区画整理完了はスタートライン　香椎はにぎわいを取り戻せるか――（2）

駅周辺の区画整理、21年春に完了予定

　そうしたなか福岡市では、89年に香椎副都心整備計画を策定した。これは、千早エリアに「活動核」を、香椎駅周辺エリアに「生活文化核」を形成し、その間を「交流ゾーン」で結ぶというもの。2つの核が相互に活力を高め合う、バランスの取れた“あれい構造”の広域拠点形成を目指している。

　まず先行して、JR千早操車場跡地での再開発となる千早エリアの「香椎副都心土地区画整理事業」（約66.3ha）がスタートした。

　92年12月に香椎副都心土地区画整理事業の都市計画が、94年1月には同事業計画がそれぞれ決定。（独）都市再生機構を施行者として事業に着手し、2000年3月には鉄道高架化工事に着工した。その後、03年7月のJR千早駅の開業や、翌04年8月の西鉄千早駅（名香野駅から改称）の移転開業を経ながら、千早駅周辺の区画整理が進行。都市計画道路も05年8月の「名島千早線（北側）」の開通を皮切りに、05年10月の「名島駅前線」と「名島千早線（南側）」、さらに「松崎千早線」（09年7月）、「千早水谷線」（10年10月）、「名島千早線」（11年2月）などが順次開通した。

　こうした道路インフラの整備進行とともに、新たな街区には次々と建造物が立ち並び、千早に新たなまちが形成されていった。同事業は、清算期間5年を含めて18年3月末までに完了。総事業費は約635億円となった。

　もう一方の香椎駅周辺エリアでは、95年度に「香椎駅周辺土地区画整理事業」および「西鉄宮地岳線香椎駅周辺連続立体交差事業」の調査地区採択を実施。97年度より両事業の事業地区採択が行われ、97年11月に施行区域都市計画道路と鉄道の都市計画が決定し、99年10月に事業計画の決定と事業認可とがなされた。

　この「香椎駅周辺土地区画整理事業」は、西鉄貝塚線（旧・宮地岳線）の鉄道高架化を始め、幹線道路や区画道路、駅前広場や公園などの一体的な整備によって、総合的なまちづくりを図ろうというもの。交通拠点性の強化に加え、既存商業の高度化や居住環境の向上を目指すとともに、前述の千早エリアと機能分担および連携した広域拠点の形成を目指している。

　公共施設計画としては、幹線道路として既存の香椎駅前線（幅15m）に加え、香椎駅西線（幅18m）、香椎駅北線（幅18m）、千早香椎線（幅18m）ならびに香椎駅南線（幅15m）を配置。また、交通結節機能の強化を図るために、JR香椎駅西側に3,400m²の駅前広場を整備するほか、西鉄香椎駅西側に2,500m²の駅前広場と東側に400m²の交通広場を設けて道路網を整備する。

　さらに、これらの道路に連絡する区画道路を適宜配置することで、宅地の利用の増進を図っていく。事業区域は香椎駅前1・2丁目と千早5丁目、香椎駅東1丁目の各一部で、施行面積は約20.7ha。事業施行期間は99年10月28日から2021年3月31日までで、総事業費は約575億円となっている。

　なお、関連事業となる「西鉄宮地岳線香椎駅周辺連続立体交差事業」は、西鉄貝塚線の東区千早4丁目から香椎駅前2丁目までの区間の線路を高架化するもので、施工総延長1,310m、総事業費は約97億円。施行期間は99年度から07年3月末までで、こちらはすでに事業完了となっている。

　香椎駅周辺土地区画整理事業の進行とともに、香椎駅周辺エリアでは新たなまちのコミュニティの核となる公民館や保育所などの公共施設が建てられたほか、マンションなどの住宅の供給も進んでいる。17年8月には西鉄香椎駅前広場（駅西側）および交通広場（駅東側）が供用となり、19年3月には、冒頭で紹介したようにJR香椎駅の駅前広場も全面供用開始。そのほか、各都市計画道路の拡幅や車道部分の整備も順次進行している。

　事業の今後は、電線の地中化や照明灯の設置、植栽工事、カラー舗装などの歩道の最終仕上げを進めていき、19年度中に道路・宅地などの出来形確認測量を実施。20年度から換地計画の作成や換地計画の決定、換地処分を行っていき、21年3月末をメドに事業完了を目指している。

（つづく）
【坂田　憲治】