2024年04月25日( 木 )

中国経済新聞に学ぶ~アジア細胞治療学会の下坂皓洋理事長に聞く・お隣なので、困ったときは助け合うべきだ(後)

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 2月18日現在、日本でのコロナウイルスによる新型肺炎の感染者は616人となった。北海道、沖縄、名古屋、東京、横浜、和歌山で相次いで報告され、タクシーの運転手、患者を搬送する消防隊員、ハワイ帰りの会社員など様々である。

 日本で感染が深刻になりつつある。武漢からの渡航者に始まり、バスの運転手、ガイド、免税店の係員、そしてクルーズ船の乗客といった状況である。そして今は、一般の日本人も発熱やせきなどを訴えている。

 そして政府も、新型肺炎は現在「国内発生の早期段階」に入ったと認めている。

 そこで、アジア細胞治療学会の下坂皓洋理事長に、急遽取材を依頼した。その理由はとても簡単で、17年前に中国でSARSが発生した際、支援をしてくれたからである。下坂理事長は現在、中国の協和医科大学、第四軍医大学、北京大学腫瘍医院の客員教授を務めている。

※2月20日発刊の中国経済新聞の記事を掲載しています

 ――安倍総理大臣は、簡単な検出用の試薬を早期に開発する必要があると言っているが、それはいつごろになりそうか。

 下坂 日本の製薬会社は研究熱心なので、だいたい二週間もあればつくり出せるだろう。

 今はこうした簡単な試薬がないので、感染者がいても病原体を検出するのにおおむね6時間ほどかかり、それもすべての病院でできるわけではない。従って、クリニックや小さい病院の場合、熱やせきのある人すべてに病原体のチェックをすることはできないので、単なる風邪とみなされてしまう。なので帰宅中、もしくは帰宅後にウイルスが拡散してしまい、本人の病情も重くなってしまうのである。

 現在開発中の試薬は、わずか15分で感染の有無を判断できるので、クリニックレベルでも使える。従って、早め早めの対応をすることがコロナウイルスヘの最も有効な治療策である。

 もし呼吸困難に陥ったら、人工呼吸器をすればだいぶ楽になる。日本はまさに人工呼吸器の生産大国で、どの病院も取りそろえており、メーカーにもふんだんな在庫があるので対応できるはず。ただし、感染者が万単位にのぼったらそうはいかないだろうが。

 ――SARSの時にはかなりのご支援をいただいたが、今回は中日両国でどのように連携すればよいか。

 下坂 感染は、その国が悪いのではなく、単にその国が病源であるといったものなので、このような事態になったら必ず各国で協力して、人類共通の敵に対応しなければいけない。

 中国は日本のお隣なので、困ったときは助け合うべきだ。それと、もし隣が火事になったらすぐに消火しないと、こちらにも燃え広がってしまう。だからウイルスを早期に抑え込むことは、日中両国の政府と医学界がともに抱える課題であり、責任である。

 今回、武漢で発生してから、政府の方ではかなりの支援策を取っているが、では我々医学界はどうやって中国を助けるのか。一番大事なのは、早く試薬を閧発して中国で使ってもらうことだと考える。日本の薬剤メーカーは中国に工場があるので、すぐに生産できるはずだ。中国にこういった試薬があれば、ただちに感染をたしかめられるし、多くの健康な人も家に閉じこもる必要がなくなり、会社も業務再開して、経済活動が徐々に回復していくだろう。

 それと、日中両国の医療機関が早く感染情報や治療方法をシェアするよう強く願う。日本にもすでに回復した人がいるし、中国でも百人以上が治療を終えているので、両国の医療スタッフが治療方法について話し合い、製薬会社も加われば、症状別に最も有効な治療方法が打ち出せるし、新薬の開発にもつながるだろう。この点では私も力をお貸ししたい。

 ――免疫治療の専門家として、新型肺炎を治すのにどういった治療方法が信頼できるとお考えか。

 下坂 今回の件では現場で治療にあたっていないので、あれこれという資格もない。新薬の開発は時間がかかり、すぐには無理だろう。タイでの治療方法はかなり効き目があるとの話は聞いている。タイにはエイズの感染者が多いので、感染症の治療研究についてはかなり先を行っている。新型肺炎の感染者を治療する際に、エイズの治療薬を適切に使えばかなりの効果があるらしく、我々も注目している。

 中国でも日本でも、亡くなった人はほとんどが六十歳以上のお年寄りであることがわかっている。年を取ると慢性病にかかりやすくなる。お年寄りの死亡は、多くはコロナウイルスがすべてというわけでなく、複数の病気を併発したことにより免疫力が大きく低下したためである。よって免疫力や細胞の自然殺傷力を高めれば、コロナウイルスを防ぐこともできる。

 この点について、日本のNK細胞を使った方法は、がんの治療でかなり役に立つほか、ウイルスの感染対策にもかなりの効果がある。なぜなら、活性化したNK細胞は多種類の細胞と合成し、分泌するので、免疫を調節したり造血したりできるほか、細胞を直接殺すこともできる。臨床治療の際にNK細胞の活用を考えてほしい。

 ――お忙しいなか、ありがとうございました。

 下坂 中国の医学界とは30年以上のお付き合いをしており、我々には厚い友情がある。ここ数日、上海や浙江省から武漢に派遣されている国家医療チームのリーダーは、みんな私の友人である。体に気を付けて、似たようなウイルスの発生時に最善の対応ができるように治療の経験を早めにまとめてほしい、とのメールを送った。中国のことは我々のことでもあり、今回のウイルスを乗り越えられるよう、一緒になって戦いたい。

(了)


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