2024年04月19日( 金 )

コンビニ業界大激変時代~月刊コンビニ 編集委員 梅澤 聡 氏(2)

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 コンビニ深夜休業の是非。各方面からさまざまな“論客”が参戦してメディアを賑わせた。誰もが毎日のように利用するコンビニ。1日1店舗の利用客数を800~1,000人、全店舗数を5万8,000とすると、毎日5,000万人がコンビニを訪れている計算になる。国民の生活の一部に組み込まれたコンビニが今、内部で深刻な問題を抱えている。一連のメディア報道が人々に不安を与えたことはたしかだろう。コンビニ業界は今後どこへ向かうのか。

チェーン大手は出店抑制~過去最低の店舗増加率

セブン-イレブンが沖縄初出店
セブン-イレブンが沖縄初出店

 19年度はチェーン大手がそろって既存の「加盟店支援」を打ち出した。事業を拡大するよりも既存の加盟店を大切にして、加盟店の満足度を高めてチェーン全体を再構築する時期にきたとする認識である。市場は飽和している、と公言するチェーントップもいれば、セブン-イレブンのように「意思のある踊り場」と表現するトップもいる。捉えどころに違いはあるものの、19年度は過去最低の店舗数の伸び率になった。

 出店数から閉店数を差し引いた店舗数の「純増」は、セブン-イレブンが(沖縄の別法人50店舗含めて)150店舗、ファミリーマートは100店舗、ローソンは0店舗と一斉にブレーキをかけた格好だ。とくにセブン-イレブンは12年度から15年度まで年間1,000店舗以上の純増を重ねて、16年度、17年度も800店舗以上を純増させてきた。店舗数トップチェーンの足踏みに業界全体の成長性が問われる結果となった。

 しかし19年4月の会見でセブン&アイ・ホールディングス(セブン-イレブン・ジャパンの持株会社)の井阪隆社長は「コンビニが飽和しているとは考えていない、まだ成長できる」と明言する。実は「コンビニ飽和論」は過去にもあった。2000年代初頭からセブン-イレブンは既存店売上の前年割れが続いていた。07年度には全店平均日販が60万円を下回り、08年度にはtaspo(タスポ)の導入で持ち直し、09年度はその反動で再び降下する。そんな一進一退の時代に井阪氏は09年5月にセブン-イレブン・ジャパンの社長に就任する。

 「当時はメディアの皆さまや、同業他社のトップ(当時ローソン社長・新浪剛史氏)からも“コンビニ飽和論”が盛んに言われていた。そこで私はコンビニのパラダイムを変えようと考えた。マーケットを俯瞰すると、少子高齢化、働く女性の増加、遠くまで買物に行く不便が増しているなかで、小売店舗数は1980年代から見ると3分の1以上が減ってしまっている。そこで(「開いてて良かった」から)『近くて便利』を提唱し、新たなニーズを掘り起こして成長させてきた」(井阪氏)。

 外的な要因も大きかった。11年3月の東日本大震災がきっかけとなり、それまでコンビニを利用する習慣のなかった主婦や高齢者を取り込んで客数の増加につなげていった。弁当や調理麺といった主食系だけではなく、惣菜の品ぞろえを充実させて夕夜間の食卓ニーズに対応した。

 いったんは成長に陰りを見せたコンビニ業界であったが、震災を契機に客層を拡大し、アクセルを踏んだ状態で、前述したように年間1,000店舗の純増を継続していく。こうした経験を踏まえて、成長が止まったように見えても実は「踊り場」にいるだけで、再び成長の階段を上がる可能性はあるとセブンは考えている。

(つづく)

<プロフィール>
梅澤 聡(うめざわ・さとし)

札幌市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、西武百貨店入社、ロフト業態立上げに参画、在職中に『東京学生映画祭』を企画・開催(映画祭は継続中)。1989年商業界入社、販売革新編集部、月刊『コンビニ』編集長、月刊『飲食店経営』編集長を経てフリーランスとなり、現在は両誌の編集委員を務める。アジアのマラソン大会と飲食店巡りをまとめた『時速8キロのアジア』を商業界オンラインに連載中。

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