2024年03月29日( 金 )

MCTやオメガ3を適量摂取 健康素材として急浮上!(後)

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良質なオメガ3系脂肪酸、サバ缶人気は恒久化するか

人気が続くサバ缶

 身体は、60%を占める水分を除くと、残りのほとんどは脂肪とたんぱく質で構成される。とくに脂肪は細胞膜や脳、神経の一部を構成し、ビタミンの運搬や正常なホルモンの働きを助けるといったさまざまな生理作用がある。

 脂肪は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類できる。飽和脂肪酸はラードに代表されるように常温で固体の脂肪。過剰に摂取すると心血管疾患のリスクが高まるとされ、長い間、脂肪が健康の敵とされた原因だ。しかし、適量の飽和脂肪酸が身体に必須であることはいうまでもない。

 もう1つが常温では液体である不飽和脂肪酸。オレイン酸を含む一価不飽和脂肪酸と、多価不飽和脂肪酸に分けられる。オレイン酸はオメガ9系脂肪酸ともいわれ、オリーブオイルがその代表。「オリーブの原産地である地中海沿岸に住む人に心筋梗塞の発症率が極めて低い」という調査結果で健康的な油として有名になった。

 そして、多価不飽和脂肪酸はさらにオメガ6系脂肪酸とオメガ3系脂肪酸に分けられる。このうちのオメガ3系脂肪酸の1種であるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)がとくに青魚に多く含まれていることが知られており、動脈硬化や血栓を防ぎ、中性脂肪を減らす等のさまざまな健康機能をもつ。

 このEPAやDHAが豊富に含まれ、さらに骨や血合も丸ごと食べられることでカルシウムやビタミンDも同時に摂取でき、そのままでも食べられ、さまざまな料理の具材としても便利だということで、2017年にテレビの人気情報番組で取り上げられたのが「サバ缶」だ。その直後から、店頭では品切れが続出するほどの人気となり、2018年のサバ缶の市場規模は前年比153%の263億円、ツナ缶を抜いて魚介缶詰のなかで最大となった。

 値段も1缶200円前後からとお手頃で、長期保存もできるため人気はその後も衰えを知らない。その派生効果で、魚肉ソーセージや冷凍食品等の魚介類の加工品も売上を大きく伸ばしている。日本人の魚離れが叫ばれるなか、「魚油」がトレンドとなるのは何とも皮肉な話である。

 近年の食材に求められる「利便性」と「健康志向」を併せもつ「サバ缶」を始めとした魚介類加工食品は、その保存性も相まって今後もしばらくトレンドが継続していくものと思われる。

(了)
【継田 治生】

(前)

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