2024年04月19日( 金 )

鹿島建設が犯した大罪(前)

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※画像はイメージです。

 宮崎県都城市は今月15日、耐震基準を大きく下回る市立保育園を今年度末で休止する方針であることを公表した。

 福岡県久留米市の分譲マンションは、設計における偽装・施工における手抜きにより建築基準関係法令に違反し耐震強度が法が定めた基準の35%であることが判明し、区分所有者が設計事務所と建設会社(鹿島建設)を相手にマンションの建替えを求める訴訟を起こしていた(裁判は本年8月末に和解が成立)。

 都城市の保育園が「耐震基準を満たしていない」という理由で建物の使用休止を決定したように、耐震基準を満たしていないマンションは建替えや補強により耐震基準を満たすように是正をすべきである。実際に行政では、市民からの情報提供や建築パトロールなどにより、違法建築物の所有者に対して建物の是正を指示している。

 ちなみに、このマンションの耐震強度不足について区分所有者から相談を受けた久留米市は、行政庁として執るべき対応を為さなかった。後述する久留米シティプラザをはじめ、鹿島建設は久留米市発注の大型公共工事を多く受注している。前久留米市長が鹿島建設の支店長らとたびたびゴルフを楽しんでいることは一部の市民の間で噂となっていたことなどから、鹿島建設と久留米市の深い関係は明らかである。このような背景から、久留米市はマンションの耐震強度不足や施工ミスに関して消極的な対応に終始したのである。

 久留米市の分譲マンションをめぐる裁判は和解が成立し、今後、補強工事が行われると思われるが、このマンションにおいて、建設業者である鹿島建設が重ねたいくつもの罪を挙げ、巨大企業と弁護士の傲慢さを伝えたい。

引き渡し直後から不具合が頻発

 平成8年1月に竣工したこのマンション(鉄骨鉄筋コンクリート造15階建て)は、引き渡し直後から、立体駐車場のパレット脱落、外壁タイルや共用廊下に無数のクラックが発生、外壁からは錆汁が流出するなどの不具合が発生していた。

 管理組合は鹿島建設に対し不具合の対処を求めたが、鹿島建設は適切な対応をしなかった。この後も管理組合は鹿島建設に適切な対応を求め続けたが対処されることはなく、下請業者(栗木工務店:久留米市)が対応していたが、平成16年9月以降は鹿島建設が対応するようになり、平成16年9月、外壁等の共用部分の躯体調査が開始された。

 平成18~19年にかけては、鹿島建設による大規模な調査が実施され、その結果、信じ難いほどの施工上の瑕疵が露わになった。

 マンションの現況を確認した鹿島建設の技術部長は「鹿島建設の施工による標準的な建物とはいえない。鹿島の責任で調査補修を行う」と明言したという。

 しかし、共用廊下や外部階段の補修と専有部分のうち5戸だけのスケルトン状態での調査(内装を剥がし躯体の状態を調査)を行った段階で鉄筋量の不足などが判明したため、鹿島建設は管理組合に約束していた全戸のスケルトン調査と瑕疵の補修を撤回し、協議にすら応じなくなった。

 平成21年10月には鹿島建設が、管理組合を相手方として調停を申し立てたが、平成26年2月、調停は成立しないものとして終了した。調停において鹿島建設は「施工に関して相手方に対し法的責任を負わない」と主張していた。

 この調停の調停委員を務めたのは久留米市内の建設業者・小林建設社長・小林氏である。小林氏は調停において鹿島建設を擁護する言動を繰り返していたが、その理由が後に明らかになった。平成28年4月に開館した久留米市の市民ホールである久留米シティプラザの建設工事は鹿島建設と小林建設ほか2社の4社による建設協同企業体により施工が行われたのである。

 施工は25年10月から開始されており、建設期間と調停の期間が重なっていることがわかる。共同企業体の筆頭は鹿島建設であり、工事費の流れも筆頭の鹿島建設からほかの建設業者へ流れる。協同企業体を編成する裏には相互の関係性や利害が絡んでいるが、大型公共工事において協同企業体を組む建設会社の社長が共同企業体の筆頭企業が申し立てた調停の調停委員を務めることは著しく平等性を欠くものである。

 調停開始後に共同企業体を編成したのであれば、その時点で小林氏は調停員を辞任すべきであった。しかし、小林氏が調停委員を続けたということは「調停において鹿島建設を擁護する」という役割があったと考えることは自然であり、調停の相手方となったマンションの区分所有者たちもそう確信している。結果的に、小林氏が社長を務める小林建設は、鹿島建設とともに久留米市発注の大型公共工事において多大な利益を上げたのである。

(つづく)
【桑野健介】

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