2024年03月29日( 金 )

【凡学一生のやさしい法律学】憲法改正について(9)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

皇位継承問題について――女性天皇の議論

 憲法上、象徴天皇制(第1条)は最初に規定された日本国の基本的統治構造です。しかし、皇位継承は法律事項として法律の規定に委ねられています(第2条)。この皇位継承を規定した法律が皇室典範です。

 問題は、この皇室典範は実は明治憲法の制定と同時に制定された法律で、憲法第98条に規定する「ふるい」にかかります。内容が日本国憲法に抵触すればその部分・全体が無効となります。つまり、皇室典範が規定する皇位継承の要件である、「皇男子孫」が性による差別として第14条違反とならないかの問題です。実際問題としては、皇位継承は日本国憲法施行後まだ1回しか出現せず、何の問題もなかったため、議論されませんでした。

 しかし、今回のご高齢を理由とする譲位による皇位継承において国民が気にしたことは、即位されたばかりの天皇陛下がご高齢になり譲位をされる数十年後を考えると、皇室典範の規定では、同じご高齢の秋篠宮殿下が皇位継承者となるため、高齢の天皇を回避するという目的に合致しないことに気が付いたのです。やはり譲位をうけた新天皇はその在位期間が相当なものでなければなりません。そこで、天皇制を安定的に維持するためには、女性天皇も認めるべきだとの議論が起こりました。象徴天皇制であるから、一層、性的区別の必要はないとの主張、外国・先進国にも女王がそれなりに存在することも主張されています。

 皇位承継を情緒的にまた、歴史解釈的に主張することも当然許されますが、これらはすべて「決め手」とはなり得ません。皇位継承はまさしく憲法問題・法律問題だからです。

 先ず、「皇男子孫」規定が14条違反であれば、同部分は無効ですから、皇位継承の要件は法律上、存在しないことになります。皇位継承の要件を改めて立法するとなると、さすがの自民党も性による差別と非難される立法はできないでしょう。結局、数十年後に実際に天皇陛下のご高齢のため譲位が問題となる時点まで「先送り」になるのがオチとみるべきです。

結語

 憲法に限らず、法の改正権限は現在の主権者である、国民1人ひとりにあります。従って主権者として法の改正の必要性を判断できない状況で、改正賛成・反対を述べることはできません。現状に満足しているから改正反対という立場はまさに不都合な真実が、現実の社会には無数にあることを知らない人の選択肢です。また、一部分だけを捉えて改正賛成というひとも、やはり、全体を知らないという意味で、同じ批判が妥当します。

 国民1人ひとりが自分の国の憲法の本当の姿を理解していない状況で、同じく何も理解していない国会議員による憲法改正の動きは極めて危険な動きというほかありません。

 国民主権の本当の意味が問われています。

(了)

(8)

関連記事