2024年04月24日( 水 )

受講者を年々増やす 健康経営アドバイザー制度(前)

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東京商工会議所

 東京商工会議所(以下、東商)は、中小企業の健康経営の普及・啓発と人材育成を支援する。2016年に健康経営アドバイザー認定をスタートし、2018年には健康経営エキスパートアドバイザー認定もスタートさせた。健康経営への関心の高まりもあって受講者を年々増やしている。東商が中小企業の健康経営を支援する事業を手がける狙いは何か。

従業員の健康づくり、2004年から企業を後押し

 東商が、企業による従業員の健康増進を後押しする取り組みを始めたのは15年前にさかのぼる。2004年、企業の立場から従業員の健康づくりを促進するために、「国民健康づくり委員会」(後に「健康づくり・スポーツ振興委員会」に名称変更)を設置。委員長にセントラルスポーツ(株)会長・後藤忠治氏が就き、職場での健康づくり促進について啓発・普及に取り組み始めた。経済産業省の健康優良法人制度が開始されたのが2017年だから、かなり早い時期からの取り組みだ。

 東商は、東京23区内の会員(商工業者)で構成される民間の総合経済団体。1878(明治11)年に、2021年の大河ドラマの主人公に決まった渋沢栄一らによって設立された。商工業の発達と社会福祉の増進を目的に経営支援、政策提言、地域振興の3つを柱として活動しており、会員数は8万社を超える。

 東商によると、健康経営は従業員の健康を重要な経営資源と捉え、従業員の健康の維持・増進と企業の生産性向上を目指す経営手法のことだ。

 従来、健康管理については、個人が自分自身で気を配るべきものと考えられてきた。しかし、生産年齢人口の減少による深刻な人手不足を背景に、従業員の生産性向上や企業イメージ向上による人材の確保・定着の必要性が出てきたことから、健康管理を個人任せにするのではなく、企業として取り組む機運が高まっていったのである。

 ちなみに、健康経営の始まりは、経営学と心理学の専門家であるロバート・H・ローゼン氏が著した『ザ・ヘルシー・カンパニー』(米/1992年)で提唱したことによる。

国家戦略で健康経営、経産省から事業を受託

東京商工会議所サービス・交流部会員交流センター所長・中村友樹氏
東京商工会議所サービス・交流部会員交流センター所長
中村友樹氏

 「2011年ごろに出会った健康経営という言葉は、職場での健康づくりを推進するうえで非常に良いキーワードだった。それ以降は健康経営の推進に取り組み始めた」。こう話すのはサービス・交流部会員交流センター所長・中村友樹氏である。

 東商の健康経営の取り組みにおいて、大きな転換点となったのは国としての成長戦略である。

 「日本再興戦略改訂2014」のなかに、健康経営を普及させるため、健康増進にかかわる取り組みが企業間で比較できるよう評価指標を構築することが盛り込まれた。さらに、翌年の改訂2015においては、商工会議所などと連携して健康経営の優良事例を収集・公表するとともに、「健康経営アドバイザー制度」の創設を通じて健康経営人材の育成・活用を促進すると明記されたのである。

 この健康経営アドバイザー制度の運営について、経済産業省から委託を受けたのが東商である。2017年にはEラーニングに切り替え、いつでも、どこでもパソコンやスマホさえあれば受講できる仕組みを整えた。

 Eラーニングで受講者は90分の動画を見た後に10問ほどのテストに答える。正答が7割以上の場合に、健康経営アドバイザーとして認定される。テストは、正答が7割に達するまで何回でも受けることができる。

 日本で、中小企業が健康経営に取り組む目的やポイントなどを体系的に学ぶことができるプログラムは、今のところ東商のこの制度くらいだ。受講者数は2016年度が7,335人、Eラーニングを導入した2017年度が8,907人、2018年度が1万2,512人と年々増加してきている。2019年度もすでに7,000人以上の応募があり、前年度実績を上回る見込みだ。

(つづく)
【本城 優作】

(後)

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