2024年04月24日( 水 )

ピンチに立たされている韓国の保険業界(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 保険会社が危機に立たされるようになった要因を見てみよう。

 まずは、低金利が要因のひとつである。低金利が続く中で、保険会社は資産運用に困っている。金利が高かった時代には資金の需要も多く、資産運用に困ることはなかったが、最近は顧客に約束した金利より高い収益を、安定的に上げることが厳しくなってきた。国内の保険会社の場合、保険料を国債や会社債に投資して、収益を上げているが、低金利時代が続いたことで、国債の金利もずっと下落しつつあり、保険会社はそもそも収益を上げること自体が難しい。

 保険業界の関係者によると10年物国債の利回りは最低でも2%水準にならないといけないというが、昨今の国債の利回りは1.5%にも満たない状況である。世界的に景気が低迷している現在では、当分金利が上がることは見込めない。低金利が保険会社にとって大きな重荷になるのは、逆ザヤの原因になるからだ。

 過去に販売した貯蓄性保険商品の場合、年5%以上を保証した商品が多い。現在のように金利1%の時代に、そのような顧客に保険金が支払われることになると、保険会社にとっては、損失が累積することになる。生命保険会社の場合、それよりも高い金利の商品を以前販売したことがあるので、大きな損失になりかねない。それに、金利が下がると、積立金の金額も増加することになり、保険会社にとっては収益が減ることに加えて、ダブルパンチになる。さらに、政府は景気を活性化させるために低金利政策をとっているが、低金利政策は逆ザヤの原因になるだけでなく、保険の解約も増加させる。

 国内24社の生命保険会社の解約率は2015年8.7%の水準だったが、16年には8.9%に、17年には9.5%に、18年には10.2%と、上昇の一途をたどっている。損害保険会社もほぼ同じ状況である。このような状況なので、保険会社の収益は悪化し、キャッシュフローは赤字に転落し始めている。

 昨今の韓国の保険会社の状況を日本はすでに経験済みである。景気低迷で資金運用がうまく行かず、逆ザヤとなり、日本の保険会社は、1990年後半から2000年の始めまで、保険会社の破産が相次いだ。同じような状況が韓国の保険業界に訪れているわけだ。保険会社では、昨今の危機を打開するため、飽和状態になった国内市場より、海外進出に解を求めている。しかし、それも簡単な道のりではない。

 金融監督院によると、海外に進出した保険会社は、生命保険会社が3社、損害保険会社が7社で、10社に過ぎない。海外店舗の資産額は5兆ウォンで、全資産777兆ウォンの0.7%に過ぎない。世界的な保険会社の海外の比率は、20%~40%であることと比較すると、かなり見劣りする。現在は海外進出に対する規制があることを考慮しても、海外法人の資産規模は小さすぎる。

 このような状況下、保険業界に大きな変化が訪れようとしている。ネットを活用した無店舗営業やIT技術の活用などである。保険業界は今回の危機を乗り越えてもちこたえるのか、それとも、淘汰されてしまうのか、現在はその瀬戸際となっている。今後、保険の営業スタイルが大きく変わっていくことは間違いない。

(了)

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