2024年04月16日( 火 )

2020年、日韓両国の交流は再活性化するか 今こそ九州-韓国の民間、地域間の交流を(中)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

駐福岡大韓民國総領事 孫 鍾植 氏

南北関係

 ――南北関係についてどうご覧になりますか。

 孫 19年6月にトランプ大統領が板門店を訪問し、金正恩委員長と一緒に軍事境界線を行き来するシーンは世界中から注目され、2月にベトナム・ハノイで開催された米朝会談の決裂以降、悪化していた半島情勢を覆すシーンでした。ただ、米朝の3回目の首脳会談はできておりません。なるべく早く実現できたらと思っています。

 米朝間には見解の違いがありますが、これは非核化を履行するための方法上の問題です。米国が先に北の非核化を求め、その後の補償を主張しているのに対し、北は段階的な非核化とそのなかでの補償を求めています。進展が遅いのは、両者間の信頼関係が十分に形成されていないからです。約70年の間に米朝間で不信感が醸成されており、容易に消すことはできないでしょう。ただ、重要なことは、両者がお互いに非難するよりも、実務者レベルであっても頻繁に会話を重ねることを継続することです。

 半島の非核化の問題は米朝間のみならず、韓国、日本にも関わる重要な問題です。この問題について、韓国、米国、日本が胸襟を開いて、緊密に話し合い、協力するかたちをとれればと思っています。

総領事館の活動

 ――昨年、総領事と総領事館はどのような活動に取り組まれましたか。

 孫 韓日関係が難しかったぶん、総領事館としても相当に難しい1年でした。総領事館としては民間同士、一般市民の方々との話し合いを重視しています。困難な状況を打開するために、民間レベルの友好関係を促進することができる活動を増やしました。韓日親善協会、ナドリ会、韓友会など友好団体の努力が失われないように、また韓国を好きな日本の方々が力を落とさないよう、サポートに力を入れております。

 オルレ(トレッキングコースの総称)という済州島から始まったものが九州でも行われており、21のコースがあり、20年から宮崎・小丸川、島原の2つが加わり23コースになります。総領事館として、時間をつくり市民の方々と一緒に歩くようにしています。総領事館はこの九州オルレや「九州のなかの韓国探し」などの活動を通して、両国の共通の文化を探すよう努めています。

 19年で最も強く記憶に残ったことは、「韓国のキムチ、九州の衣を着る」というイベントを開催したことです。キムチをすべて九州産の材料を使用してつくろうというもので、公邸に県知事夫人、女性の副知事、福岡市の女性副市長、各国領事館の総領事夫人、九州大学総長夫人、マスコミ関係者など九州各界の女性リーダー50名を招きました。

 材料は、19年の豪雨被害地の佐賀県産の白菜、震災地の熊本県産のニンニクと唐辛子、糸島産の牡蠣、鹿児島県産の黒豚を使いました。その際にちょうど適当なものが見つからず困ったのが唐辛子の粉であり、熊本の食品工場に製粉の仕方を教えてつくってもらいましたが、韓国で購入する場合の6倍のコストがかかってしまいました。テレビ西日本、福岡放送などにも取り上げていただき、災害復興に少しでも貢献したいという私たちの思いを日本の人々に伝えることができたと思います。

 ――日韓関係が微妙になってから、仕事においてやりにくさなどは感じますでしょうか。

 孫 総領事館としてイベントや活動の開催に支障を来したことはありません。日本の団体からは「このような時期こそ、交流を頻繁に、活発に行いましょう」とむしろ私たちが励ましの言葉を頂戴しています。

 ――管轄地域内での友好都市間の交流は例年通り行うことができましたか。

 孫 姉妹・友好都市間の交流には若干の支障がありました。とくに、韓国から日本に来ることに若干の困難さが生じました。というのは、韓国では経済制裁が行われている時期に、交流するのは難しいという感覚があったようです。ただ、首脳会談によって対話のきっかけが生まれましたので、総領事館としてもこれを契機に交流の活性化を増進していきたいと思います。

 ――20年、とくに取り組みを強めたい分野などはございますか。

 孫 民間の交流、たとえば青少年、学生、文化、スポーツ面などでの交流を元通りの状態に戻したいと思います。今後も「韓国のキムチ、九州の衣を着る」イベントのようなかたちで、文化を通じて市民の方々との交流を続けていきたいと思います。日韓関係が改善されれば、民間の交流も活発になります。また総領事館としても親善交流の発展のため積極的に注力していく所存です。

(つづく)
【聞き手・文:茅野 雅弘】

<プロフィール>
孫 鍾植(ソン・ジョンシク)

 1951年生まれ。75年慶熙大学校卒業(86年同大学にて修士号取得)。駐大阪大韓民國総領事館領事、駐日大使館参事官公使、東亜大学教授などを歴任し、2017年12月駐福岡総領事に着任した。大統領表彰を三度受賞。

(前)
(後)

関連記事