2024年03月29日( 金 )

復興のシンボルとなる賑わい拠点「SAKURA MACHI Kumamoto」(前)

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開業日には多くの人々が詰めかけた
開業日には多くの人々が詰めかけた

10日間で100万人来場、中心市街地の活性化に寄与

 2019年9月14日、熊本地震からの復興のシンボルとして、熊本市中央区の熊本交通センター跡地で開発が進められていた大規模複合施設「SAKURA MACHI Kumamoto」(以下、サクラマチ クマモト)が開業を迎えた。

 開業当日には、公共交通利用促進や周辺道路の交雑緩和などのために、熊本県内の路線バスや電車を終日無料で運行。熊本弁で“わさもん”といわれる新しいもの好きの県民性もあってか、初日は予想していた10万人を大きく超える、約25万人もの来場者で賑わった。熊本市の人口が約75万人であることを考えれば、単純計算で市民の3人に1人が訪れたことになる。

 こうして華々しく開業したサクラマチ クマモトは、開業10日間で早くも100万人の来場者数を達成。商業施設の“スタートダッシュ”としては、稀に見る快挙といっていいだろう。なお、“開業熱”が下がるはずの翌月以降も来場者数はそれほど衰えることなく推移しており、平日平均約5万人、週末約8~10万人(11月末時点)とまずまずの好調ぶりを発揮している。このサクラマチ クマモトの開業が、熊本市の中心市街地に新たな活気・賑わいをもたらしたことは間違いない。

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 サクラマチ クマモトを中核とする再開発ビルは、地上15階・地下1階建て、延床面積16万2,240m2の大規模複合施設。

 施設全体としては地下1階・地上5階の「商業棟(サクラマチ クマモト)」と、地上15階の「住宅・ホテル棟」、オフィス・バンケット棟である「サクラマチヒルズ」、熊本県内最大のMICE施設「熊本城ホール」で構成され、バスターミナルを始め、商業施設やシネマコンプレックス、ホテル、バンケット、公益施設(熊本城ホール)、マンション、オフィス、保育所、駐車場などの多種多様な機能を備えている。

 高さの異なる複数の棟で構成され、さらに多彩な植栽で覆われた屋上庭園や曲線的なビューテラスなどが特徴的な外観は、まるで中心市街地に出現した“巨大な森”のようだ。これは、「熊本城と庭続き」というコンセプトの下で、熊本城周辺の樹木の緑とも連続した空間を形成することに配慮されたもので、屋上やテラスなどの外構部分をオープンスペースとすることで、誰もが気軽に立ち寄れる都市公園的な役割も担っている。

 このサクラマチ クマモトを含めた一連の開発は、「熊本都市計画桜町地区第一種市街地再開発事業」(以下、桜町再開発事業)として進められてきたもの。事業主は、九州産業交通ホールディングス(株)と九州産交ランドマーク(株)が出資して設立された熊本桜町再開発(株)で、施設の運営は九州産交ランドマークが担当。建物の設計は日建・太宏JVが担当し、施工は大成・吉永・岩永・三津野・新規JV。工期は約2年7カ月間(17年2月着工、19年9月竣工)で、総事業費は約755億円という一大プロジェクトである。

交通拠点と商業施設を始め多彩な機能が集約

 この大規模複合施設のなかで要となっているのが、1階部分に入る「熊本桜町バスターミナル」だ。同バスターミナルは、再開発前の旧・熊本交通センターから機能を引き継いだもので、ターミナルエリア全体のバス通行帯を囲むようなかたちで、島式ホームを含む3面・29バースのプラットホームを設置。

 また、安全面での機能向上のため、県内初となるホームドア方式も導入されている。ここには、九州産交バス・産交バス、熊本バス、熊本電鉄バス、熊本都市バスの4社の路線バスに加え、熊本市と他県とを結ぶ高速バスも乗り入れており、毎日約4,300便のバスが発着。バスターミナルとしては、日本最大級の規模を誇るものだ。なお、複合施設のすぐ正面には熊本市電の辛島町電停もあり、バスと合わせて市中心部における交通拠点としての大きな役割を担っている。

 一方で、複合施設全体の中核的な位置づけなのが、商業施設であるサクラマチ クマモトである。サクラマチ クマモトには、熊本初出店47店を含む全149のテナントが入居。フロアごとに特徴があり、地下1階には、デリやスイーツなどの食品系店舗や、熊本ならではの専門店が軒を連ねている。

2階のコンコースフロアから施設内の各所にアクセス可能
2階のコンコースフロアから施設内の各所にアクセス可能
熊本桜町バスターミナル
熊本桜町バスターミナル

 1階は施設の玄関口として、洗練されたファッションや雑貨の店が充実。また2階はバスターミナルやホール、ホテルの入口とつながるコンコースフロアとなっており、インフォメーションやバス案内所、免税一括カウンターなどの機能を併せもつ「サクラマチスクエア」を擁し、施設全体へのアクセスの起点となっている。3階には専門店が立ち並ぶほか、和洋中のお店が集まるレストランゾーン「SAKURA MACHI 10 DININGS」もあり、子どもから大人まで幅広い世代が利用可能。

 そして4階には、熊本初の3面マルチシアターを含め、9つのスクリーンを備える最新のシネマコンプレックス「TOHOシネマズ熊本サクラマチ」が入るほか、フィットネスクラブや美容室が入り、気分転換や“自分磨き”にピッタリな特別な空間のフロアとなっている。5階には、事業所内保育所「くまもと城下町保育園」や就職支援センターが入居する。

屋上の「サクラマチガーデン」
屋上の「サクラマチガーデン」

 そして施設全体のシンボルともいえる屋上の「サクラマチガーデン」は、池や能舞台、熊本城テラスからなる「桜町庭園」のほか、熊本城を臨むルーフトップコートやルーフトップパークなどで構成され、四季折々の風景を演出する豊かな植栽が特徴だ。また、名前に冠している“桜”の木も開花時期の異なる数種類が植えられており、春には鮮やかなピンク色で施設外観を彩ってくれることだろう。

 複合施設の特徴として、公益施設である「熊本城ホール」が併設されていることも大きい。熊本城ホールは、約2,300人を収容可能な大型のメインホールのほか、多目的ホール、イベント・展示ホールと計3つのホールと、大小19の会議室を備えており、演劇やコンサート、ファッションショーなどのさまざまなイベントだけでなく、最大3,000人規模のコンベンションの開催にも単独で対応可能な、県内最大のMICE施設だ。また、近隣の市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)や熊本市国際交流会館などと連携することで、5,000人規模の学会や国際会議などにも対応することもできる。

 そのほかに住宅・ホテル棟には、マンションデベロッパーの(株)マリモ(広島市西区)が手がける分譲マンション「ザ・熊本ガーデンズ」(159戸)と、総合リゾート企業であるリゾートトラスト(株)(愛知県名古屋市中区)が運営する「ホテルトラスティ プレミア 熊本」(205室)が入居。また、オフィス・バンケット棟「サクラマチヒルズ」には、屋上部分に(株)ブライダルハウス チュチュ(北海道札幌市中央区)が運営する結婚式場「ラソールガーデン熊本」が入居するほか、(株)Lib Work(熊本県山鹿市、東証マザーズ上場)などが先進的なオフィスを構えている。また、地上4階~7階の一部には、車832台、自転車402台、バイク98台を収容できる立体駐車場「サクラマチ熊本駐車場・駐輪場」も整備されている。

(つづく)
【坂田 憲治】

(後)

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