2024年03月29日( 金 )

「まるで、政府への忖度強要だ!」イベント中止・延期要請に悲鳴を上げる九州の演歌公演業界

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 安倍首相は2月26日、「全国的なスポーツ、文化イベントなどについては、今後2週間は中止・延期、または規模縮小などの対応を要請することといたします」と政府の新型コロナウイルス感染症対策本部で語った。

 国難とまでいわれる今回の新型コロナウイルス問題「国民として協力するのは当然だが政府のやり方が汚い」と語るのは、大手航空会社を退職後、主に演歌タレントの九州での興行のエアチケット、ホテルなど移動に関するすべての手配を手がける福岡市に本社を置くA社社長と九州エリアをメインとする興行会社B社社長。

 政府のやり方のどこに問題があるのか両氏に尋ねると、「要請という言い回し」と間髪入れずに返答が返ってきた。「要請ではなく命令や指導でしかるべきではないか。政府は国民や企業に責任を押し付けて、現実から逃げている」という主張を両氏はお持ちだ。

 中止命令や指導であれば、当然政府も各行政も何らかの責任を負うことが明確だが、要請ならば「お願いはするけど後は、あなた方当事者が考えて勝手に決めてください」と言われたのも同然だ。あとは、自分たちでイベントの中止・延期を決定しなければならない。

 実際、B社は26日以降に予定されていた5つのイベント公演を4月20日までに自主的にすべて取りやめざるを得ない状況となり、タレント事務所へのギャラ、飛行機などの移動費、会場費および運営費などの損失が発生している。タレントの日程に空きが無ければ延期することも叶わず、お客さんへのチケット代の払い戻しを考えると、今後政府からの助成制度などが受けられなければ、倒産もあり得る事態となっている。

 それでは、イベント中止・延期要請がなければ事態はどのように違うのか?と尋ねると、タレントが公演を断ってくれば、タレント事務所に責任の一端を、お客さんが自主的に公演に来なければチケット代金の損はお客さんに、会場が貸さないといえば、会場にも責任が発生し、損失を分散できる。皮肉をこめた言い方をすれば、お客さんが、入ろうが入るまいが、約束通りに開演さえすれば最悪の事態は免れる。実際、興行を決行する興行会社も存在する。

 しかし、両氏は中止・延期に踏みきった。「常識や自身の良心と興行の利益を、天秤にかけると、要請をのむしかないでしょう」まるで、安倍首相からの要請に従うように、忖度を強要されているようだとも語っていた。

【相崎 正和】

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