2024年04月20日( 土 )

製造小売から情報製造小売へ~SPA世界ナンバーワンを目指す(2)

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(株)ファーストリテイリング

 カジュアル衣料専門店「ユニクロ」を展開する(株)ファーストリテイリング。SPA(製造小売)のビジネスモデルで急成長してきた。ユニクロは国内外に2,000店舗超。その他のブランドを合わせると約3,500店舗を展開する。売上高は2兆円超え、世界の大手SPAと肩を並べる。現在、製造小売から抜け出て情報製造小売に変貌を遂げようと、新たな挑戦に向かっている。それは、情報を中心とした新しいサプライチェーンへの変革だ。

2017年2月に始動した「有明プロジェクト」

 だが、ファーストリテイリングはそこに安住することなく、その取り組みをさらに進化させる。新たなモノづくりの仕組みを構築するために、「有明プロジェクト」を始動させ、2017年2月に東京・有明にオフィス兼物流拠点を開設した。

 今までの製造小売から抜け出て情報製造小売に変貌を遂げる新たな挑戦だ。柳井会長兼社長は、情報製造小売を目指す背景とその定義を次のように述べている。

 「現代は、国境、産業、企業の境目がなくなり、人、モノ、情報が密接につながるようになった。ITの発達による情報革命が起こり、我々のような企業にも『産業革命』が起こりつつある。これまでの企画・計画・生産・物流・販売といったサプライチェーンに代わり、お客さまがほしいと思う商品をすぐに商品化できる、情報を中心とした新しいサプライチェーンへと、業態を変革していく必要がある。それが、我々が目指す『情報製造小売業』だ」。

 そして、情報製造小売になるためには、仕事のやり方を変えていくことが必要と考え、企画、製造、物流、販売とそれぞれの部署にわかれていたのを一気通貫の体制に変えた。

 全社の改革運動としても位置づけ、社員1人ひとりがリーダーになり、小チーム制のフラットな組織による「即断・即決・即実行」で仕事が実践されるようにした。

無駄なものを「つくらない」「運ばない」「売らない」

 情報製造小売業の究極の目的を、「無駄なものをつくらない、無駄なものを運ばない、無駄なものを売らない」こととしている。

 この実現のために、企画・計画・生産・物流・販売といったサプライチェーンのすべてのプロセスを、有明プロジェクトを推進することで変えていこうとしている。

 2018年夏からGoogleとの共同プロジェクトがスタートし、2019年には機械学習や画像認識技術などの活用に向け、Google傘下のGoogle・クラウドと協業、商品トレンドや需要を予測し、顧客ニーズをとらえた商品づくりに役立てている。

 今後は、世界中から集めたビッグデータや膨大な画像分析によって、ファッションで流行する色やシルエットがいち早くわかるようになることも可能になり、商品づくりに反映させることも可能になる。

 ファーストリテイリング傘下で「GU」を展開する(株)ジーユーがもっている膨大な情報も有効活用することで、顧客がほしいと思う商品の企画や、精度の高い数値計画を効率的に行うことができるようになる。

 すでに、ユニクロのコア商品をより良いものに変えていく「UNIQLO UPDATE」にも取り組み、成果を上げている。顧客から寄せられた膨大な意見を分析し、商品の細部にいたるまで細かい改良を加えるこの取り組みは、より快適な「LifeWear」(ライフウエア)への進化につながっている。

 製造小売は計画生産だが売れ行きに応じて追加生産も発生する。しかし、タイミングが間に合わず、販売機会ロスを招いてしまうこともしばしば起こる。

 生産数量の予想精度の改善、企画から生産あるいは 生産リードタイムの時間短縮、物流改革が行われることで、 こうした問題は解決しつつあり、今後は、AI(人工知能)やアルゴリズムなどの新しい技術を駆使することさらに精度を高めていく。

自動倉庫で物流改革、サプライチェーンを効率化

 有明プロジェクトの推進でみえてきた大きな成果の1つが物流改革だ。物流は製造小売における重要なテーマ、効率化することでサプライチェーンがより機能し、収益性も向上する。

 そこで、物流機器メーカーの(株)ダイフクとの協業により、最新の自動化機器とシステムを有明倉庫に導入し、2018年秋からユニクロのEコマース専用の自動倉庫としてフル稼動を開始した。

 すべての商品に電子タグ(RFID)を導入し、倉庫内での商品の搬入、仕分け、ピッキング、検品などの作業プロセスをほぼ無人で行い、24時間稼動のため、繁忙期の人手不足による配送遅延という問題も解決した。

 今後3年間で約1,000億円の投資を行い、将来的には世界中のすべての拠点に自動倉庫を導入していく考えだ。

 サプライチェーンのすべてのプロセスを変革するためには、優れたパートナーとの提携が不可欠で、商品面では、東レとはウルトラライトダウンを商品化、(株)島精機製作所とはホールガーメント技術による3Dニットも開発している。

 こうして、世界中の膨大かつ有益な情報を活用し、商品企画に生かし、最適な生産量を実現し、顧客満足度を高めて支持を集めようとしている。

(つづく)
【西川 立一】

<COMPANY INFORMATION>
代表者:柳井 正
所在地:山口県山口市佐山717-1
設 立:1963年5月
資本金:102億7,395万円
売上高:(19/8連結)2兆2,905億円

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