2024年04月24日( 水 )

豊洲市場における設計偽装 政商・日建設計(3)

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豊洲市場の設計における偽装

 今回、杭に関する疑惑が生じた水産卸売場棟(7街区)、仲卸業者が訴訟の対象としている水産仲卸売場棟(6街区)の設計を行ったのは日建設計である。日建設計は、1900年(明治33年)創立、従業員数1,927名(2019年4月現在。グループ全体では2,764名)という日本で最大手の設計事務所である。事業所は国内だけにとどまらず、中国・韓国・タイ・ベトナム・シンガポール・ドバイ・サウジアラビア・ロシア・スペインにまでおよび、国内外の巨大プロジェクトの多くに関わっている設計業界におけるガリバーともいえる大企業である。

 日本最大手の設計事務所である日建設計が行った設計にミスや偽装があるとは、誰も想像できないだろう。しかし、豊洲市場水産仲卸売場棟においては、明確な設計偽装が存在したのである。以下は、最初に豊洲市場水産仲卸売場棟の設計偽装・建築基準法違反を指摘した構造設計一級建築士・仲盛昭二氏にうかがった話を基にまとめたものである。

 日刊ゲンダイが報じる数日前に、仲盛氏は市場関係者から豊洲市場水産卸売場棟の沈下の件を聞いていたが、現地の状況を自分の目で見ていないので具体的なコメントは控えていたという。

 仲盛氏はいう。「杭が支持地盤に届いていないという施工ミスは大問題であることは間違いない。しかし、日建設計による設計の偽装は根が深いものであり、全国に波及するという点において杭の施工ミスをはるかにしのぐ大きな問題といえる」

 これまで仲盛氏が何度も指摘し、NetIBNewsでも報じてきたように、豊洲市場水産仲卸売場棟の設計においては、建築基準法施行令に定められた層間変形角の偽装、同施行令に定められた保有水平耐力計算における係数の偽装などが発覚している。

 NetIBNews編集部は、2019年5月、豊洲市場の設計を担当した(株)日建設計の亀井忠夫社長および構造設計の業界団体の会長で豊洲市場問題プロジェクトチーム(以下「PT」)の委員を務めた(一社)日本建築構造技術者協会(略称:JSCA)の森高英夫会長に対し、市場の構造上の問題点に関する質問状を送付した。(質問は基本的に「はい」「いいえ」の二択で容易に回答可能な内容)

2019年6月10日付けで日建設計からFAXにて送付されてきた回答は以下の通りであった。

 豊洲市場の設計者として、はなはだ無責任かつ不誠実な回答である。客観的に建築構造技術の観点から「設計が不適切」と指摘したのである。

 身内同士のかばい合いの市場問題PTは、構造設計の核心部分に踏み込むことを避けており、「安全」という結論ありきの形式だけの会議に過ぎなかった。PT自体が、豊洲市場を正当化するために東京都に忖度する者を委員とした 結論ありきの会議に過ぎないにもかかわらず、その会議で確認済みという回答には誠意の欠片も感じられなかった。

 なお、PTにおいて日建設計を擁護する発言をした業界団体(JSCA)の森高会長からは 期限までに回答がなかった。JSCA会長から回答がなかった理由は、PTにおいて設計者側の代表として説明を行った常木康弘氏がJSCAの副会長(当時)であり、次期JSCA会長に内定している(現在はすでに会長に就任)という背景と関係がありそうである。

(つづく)
【桑野 健介】

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