2024年04月26日( 金 )

劇場街から新聞街、ビジネス街を経て 再開発でさらに変わる(後)

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牽引役が期待されるスマートシティ有楽町

 19年5月、国はスマートシティプロジェクトの先行モデルプロジェクトとして15カ所を選定。そのうちの1つに「大手町・丸の内・有楽町地区スマートシティ推進コンソーシアム」が選ばれた。大丸有地区は、大企業本社や経済団体などが多数立地する日本最大のビジネス街であるが、災害時の帰宅困難者発生といったリスクや、地上・地下にわたる複雑な移動導線への対応により、さらなるポテンシャルの発揮が求められている。

 そこで、帰宅困難者対策・負傷者救助策として、医療・一時滞在施設等のデータを官民連携し、デジタルサイネージなどで発信する「災害ダッシュボード3.0の構築・運用」「都市OSの整備」「パーソナルモビリティの導入」などの取り組みを通じて、エリアのポテンシャルを最大限に生かす考えだ。スマートシティの先行モデル事業は、具体的な新しい取り組みを通じて、それを広く共有することにより、スマートシティ全体を牽引する役割を担う。

 JR東日本は19年9月3日、有楽町駅~新橋駅間の高架下を新たな商業空間「日比谷 OKUROJI(ヒビヤ オクロジ)」として、20年初夏にリニューアルオープンすると発表した。計画は、100年以上の歴史を刻む煉瓦アーチ高架橋と東海道線、東海道新幹線の高架橋が一体となって生まれた高架下空間を生かし、新たな商業施設として再生するプロジェクト。新しいまちづくりが進む日比谷の奥に位置する本高架下は、銀座・有楽町・新橋に回遊を生み、個性豊かな店舗が集積することで、「街と人」「人と人」とをつなぐ賑わい溢れる場所を目指す。

有楽町駅~新橋駅間の高架下に新たな商業空間
有楽町駅~新橋駅間の高架下に新たな商業空間

三菱地所による新しいまちづくりモデル

 さらに三菱地所は、有楽町エリア再構築に向けた先導プロジェクトをスタートさせた。三菱地所は、有楽町エリアにおけるエリア戦略および具体施策の立案・実行を担う組織として、丸の内開発部内に「有楽町まちづくり準備室」を新設。丸の内や大手町とも異なる魅力をもった有楽町エリアのポテンシャルをどう最大化するか、社内的な検討や関係先との協議を進めている。

 同社は、02年の丸ビル建替を端緒とする「丸の内再構築」にも取り組み、丸の内エリアや大手町エリアを中心に先進的なまちづくりを推進してきた。三菱地所グループでは、大丸有エリア全体を「OPEN INNOVATION FIELD」(人・企業が可能性を感じ、進化できる街)と位置づけ、“クリエイティブな人材・企業が目指す、Wisdom(知恵)の拠点をつくる”取り組みを続けてきた。

有楽町『micro-FOOD-&-IDEA-MARKET』
有楽町『micro FOOD & IDEA MARKET』
三菱地所 丸の内開発部長 吉田 誉 氏
三菱地所 丸の内開発部長
吉田 誉 氏

 12月2日には、有楽町「Micro STARs Dev.(マイクロ スターズ ディベロップメント)」を始動。活動の中心拠点として、さまざまな人・アイデア・文化・食に出逢える多機能型市場「有楽町『micro FOOD&IDEA MARKET』」を開業し、個人単位のアイデアをかたちにするワーキングコミュニティ「有楽町『SAAI』」の会員募集も開始した。「SAAI」は20年2月中旬に開業予定だ。

 「有楽町の再構築を進めていきたい。大手町や丸の内と比較して、良い意味で有楽町は敷居が低く、いろいろな方が行き交う。“大丸有”という言葉に代表されるようにビジネスゾーンの一角を占める。大きく変わるポテンシャルがあり、大手町や丸の内に波及させたい」(三菱地所・丸の内開発部長・吉田誉氏)。

 

三菱地所 丸の内開発部担当部長 井上 成 氏
三菱地所-丸の内開発部担当部長
井上 成 氏

 これからの有楽町を、人やアイデアがさらに磨かれる街へと進化させるべく、人の活動をまちづくりの中心に据え、次の時代を担うスターが生まれる“仕組み”を有楽町でつくり上げ、エリア内の既存の取り組みと掛け合わせることによる相乗効果を目指す。三菱地所は、このプロジェクトから生まれた新しい仕組みやソフト的な取り組みなどを、2020年代以降の有楽町エリア再構築のハード・ソフト両面につなげる「新しいまちづくりモデル」にチャレンジする。

 「有楽町は、劇場もあり、多彩な人が集まる場所であり、個にフォーカスしていくにはふさわしい場所です。アイデアを思いつきカタチに、試され、磨かれ、実装され、日本や世界に羽ばたく場にしたい」(三菱地所・丸の内開発部担当部長・井上成氏)。

三菱地所 xTECH営業部兼丸の内開発部-兼-新事業創造部主事 米田 大典 氏
三菱地所 xTECH営業部兼丸の内開発部 兼 新事業創造部主事
米田 大典 氏

 また、有楽町からのスター誕生について、米田大典氏(三菱地所xTECH営業部兼丸の内開発部兼新事業創造部主事)はこう語る。

 「渋谷系、下北系など、音楽が誕生する街がありますが、“有楽町系音楽”が誕生したら面白い。有楽町生まれ、有楽町育ちのミュージシャンが育っていければいいです。音楽業界の若い人材と一緒になって育てていけば、有楽町系が誕生するかもしれません。有楽町といえば、世代の差はあれど『有楽町で逢いましょう』が有名ですが、次の有楽町で愛される歌をつくっていきたい。しかし、それは私たちが押し付けるのではなく、有楽町に関わっている皆から愛されるものが、次世代に残っていくのでしょう」。

 一見すると、ビジネスの街のイメージが強かった有楽町。しかし、さまざまな人々による今後のブランディングにより、思いもよらぬ“スター”が誕生するかもしれない。

(了)
【長井 雄一朗】

(前)

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