2024年03月29日( 金 )

製造小売から情報製造小売へ~SPA世界ナンバーワンを目指す(3)

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(株)ファーストリテイリング

 カジュアル衣料専門店「ユニクロ」を展開する(株)ファーストリテイリング。SPA(製造小売)のビジネスモデルで急成長してきた。ユニクロは国内外に2,000店舗超。その他のブランドを合わせると約3,500店舗を展開する。売上高は2兆円超え、世界の大手SPAと肩を並べる。現在、製造小売から抜け出て情報製造小売に変貌を遂げようと、新たな挑戦に向かっている。それは、情報を中心とした新しいサプライチェーンへの変革だ。

国内を上回る海外売上高、インド、ベトナムにも進出

ロンドンの街

 小売業にとって出店は成長の原動力、ユニクロの国内の店舗数は817店舗(2019年8月期)。ここ数年、店舗数が減少し飽和状態を迎えている。

 これに対し、海外は右肩上がりに店舗数が増え、2015年に国内店舗数を上回り、売上高は2018年8月期に8,963億円となり、国内を初めて超えた。売上の拡大だけではなく、収益性も高まり、営業利益1,188億円と国内ユニクロ事業とほぼ同水準にまで達している。

 ユニクロの海外進出は、2001年9月、英国のロンドンへの出店から始まった。当初は苦戦したが、欧米、アジアと展開エリアを広げ、店舗数は1,379店舗(2019年8月期末)。このうち、グレーターチャイナと呼ぶ地域は、中国大陸711店舗、香港29店舗、台湾67店舗で合計807店舗と6割近くを占める。2019年8月期の売上高は5,025億円(前期比14.3%増)、営業利益は890億円(同20.8%増)と2ケタの増収増益となった。

 Eコマースの売上も2ケタの増収と好調で、売上構成比は約20%まで上昇している。今後は店舗とEコマースを成長の両輪として、さらなる事業拡大を目指そうとしている。

 グレーターチャイナの店舗数は、2021年8月期に1,000店舗を突破する見込みで、ユニクロのブランド認知度を中国全土に広げることで、既存店の好調な売上を維持すると同時に、Eコマース販売の売上構成比を30%まで高めていく考えだ。

 2019年7月にはインド、12月にはベトナムにも進出、中国、東南アジアからインドまでの地域を「世界経済の成長センター」と位置づけ、大量出店を継続していく計画だ。

 これからもグレーターチャイナに加えて、東南アジア地域での事業拡大が、ファーストリテイリング全体の業績を牽引していくものと思われる。

 「インド市場は長期的に見れば、中国市場と同じくらいの高いポテンシャルがある。繊維産業は古い産業で、これからインドの人たちと一緒に改革をしていかなければならない。20年以上前に我々が中国の生産工場の人たちと、ユニクロの生産体制をつくった時と同じだ。インドでは文化、宗教が地域によって異なるため、お客さまが求める服のニーズも違うことが予想され、クルタなどの民族衣装も企画・販売する必要がある。小売業として、お客さまへのサービス精神や接客方法なども従業員に教え、小売ビジネスを一から育てる」(柳井会長兼社長)。

 柳井会長兼社長は、インド市場に大きな期待を寄せ、「日本の人口はわずか1.2億人だが、グレーターチャイナのホワイトカラーの人口は数億人、アジア全体では10億人以上と推測されている。日本の10倍、20倍の市場」ととらえ、ここで成長をたしかなものにしたいと考えている。

 一方、欧米での事業展開は、欧州では売上規模が1,000億円に達し収益性が高まっており、新しく進出したスペイン、スウェーデン、オランダの業績も順調に推移している。

 グローバルで見ると、ファッションビジネスでうまくいっているブランドは、欧州を源流としているところが多く、ここで大都市における最高の立地に大型店を出店し、ブランドの存在感をより高めていこうとしている。

 苦戦している米国では、経営が安定し赤字幅も縮小し、黒字化も視野に入ってきている。米国は世界で最も大きなマーケット、その市場で本格的に成長するには、ユニクロのブランド認知度はまだまだ低く、欧州の出店戦略と同じように、米国の大都市に旗艦店や大型店をつくり、米国でユニクロというブランドの存在を知ってもらうことを重視している。

(つづく)
【西川 立一】

<COMPANY INFORMATION>
代表者:柳井 正
所在地:山口県山口市佐山717-1
設 立:1963年5月
資本金:102億7,395万円
売上高:(19/8連結)2兆2,905億円

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