2024年04月20日( 土 )

事件記者2019年を振り返る

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 2019年が終わろうとしている。日々の取材活動に追われ、過去を振り返ることをしないのではよろしくない。これは反省点の1つであるが、今年私が取材して、当サイトで掲載された記事を振り返ってみる。直近3カ月以内の取材は覚えているが、それより前は今年だったのか、それとも昨年だったのか、記憶が怪しくなる。

 そういう意味では、改めて1年を振り返る意味はあるのだろう。

 2019年の取材活動を振り返り、まず感じたのは県外での取材が増えたことだ。

 足を運んだ東京、大阪、鹿児島、佐世保と日帰りで慌ただしく過ぎていったことは記憶に残っている。当サイトでは、読者の皆さまもご存知のように、福岡のニュースを扱うことが多いのだが、最近増えているのは県外からの問い合わせである。読者からの情報提供は「掲載されている記事を読んだ。同様のトラブルがほかでも起きている」というものが多い。福岡発の記事を県外の読者が読んで、問い合わせが増えているのだ。

 ネットの世界は、地域を限定しない。福岡のニュースだとしても、全国に読者が存在しているという証明でもある。

 そして、現在取材中のネタもきっかけは過去の記事に由来するものが多い。

 これまで書き続けてきた一本一本の記事がどこかで読まれ、それが反響となり、次の情報収集につながっている。「産廃処分場の乗っ取り記事を読んだ。今、同様の被害を受けている」「鹿児島の金融機関のケース、県外でも同じ事例がある」「過去に、障害福祉事業所の不正を調べていたと思うが、相談したいことがある」。

 今年の取材も、蓋を開けてみるとそのほとんどが過去の取材と関連してくる。よくもまあ、これだけ事件が起きるものだと思いつつ、実際表面化するのはほんの一握りであり、そのほとんどが世に知られないままなのも事実。情報提供者の勇気には、感謝と尊敬に似た感情を抱く。

 今年最も印象に残っている事例は、実は記事にならない取材だった。

 ある夫婦からリフォーム会社が自宅の改修工事を中断し、長期間にわたって放置されているとの相談があった。早速、リフォーム会社に取材の電話を入れ、会社側の言い分を聞いた。そこで、両者間の意思疎通に不具合があったことが判明。絡み合った糸をほどき、ほどなく問題は解決した。

 数日後、夫婦から届いた一通の手紙には「5年間の心の荷物を降ろすことができました」とあった。記者の仕事は、記事を書くことではあるが、書かずとも相談者に寄り添うことができる。そう感じた瞬間だった。これもまた記者ならではの経験であった。

 オリンピックイヤーの2020年。日本中に明るいニュースがあふれることを大いに期待したい。

【東城 洋平】

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