2024年04月24日( 水 )

最下位スタートからの優勝でJ2昇格 ホームタウン活動に見る地域活性化

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(株)ギラヴァンツ北九州

 2019シーズンでは、前年のリーグ最下位クラブが優勝するというJリーグ史上初の快挙を成し遂げてJ2への昇格を果たし、日本サッカー史にその名を刻んだ「ギラヴァンツ北九州」。Jリーグで華々しい成績を残すだけでなく、一方では、地元・小倉の活性化のための活動を地道に続けている。

北九州にプロクラブ誕生

©GIRAVANZ
©GIRAVANZ

 2001年4月、地域密着型のサッカー・スポーツクラブの創設を目標として、北九州市と地元企業などが共同で、NPO法人北九州FCを創設した。当時、九州サッカーリーグに所属していた三菱化学黒崎フットボールクラブの運営を同クラブに移し、チーム名を「ニューウェーブ北九州」に改称。同クラブのトップチームになった。

 同クラブは「北九州からJリーグチームを」というスローガンを掲げ、Jリーグ参加を目指して、地場大手を中心とした企業からの支援を受けながら活動。06年には、既存のスポンサーだけでなく、北九州市からの支援も受けた。07年には、日本サッカー界発展に多大な貢献をした1人である与那城ジョージ氏がチームの監督に就任。Jリーグ経験者やブラジル人選手の加入により、08年からの日本フットボールリーグ(JFL)昇格を決めた。08年2月にはJリーグ準加盟クラブとして承認され、それにともない同年10月10日に(株)ニューウェーブ北九州を設立。同社に運営母体を移した。

 09年にはJFLで4位となり、ホームゲーム入場者数は、同年第15節時点で、Jリーグ加盟基準(平均3,000人)以上の年間入場者数5万1,000人を突破。同年11月30日のJリーグ臨時理事会で、翌10年からのJリーグ加盟が承認され、念願の北九州市で初となるJリーグチームが誕生した。

 Jリーグ加盟にあたって、クラブ名称は「ギラヴァンツ北九州」へと改称された。ギラヴァンツ(Giravanz)とは、イタリア語で北九州市の市花である“ひまわり”を意味する「Girasole」と前進という意味の「Avanzare」を組み合わせた造語。「常に成長・前進を続ける光り輝くチームであり続けたい」「サポーターや地域が輝き、元気になる象徴でありたい」――という願いが込められている。

地元への経済効果

 舞台をJリーグへと移したギラヴァンツは、10年から16年まではJ2で熱戦を繰り広げた。途中、J1昇格が見えたシーズンもあったが、概ね一進一退の戦績。だが、16年にリーグ最下位となったことでJ3に陥落し、以降は再起を賭けた戦いに挑むことになった。17年には、ホームスタジアムが本城陸上競技場から「ミクニワールドスタジアム北九州」(略称・ミクスタ北九州)へと移行したものの、J2昇格は果たせず。さらに、18年シーズンはJ3最下位に終わるという厳しい結果となった。

ミクニワールドスタジアム北九州
ミクニワールドスタジアム北九州

 “クラブ改革元年”として挑んだ19年シーズンは、玉井行人社長が陣頭指揮を執り、フィールドおよびクラブフロント双方の組織改編を断行した。クラブ史上“どん底”の状況のなか、不退転の決意でクラブ一丸となったことで、結果は19勝9分6敗(勝点66)で優勝。前年最下位のチームが優勝というJリーグ史上初の快挙をはたし、見事にJ2昇格など、クラブ再生の第一歩を進めた。

 そのギラヴァンツは、クラブ内だけでなく、サポーター・ファン、そして地域との一体感の醸成のために、ホームタウン活動にも力を入れている。その1つが、ギラヴァンツの活動を支えるサポートショップの拡大だ。

 サポートショップとは、クラブが掲げるスローガン「子どもたちに夢と感動を、街に誇りと活力を」に賛同する店舗のことで、各店舗が定めた条件(クラブのホームゲームチケットの半券を提示、クラブのユニフォーム着用で来店など)を満たすことで、サポーター向けの独自のサービスが受けられるというもの。

 ホームであるミクスタ北九州は、小倉駅および市街地からのアクセスも良く、観戦後のサポーター・ファンによる飲食や宿泊、観光などへの経済効果も期待できる。サポートショップは現在、北九州市内の飲食店を中心に300店舗を超えており、まだまだ増加傾向にあるという。

 また、北九州市をホームタウンとするギラヴァンツだが、周辺の6市11町とも「フレンドリータウン協定」を締結。各自治体との協働で、スポーツの振興や地域の活性化、住民サービスの向上に向けた取り組みなどを推進している。ギラヴァンツの存在による経済効果が、小倉を中心した北九州市内、さらには周辺地域にまで波及し、各地での地域活性化にもつながっていく。今後も地元のクラブチームとして、好成績を残すことはもちろん、地域へのさらなる貢献を期待したい。

【河原 清明】

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