2024年04月17日( 水 )

ソフトバンクとライン経営統合の背景とインパクト(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 メッセンジャーアプリ最大手のLINEとソフトバンクグループ傘下のヤフーが経営統合されるというニュースが大きな話題となっている。LINEは韓国企業ネイバーの子会社で、ネイバーはLINEの72.6%の株式を保有している。

 ネイバーとヤフーの親会社であるZホールディングスは、資本金を半分ずつ出資して新しい会社を設立し、その傘下にライン、ヤフージャパン、ヤフーショッピング、ZOZO、ジャパンネット銀行などをぶら下げることを検討している。両社は経営統合に向けての最終調整に入っており、早ければ月内にも合意に達する可能性がある。

 LINEの利用者数は約8,000万人、ヤフーの利用者数は約5,000万人に上っているので、統合が実現すれば、利用者数1億人規模の巨大なITサービス企業が日本に誕生し、ゲーム、SNSや検索、ニュースメディア、ネット通販、金融などを手がけることになる。 それに、両社とも力を入れているスマホ決済では、かなり優位性を確保できるようになる。

 キャッシュレス決済は予想市場規模82兆円の巨大市場で、現在LINEの「LINEペイ」の登録者数は3,690万人、ソフトバンクの「Pay Pay(ペイペイ)」は1,900万人なので、統合会社は合計5,590万人のユーザーを確保することになり、NTTドコモの「d払い」(1,000万人) の5倍超となり、この分野でNTTドコモを圧倒することになる。またネットショッピング分野でも、2位のヤフージャパン(取引額2兆3.400億円)はLINEと手を組むことによって、1位の楽天を脅かす存在となり得る。

 業界では両社の統合が、お互いの弱点を補うことになり、シナジー効果があるだろうと評価している。また、世界的に幅を利かせている米国IT企業や中国のネット通販大手に対抗するためにも、このような統合は良い経営判断とされている。さらに、ソフトバンクもネイバーもAIにかなり力を入れているので、両社の統合は、その分野においても弾みがつくことになるだろう。

 それでは、両社が経営統合を考えるようになった背景に、どのような事情があるのだろうか。2015年になって、メッセンジャーアプリの価値は下がり始めた。LINEの企業価値は、一時期2兆円に達していたが、下がり始め1.5兆円となった。LINEが東京証券取引所に上場をはたした2016年7月には、さらに企業価値は下がり、時価総額は9,000億円ほどとなった。LINEは時価総額が下がっただけではなく、ビジネスモデルの確立や事業の成長も容易ではなかった。

 親会社のネイバーはポータルサイトの広告などで、全体売上高の82.4%を上げていたので、LINEもニュースサービスや広告などを追加することで収益を上げることを狙ったが、ユーザーの反応は芳しくなく、2016年第4四半期には利用者も減るようになった。

(つづく)

(後)

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