2024年04月25日( 木 )

小都市なりといえどもやるべきことはやる “チーム多久市”でタックル&トライ(後)

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多久市長 横尾 俊彦 氏

アートの力でまちに賑わいを呼び込む

 ――中心市街地であるJR多久駅近くの京町商店街などでは現在、色鮮やかなウォールアートがまちを彩っています。

街中を彩るウォールアート街中を彩るウォールアート
街中を彩るウォールアート

 横尾市長 本市の定住促進施策のご縁で、現代アート作家の冨永ボンドさんが多久市に来られることになったんです。そうしてボンドさんや知り合いの方々、さらには本市のまちづくり協議会の有志らが、中心市街地の活性化や賑わい創出について議論された際に「ウォールアートをやろう」という意見が出て、「まずはやってみよう」と、15年12月に多久市ウォールアートプロジェクトがスタートしました。

 商店主などのご理解・ご協力をいただきながら最初の作品ができ、少しずつ増えて、今では31カ所のウォールアートがまちを彩っています。おかげでまちが楽しく元気になり、市民や来訪者の反応もいいですね。これだけ集まると、“インスタ映え”するとか、それだけで観光資源にもなりますし、わざわざ市外や遠方から見に来られる方もいらっしゃいます。ギャラリーも生まれました。これに絡めてアート関連のイベントなどを開催すれば、賑わいも生まれますし、良い意味での“民”のプラスの力が効果的に働いていくことは素晴らしいと注目しています。

 行政としては、いわゆる“お役所仕事”的な感度の悪い指示などは出さないほうが良いと思っており、必要な制度をどうするかとか、ルールがあれば緩和するとか、そういう裏方的なサポートが大切とも考えています。「市民が前に」ですね。民も官も、それぞれが得意な分野でお互いに協力しながら、まちの活性化につなげていければいいですね。

JR多久駅
JR多久駅

甚大な豪雨災害からの復旧・復興に向けて

 ――今年8月の豪雨では、多久市も大きな被害を受けました。

 横尾市長 市内104行政区のうち95区長からは、合計1,000カ所を超える被害報告を受けています。人身におよぶ被害は出ませんでしたが、道路や河川などのインフラ、農地などに甚大な被害が出たほか、住戸にも床上床下浸水などが発生しました。現在は復旧・復興へとシフトすべく、「多久市災害対策本部」を「多久市復旧・復興推進本部」に切り替えてやっています。

 ――ちょうど昨年5月に、災害発生時などの状況確認のために消防団内に「ドローン隊」を発足させていたそうですね。

 横尾市長 ドローンを活用すれば、人が立ち入れないような箇所でも、被災現場の状況確認を行えます。団員の安全確保はもちろんのこと、災害時や行方不明者の捜索や避難誘導時、さらにはAEDの輸送など、活用法はさまざまです。今回の豪雨の際にも、国土交通省の防災ヘリ「はるかぜ」からの映像で全容を把握したうえで、ピンポイントな箇所についてはドローンを使用して状況確認を行うなど、その後の対策を練る際に役立ってくれています。

 ――今後の復旧・復興などは。

 横尾市長 復旧・復興に向けては、予算、人材、態勢の確保が不可欠です。ご存知かと思いますが、本市は激甚災害指定を受けましたので、財政面については筋道が見えてきそうですが、査定に必要な仕事を進める人員が必要です。市職員だけではとても間に合わないので、県を通じて九州各県、あるいは私のご縁のある全国青年市長会、嚶鳴フォーラム、改革進化市長の会などの首長にお願いし、約20人を派遣していただいています。これから市民の皆さまのご理解やご支援もいただきながら、“チーム多久市”として復旧・復興を進めていきます。

文教・安心・交流の緑園に輝く文教の里

 ――最後に、多久市を今後どのようなまちにしていきたいか、市長の考えをお聞かせください。

 横尾市長 以前の市の総合計画では、「住みたい、美しいまち多久」というテーマを掲げていました。ここでいう“美しい”とは、街中にゴミが落ちておらず清掃が行き届いているような清潔的な美しさのほか、“身が美しい”と書いて“躾”になりますので、教育や道徳面を含めた人々の心の美しさ。また最近は“インスタ映え”という言葉もありますが、景観などの美しさ―とはいっても、景観の美しさを保つためには常に人の手をかけていく必要があります。そのほかに、美しい言葉や前向きな言葉を使う、立ち居振る舞いを美しくするなど、日頃からできるちょっとした習慣や工夫などを行いながら、市民1人ひとりが“美しい”というキーワードの下、「良いまちになる」ということを意識して、皆で協力してやっていく。それが大事だろうと思っています。

 そして現在は次のステージとして、「みんなで創る 緑園に輝く 文教・安心・交流のまち」を掲げて、さらなる魅力あるまちづくりに取り組んでいます。

 「文教」というのは先ほどもお話しましたが、論語教育やICT教育などに引き続き取り組んでいくこと。「安心」は防災などの市民の安心・安全面の取り組みです。そして「交流」というのは、先ほどのアートも含めた人の交流ですね。人が来るということは、そこには経済活動や賑わいも生まれます。企業誘致も引き続き行いながら、さらなる交流を促進していきます。そして「緑園」というのは、この自然豊かな緑の環境です。現在、世界的にSDGsの取り組みが行われていますが、本市でもエコや世界的な地球環境などにも留意しながら、自然と共生するまちづくりを進めていきます。

 これからもいろいろな取り組みを進めていきますが、一方でそうした取り組みをきちんと発信していくことも大事です。「文教・安心・交流」というキーワードの下、さらに魅力あふれる多久市の実現に向けて、タックル&トライしていきます。

多久市役所
多久市役所

(了)
【坂田 憲治】

<プロフィール>
横尾 俊彦(よこお・としひこ)

 1956年5月、佐賀県多久市出身。80年3月に慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、松下政経塾に1期生として入塾。松下政経塾を卒塾後は、地域活性化などに関わる。97年9月に多久市長に就任し、現在6期目。内閣府の地方分権改革推進委員会委員を始め政府審議会委員など歴任。2016年に全国ICT教育首長協議会を立ち上げ、会長を務める。

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