【BIS論壇No.310】「橋田久仁雄・BIS名誉顧問を偲ぶ」

　2000年来20年近くにわたりBISを御指導いただいてきた橋田久仁雄BIS名誉顧問が去る1月7日にご逝去された旨、遺族より連絡があった。BISを代表し、心よりお悔やみを申し述べたい。橋田名誉顧問との御縁はフランス・ビジネスインテリジェンス協会初代会長のロバート・ギルモー氏がフランス情報産業サービス協会の会長も兼務。2000年に東京で情報産業サービス協会の世界大会を開催した際、同サービス協会国際委員長をしておられた橋田氏を紹介され、御縁ができた。

　筆者は1990年9月、ダイヤモンド社から情報の処女作ともいえる『CIA流戦略情報読本』を米田健二氏と共訳で出版した。その著者のH.E.マイヤー氏は米国国家情報副議長としてウイリアム・ケーシーCIA長官直属で活躍していた。そのマイヤー氏がビジネスインテリジェンス研究で有名なフランス・パリでの国際情報会議に日本からの講演者として筆者を招待してくれた。この会議でフランスを代表してロバート・ギルモー氏が講演。そのご縁でギルモー氏とはご縁ができた。またスウェーデンからは代表として、世界のビジネスインテリジェンスのグル、創始者として有名なルンド大学ステバン・デジエル博士が参加。

　その後、長年にわたり、情報について御指導をいただくことになる。このご縁でデジエル博士傘寿の祝いの記念誌”The Intelligent Corporation” London　Taylor Graham刊への共著執筆を依頼され、"Intelligence, Trade and Industry"を寄稿。さらにルンド大学への情報論講義に招聘されることになった。デジエル博士は1992年2月設立の日本ビジネスインテリジェンス協会（BIS）創設国際大会に遠路スウェーデンから参加。ドクター中松（現・BIS名誉顧問）、故小野田寛郎・元陸軍情報将校ともども開会のあいさつをいただいた。

　一方、ギルモー氏はスイスのジュネーブに「グローバルビジネス開発同盟」”Global Business Development Alliance"を設立。自分は財務担当理事に就任。会長には米国競争情報協会のボブ・マググリエス元会長、副会長に筆者が任命された。創設理事は豪州、香港、中国、日本、ヨロッパからはスウェーデン、フランス、英国、ベネルックス、中東からはイスラエル、米州からは米国、メキシコが参加。

　このご縁で、ギルモー氏に橋田久仁雄氏を紹介された。橋田氏は暁星でフランス語を学び、慶応大学でも経済学とフランス語を専攻。日本郵船勤務後も米国、ベルギー、ドイツ、フランスに勤務。フランス語の力は日本人離れしていた。趣味は絵画でフランス絵画協会会員として作品をたびたび出品。クリスマスカードには自分の描いた絵を活用されていた。

　拙宅の応接間には橋田氏のセーヌ河にかかる橋の傑作がかかっている。フランスでの活動が評価されフランス大統領から勲章を授与されるほどの活躍をされた。BIS創設20周年記念の『知識情報戦略』税務経理協会刊にはフランスのビジネスインテリジェンスについてすばらしい論文を執筆いただいた。

　暮れのBIS忘年会には毎年寄付をいただきBIS会員一同感謝していた。人格も温厚で、フランスおよび情報研究を継続されていた。ここに会員一同を代表し心からの哀悼の誠を捧げ、生前の御指導に対し深甚なる感謝を申し上げる次第である。