員教授。

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