2024年04月25日( 木 )

「インボイス制度」導入前における財務体質強化

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(株)アンツインシュアランス 代表取締役社長 玉井 省吾 氏
(株)アンツインシュアランス 代表取締役社長 玉井 省吾 氏

 10月は消費増税や幼児教育無償化など、経済環境に影響を与える変化が大きい事象がありました。軽減税率やポイント還元制度など、消費者視点からの情報がメディアを賑わせています。

 一方で今回は、事業者の視点から脅威となり得る制度変更として、2023年10月1日から導入される「インボイス制度」についてお話しいたします。主に対象となるのは、売上高1,000万円以下の零細事業者の方々です。

 免税事業者は、インボイス制度が導入されると得意先が仕入税額控除できなくなるため、消費税分の値引き要求や取引解除などのリスクに晒されることになります。

 また、それにともない、資金繰りの悪化が予想できます。さらに売上高1,000万円未達の状況で、“課税業者になってもらう”圧力がかけられるかもしれません。23年10月に向けて、「免税事業者のまま実力を付けていくか」「課税事業者になるか」「値引き要求に応えるか」――などの選択を迫られることになります。

 オンリーワンの強みをもつことで、免税事業者のままでも、得意先からの値引き要求や契約解除は乗り越えられるかもしれませんが、実際には厳しい環境に立たされることでしょう。そこで、個人事業主の財務強化として、養老保険を活用した福利厚生プランがあります。保険料の半分を必要経費に算入でき、税の繰り延べをしながら、保険会社に勇退退職金と死亡退職金を同時に貯めていくことが可能です。

 また、資金繰りの悪いときには保険から資金調達することも可能なので、緊急時の予備資金としても活用が可能です。このプランは一般的に法人契約で知られていますが、個人事業主でも活用できるケースがあります。

 一方で、「インボイス制度を前に法人成りする」ということも、財務体質改善対策の1つとして考えられます。「設立時の登記費用」「赤字でも税金がかかる」などのデメリットもありますが、今まで経費にできなかった生命保険を損金算入することができるメリットもあります。また、金融機関や取引先からの信用度は、一般的に個人事業主よりは高い傾向がありますので、売上を伸ばす要因の1つにもなり得ます。

 役員報酬を最適な金額で設定したり、決算期を戦略的に設定することも可能です。一定の要件がありますが、法人設立後の2期は消費税が免除されますし、法人設立により支払う消費税が増えそうであれば課税事業者となり、消費税の還付を受けることも視野に入れ、消費税分の負担を埋めていけるような戦略を、2023年に向けて早めに検討していくことが重要となってくるでしょう。

 先駆けて21年10月から、インボイス発行事業者の登録申請が始まります。免税事業者のまま強みを打ち出していくのか、値引き要求に応えるか、課税事業者になるのか――。いずれにせよ、税理士などの専門家に各パターンのシミュレーションをしてもらったうえで、売上拡大と財務体質の強化を図る対策を、法人化も視野に入れながら、検討してみる機会にされてはいかがでしょうか。

<プロフィール>
玉井 省吾(たまい・しょうご)

 1965年生まれ。長崎出身。88年、福岡シティ銀行入行。県内外の支店に勤務し、中小企業の法人営業を担当。事業者に対し、事業融資、経営アドバイスを行う。99年、外資系保険会社に入社し、ライフプランナーとして勤務。その後、保険を活用した経営コンサル業を開始。2018年1月より現職/(株)アンツインシュアランス代表取締役社長

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