2024年03月29日( 金 )

【凡学一生のやさしい法律学】さくら疑獄事件(6)

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折角の捨て身の公務員を無駄死にさせた安倍晋三

 担当公務員の忖度違法行為は、いわば担当公務員の人身御供である。しかし、折角の犠牲も安倍晋三は無駄死にとしてしまった。それが「すり替え謝罪」である。不手際を認め、来春の桜を見る会を中止すると発表した。たしかに過去、数回の会の中止がある。しかしこれらはすべて正当な中止理由が存在した。総理大臣の行為が関連して発生した不手際が問題となっている今春の桜を見る会の議論に対して、来春の会の中止を提案しても、まったく意味がない。それどころか、中止は正当な理由がない、安倍晋三の保身目的の中止であるからそれこそ権限濫用に他ならない。

 このような事情があるので、ほとぼりがさめた来年の早春には何食わぬ顔をして開催を宣言する公算が大である。不適格者の招待は安倍晋三枠を中心に発生しており、それを中止さえすれば、むしろ開催は必要な国家行事だからである。

行政文書の違法破棄

 これは純然たる公文書毀棄罪と公文書管理法違反の違法行為である。この破棄行為が総理大臣の命令によって行われた場合には総理大臣も共犯者となる。しかし、前述のように、これは日本の官僚の属性である出世のための忖度能力が発揮された場面と理解する他ない。招待名簿や推薦名簿を法令の規定どおりに保管すれば、必ず不適切推薦の実態が明るみに出るから、それを自ら忖度して自ら犯罪行為と知って出世のために破棄を敢行したものであろう。

 森友事件の時には上司のかかる犯罪行為すら(それを隠蔽するためかどうかは当事者が死亡して不明であるが)、結果として隠蔽してしまうこととなった部下の一職員の自殺まで発生した。出世よりも命が大切であるという世間の常識は官界では通用しない。

 以上のような事情について、いかなる法的措置が可能か。これは地道に実行公務員を特定して、刑事告訴する他ない。それに加えて、当該公務員の違法犯罪行為によって、国民として有する主権の行使(具体的には投票権、知る権利など)が妨害侵害されたことを理由とする民事賠償責任を問うことである。この訴訟は請求する賠償金より弁護士費用が圧倒的に高額であるという日本司法の決定的欠陥によって、現在まで、事実上封殺されている。

 庶民は自腹を切ってまで政治世界の浄化のために大切な財産を投下しない。結局、日本社会は腐敗が深く進行し続けることになる。このささやかな地道な犯罪の撲滅こそ野党議員のやるべき行動、残された道である。無意味で無効な「私物化」を叫ぶだけよりはるかに実効性のある行動である。

(つづく)

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