2024年04月24日( 水 )

日刊工業新聞社「十大新製品賞」に選ばれた花王の衣料用洗剤「アタック ZERO」のスゴイところ!

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 日刊工業新聞社は62回目となる2019年「十大新製品賞」の受賞17製品を発表した。

 「十大新製品賞本賞」には、日立製作所の「EV向け高電圧高出力インバーター」、安川電機の「食品仕様人協働ロボット」など11社による10製品が選ばれた。

 十大新製品賞は、応募企業がその年に開発あるいは実用化した新製品のなかから、モノづくりの発展や日本の国際競争力の強化に役立つ製品を日刊工業新聞社が選定し、表彰する制度。

 電気自動車(EV)の充電時間を短縮できるインバーターや、小型ロボット、生産効率の向上に資する産業機器や第5世代通信(5G)の進展を支える製品など、工業製品が多く選ばれるなか、サスティナビリティー(持続可能性)に配慮した洗剤、花王の「アタック ZERO」が入賞した。

 「アタック ZERO」は、花王が10年以上かけて分子構造から基剤の革新をはかり、世界初の技術により開発した「花王史上最高」の洗浄基剤「バイオIOS」の実用化第1号の製品。

界面活性剤の分子構造モデル。
界面活性剤の分子構造モデル。

 基剤とは洗剤の主成分の界面活性剤のことで、バイオIOSは油汚れによくなじみ水にもよく溶けるため、洗浄力が高く、洗剤残りも少ない。従来の洗剤では落ちにくかった化学繊維の皮脂や油汚れもよく落ちる「落ちにくい汚れゼロ」「生乾き臭ゼロ」「洗剤残りゼロ」をアピールしている。

 「アタック ZERO」の裏面説明欄には、従来品の裏面に掲載されていた「ニオイ菌に対して すべてのニオイ菌に対応しているわけではありません」という弱気な文字もなくなっている。

従来の界面活性剤(左)に対して、バイオIOS(右)は油汚れになじみ水によく溶ける分子構造を開発。
従来の界面活性剤(左)に対して、バイオIOS(右)は油汚れになじみ水によく溶ける分子構造を開発。

 さらに、バイオIOSは、炭素量が多く、これまで界面活性剤に不向きとされてきたアブラヤシの実から食用のパーム油を採取する際のしぼりカスを原料とすることに成功した。

 国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は日本でも注目されているが、世界の人口は2050年には現在の1.3倍になると予測されており、世界的に生活水準が向上すると洗剤の需要は激増、森林伐採が問題視され、これまでの界面活性剤の原料に適したヤシの栽培面積の拡大には限界があると懸念されていた。

 分子構造レベルの技術革新により、パーム油を採取する際の搾りカスを原料とした、これまでにないサステナブル(持続可能)な界面活性剤として注目されている。

 バイオIOSは硬度の高い水や低温の水でも使えるため、硬水の地域が大半を占めるヨーロッパや寒冷地にも適しているため、花王ではバイオIOSで世界の洗剤メーカーと連携するグローバル展開も進めているという。

関連記事