2024年04月20日( 土 )

中小企業が“主役”になれる時代がやってきた!(後)

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シンクタンク・ソフィアバンク 代表 藤沢 久美 氏

大企業と互角に戦う「ヒト・モノ・カネ」環境が改善

 藤沢 また、クラウドソーシング(不特定多数の人の寄与を募り、必要とするサービス、アイデア、またはコンテンツを取得するプロセス)の発達で、人事も経理も営業でさえ、必ずしも社内の人間でなければならないという従来の認識は旧いものになりました。

 RPAなどの最先端技術の導入は、人員削減などを絡む大企業の方がむしろ遅々として進まず、中小企業の方がよりスリム化したスピード経営ができるようになっています。中小企業が“主役”になれる時代がやってきたのです。

 また、従来中小企業は金融機関からの資金調達が難しいと言われていました。今はそんなことはなく、10年前と比べても、融資環境ははるかに良好になっています。また、ベンチャーキャピタル(中小企業を中心に扱うベンチャーキャピタルも出現)など金融機関以外からの融資も増えています。さらに、志が高ければクラウドファンディング(インターネットを通して自分の活動や夢を発信することで、想いに共感した人や活動を応援したいと思ってくれる人から資金を募るしくみ)でお金を集めることも可能です。すなわち、大企業と互角に戦える「ヒト・モノ・カネ」の環境がここ数年で大きく整ってきました。

 私が登壇する講演会の懇親会では、経営者の皆さまは、チャンス到来とばかりにワクワクしています。このように、社会に貢献しようと頑張っている中小企業には、世の中も、金融機関も、マスコミも、どんどん応援してほしいと思っています。

「人生100年時代」を迎えて若者の企業選択に変化

 ――続いて、人材の採用・育成についてのお考えをお聞かせいただけますか。

 藤沢 数多くの中小企業を見ていますと、1つだけはっきりいえることがあります。すばらしい「ビジョン」を発信している企業には、すばらしい人材が来るということです。今の若者はネットを駆使しますので、それを決して見逃しません。

 もちろん、現在、「年収が高い」とか「休みが多い」会社に興味を持つ学生が多いのも事実です。しかし「ビジョン」に魅力を感じる学生や社会人は、あくまでも肌感覚ですが、想像以上のスピードで増えつつあります。そのキーワードに「自分の成長という報酬」があります。

 政府(厚生労働省)は「人生100年時代」構想を掲げました。この構想に敏感に反応、また動揺したのは20歳前後の学生であると言われています。つまり、会社人生が終わった後の30年、40年を考えたうえで、会社選び、仕事選びをするようになっています。将来的には「年収が高い」(地位的報酬や経済的報酬)とか「休みが多い」(福利厚生)より、自分が成長できる会社を選ぶ若者が増えて来るのではないかと考えています。

中小企業だからできないということはなくなりつつある

 ――最後に、中小企業経営者、一般読者の皆さまにエールをいただけますか。

 藤沢 中小企業経営者の皆さまに申し上げます。今まさにチャンスが到来しております。

 「中小企業だからできない」ということはなくなりつつあります。AIやIoTの知識が足りないのであれば別の幹部に補ってもらえばいいだけのことです。これから人を動かすのは「誰でも読めるマニュアル」ではなく、個々のメンバーの納得感・共感を生み出すリーダーの言葉です。

 世代的にいえば、とくにバブル期入社の人たちは、会社の人たちとオフサイトで関わることを好まない傾向にありました。しかし、今新しい世代の企業家たちは、再びこうした取り組みを積極的に推進し大きな成果を上げています。これは60代、70代、80代の経営者の方には朗報です。皆さまが経験したオフサイトミーティング(「合宿で寝食をともにして同じ釜の飯を食う」「運動会」「社内旅行」など)で信頼を深め合う流れがまた起こってきています。ただし、今はダイバーシティの時代です。昔と違い社員の価値観は共通ではありません。そこで、コミュニケーションをとる場合は、「リーダーの言葉の持つ力」を十分に意識し、その使い方、選び方に十分気をつけていただければと思います。

 次に、一般読者の皆さまに申し上げます。ひとりよがりになったり、人を傷つけたりすることいけませんが、それ以外では、あまり世の中の風潮に左右されることなく、自分の思考、魂に忠実に企業選びや仕事選びをしてほしいと思います。それができる時代が到来しています。

(了)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
藤沢 久美(ふじさわ・くみ)

 大阪市立大学卒業後、国内外の投資運用会社勤務を経て、1996年に日本初の投資信託評価会社を起業。99年、同社を世界的格付け会社スタンダード&プアーズに売却後、2000年にシンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。現在、代表。07年には、ダボス会議を主宰する世界経済フォーラムより「ヤング・グローバル・リーダー」に選出され、07年には、世界の課題を議論する「グローバルアジェンダカウンシル」のメンバーにも選出され世界40カ国以上を訪問。政府各省の審議委員、日本証券業協会やJリーグ等の公益理事といった公職に加え、静岡銀行や豊田通商など上場企業の社外取締役なども兼務。自身の起業経験を基に、NHK教育テレビ「21世紀ビジネス塾」のキャスターとして、全国の中小企業の取材を経験後、国内外の多くのリーダーとの交流や対談の機会に積極的に参画し、取材した企業は1000社を超える。現在、政官財の幅広いネットワークを生かし、官民連携のコーディネータとして活躍するほか、ネットラジオ「藤沢久美の社長Talk」のほか、書籍、雑誌、テレビ、各地での講演などを通して、リーダーのあり方や社会の課題を考えるヒントを発信している。

(中)

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