2024年04月20日( 土 )

「HARENO GARDEN」で変わる西中洲エリア(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

日陰のイメージを刷新

 ランドマークとして、国の重要文化財建築物指定の「旧福岡県公会堂貴賓館」が存在感を放つ天神中央公園・西中洲エリア。福岡市内屈指の賑わいを誇る天神エリアと博多・中洲エリアとを結ぶ「福博であい橋」を擁するこのエリアは、以前よりある程度の人の往来があったものの、その実態は明るいものとは言い難かった。

 福岡県公園街路課の担当者は、「天神と博多を結ぶ場所で、立地自体は悪くないのですが、木がうっそうと茂っており、夜の利用―とくに女性の1人歩きには不向きと言わざるを得ない状態でした」と話す。石畳の通路などが敷設され、“天神の奥座敷”として風情ある景観を色濃く残す西中洲エリアだが、天神と博多を行き来する際の主要動線にはなり得ていなかったのだ。

 西中洲エリアを両脇から挟む格好で通る、北側の「明治通り」と南側の「国体道路」沿いには、それぞれ商業施設やビジネスビルなどが建ち並んでいる。一方の「福博であい橋」を通る動線上にあるのは、福岡市役所、天神中央公園・アクロス福岡、そして中洲などだ。いずれも重要なスポットではあるが、駅やバス停などから、西中洲エリアを通らずとも行けてしまう。

 また、であい橋の中洲側の接続部は大通りとは言い難く、車両の通行もできないため、そもそもの流入量が制限されてしまう状況が生まれていた。さらに、前述の旧貴賓館や、であい橋のたもとから出ている博多湾&中洲クルーズなどもあるものの、このエリア自体に“わざわざ”足を運ぶだけの魅力が乏しいことが、動線として通行量が少ないだけでなく、滞留人口も少ないという状況をつくり出していたといえよう。

 こうした課題を抱えていた西中洲エリアだが、「天神中央公園西中洲エリア再整備事業」により、その様相は一変した。

ハレノガーデンの誕生

夜景はインスタ映えスポット
夜景はインスタ映えスポット

 天神中央公園西中洲エリア再整備事業の核となるのは、19年8月に開業した飲食・休養施設「HARENO GARDEN(ハレノガーデン)」だ。

 ハレノガーデンは、那珂川に臨み、カフェや専門店をテナントにもつ「HARENO GARDEN EAST」と、旧貴賓館を眺めながらカフェで飲食が楽しめる「HARENO GARDEN WEST」の2棟で構成され、那珂川の水辺空間と旧貴賓館を生かした施設となるよう配慮がなされている。これにより、西中洲エリアの日陰のイメージは刷新され、水と緑と光に彩られた都会のオアシスへと生まれ変わった。外国人観光客を中心に、SNS用のフォトスポットとしても注目を集めている。

 同提案を行ったのは、西日本鉄道(株)(以下、西鉄)を代表企業とし、(株)yHa architects、(株)松本組、西鉄ビルマネージメント(株)、(株)日比谷花壇とで構成される企業グループ。既存空間・施設を生かし、県の「再整備に取り組むことで、西中洲エリアを昼夜ともに利用できる、憩いの場にしたかった」との思いに応えた。

 老舗の名店や高級料理店が立ち並ぶ“大人の隠れ家”として人気が高かった西中洲エリアは、ハレノガーデンの誕生により、若い世代も立ち寄りやすいカジュアルさを兼ね備えた。「明治通り」「国体道路」からハレノガーデンに向かうといった、西中洲エリアを中心とする縦横の移動が活発化し、滞留人口も増加しているようだ。

集客できる西中洲へ

 西中洲エリアでは今後、商業ビル「(仮称)HTSビル」や「西中洲HOTEL PROJECT」など、同エリアの新しい顔となる建築物が続々と誕生する予定となっている。

 ハレノガーデンの誕生により、「明治通り」「国体道路」から人が流入してくる新たな動線が生まれた。天神中心部が「天神ビッグバン」による再開発でヒト・モノ・カネの集積地として発展していくと考えれば、西中洲エリアは“天神の奥座敷”として、ビジネスから一時の間距離を置き、自分の時間を過ごしたいという休憩需要の受け皿としての発展が期待される。

※クリックで拡大

(つづく)
【代 源太朗】

関連記事