2024年04月19日( 金 )

健食通販市場は5,000億円超 伸長の陰に競争激化による明暗

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 TPCマーケティングリサーチ(株)(本社:大阪市西区、川原喜治代表)はこのほど、国内の健康食品通販市場について調査を実施した。それによると、市場はここ10年でほぼ毎年伸長を遂げており、5,000億円を超える規模に達している。

市場は10年で1.3倍に、生活習慣病関連が伸びる

 調査は健康食品通販有力企業を対象に2019年5月~9月に行った、2018年度の通販健康食品市場は、前年度比1.7%増の5,134億円。昨年の同社の予想(同3.2%増の5,202億円)からは下回ったものの、消費増税前の駆け込み需要による反動でマイナスとなった2014年度を除き、毎年過去最高の売上を更新。ここ10年間で約1.3倍に拡大している。

 同市場では各企業が主力商品につぐアイテムの育成・拡充に注力しており、市場拡大に寄与しているという。「昨今の健康志向の高まりや少子高齢化が進み、血圧調節や尿酸サポートを訴求する生活習慣病関連商品のほか、インナービューティー商品が売上を伸ばしている」と分析している。

 そのなかで、有力通販企業の味の素やファンケル、世田谷自然食品などの企業は新聞広告や折り込みチラシ、テレビCMといった幅広い広告媒体を活用することで商品のアピールを強化。味の素は主力商品「グリナ」を始め、機能性表示食品である「カプシEX」の販売にも注力することで、前期比10.7%増で推移。ファンケルは「カロリミット」「えんきん」に続く育成商品として「内脂サポート」をテレビCMで大々的にアピールしたことで、前年度比7.4%増となった。

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 発表による有力通販各社の売上高上位の構成比をみると、18年度はサントリーウエルネスが構成比16.7%の855億円でトップ。次いでディーエイチシー(DHC)が同7.5%の383億円、やずやが同3.5%の179億円、山田養蜂場が同3.3%の169億円、えがおが同3.1%の161億円の順。

 売上高トップのサントリーウエルネスは、前年度比4.4%増。主力のゴマ由来健康食品「セサミンEX」を始め、機能性表示食品の「グルコサミンアクティブ」や「オメガエイド」をテレビCM、新聞広告で積極的にアピールすることで売上を伸ばしている。

 DHCは、前年度比3.0%増で、18年4月にダイエット関連商品で最大50%オフになるキャンペーンを実施。商品の拡販を行っている。

 やずやは、前年度から横ばいで推移しているが、かつては香酢サプリメント「熟成やずやの香酢」で売上高400億円を超えたが、近年は厳しい業況にある。18年は新たな柱となる商品を確立すべく、「もっちり甘酒コラーゲン」と「にんにく卵黄WILD」について、初回限定半額キャンぺーンなどを実施し、新規顧客の獲得に注力している。

 山田養蜂場は前年度比1.8%増となったが、かつてはローヤルゼリーの健康食品をリードする通販企業として、売上高360億円まで上りつめた企業。主力商品の「酵素分解ローヤルゼリー」シリーズが競合の激化により新規顧客の獲得に苦しんでいるなか、「プロポリス」シリーズといったその他商品の新聞広告の出稿に注力することで商品のアピールを図っている。

 えがおは前年度比4.2%減。こちらも4年前は黒酢含有サプリメント「えがおの黒酢」や北欧産ビルベリー配合の「えがおのブルーベリー」で売上高260億円まで成長していたが、後発企業の増加により減収傾向で推移している。一方でビーボでは、前期比16.3%と売上を大きく伸ばしている。妊活サプリの「ベルタ葉酸サプリ」や食事代替ダイエットの「ベルタ酵素ドリンク」を、テレビCMや女性雑誌などで商品認知度の向上が販売に寄与している。

機能性表示食品の伸長、サプリメント形状増加

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 健康食品の分野別での構成比をみると、18年度は錠剤・カプセルなどのサプリメント形状が76.5%の3,925億円で最も多い。それについで青汁が同10.0%の514.5億円、飲料が同8.9%の458.5億円、食品が同4.6%の236億円で続いている。

 サプリメント形状については、前年度比1.4%増で推移。味の素、ファンケル、エポラ、ニッピコラーゲンといった企業が機能性表示食品制度に対応した商品で差別化を行っており、前年同様に売上を伸ばしている。

 目立った訴求では、尿酸値改善や血圧調節などを謳った生活習慣病訴求商品を積極的に展開している模様。機能性表示食品については同社の調査で2017年度の市場規模は前年度比89.0%増の1,855億円で、ヘルスクレームでは「体脂肪の低減」(378億円)、「脂肪・糖の吸収抑制」(322億円)、「歩行機能の改善」(319億円)、「整腸作用」(291億円)、「目の健康維持」(125.5億円)の順で年々拡大。18年度は前年比26.0%増の2,338億円の見込みとしている。

 青汁は、前期比3.9%増となり、エバーライフ、野草酵素、山田養蜂場、健康の杜といった企業が好調に推移している。同分野ではアサヒ緑健の「緑効青汁」や世田谷自然食品の「乳酸菌が入った青汁」、ユーグレナの「ユーグレナの緑汁」などのアイテムが売上を伸ばしている。各企業は主にテレビCMを中心とした拡販に注力することで、幅広い年齢層の顧客に努めている。

 飲料は、前年度比3.4%増で推移。同分野ではビーボ、カゴメ、世田谷自然食品などの企業が増収となっている。中高年男性をターゲットに設定した生活習慣病対策商品や女性向けの美容飲料といった商品が需要を獲得している。

 食品は、前年度比0.2%減となった。同分野では愛しとーとの「うるおい宣言」シリーズやDHCの「サプリde グミ」などを手軽に安心して摂取できる商品が消費者から支持を受けている。しかし売上を伸ばすことに苦戦している企業もみられ、終売するアイテムも増えている現状もある。

 伸長する健康食品通販市場であるが、その一方で参入企業の増加による競争激化や、移り変わりが目まぐるしい業界であることから、健食通販各社は今後さらに時流に合わせた商品開発・販売の展開が求められていくものとみられる。

【小山 仁】

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