2024年04月19日( 金 )

封鎖された武漢から新型肺炎患者が脱出、北京に!党幹部関係者か?

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黄の娘が住む北京の団地に張り出された掲示板
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 2月末、中国でSNSを中心に1つのニュースが大きな反響を呼んだ。21日に武漢女性刑務所を満期で釈放された「黄某英」(以下、黄。)という女性が、封鎖されているはずの武漢市を離れ北京市に行き、そこで新型肺炎に感染していたことが発覚したのだ。事態は黄の娘が住む北京の団地に張り紙が出され、そこに武漢市からきた女性が感染していることが記載されていたことにより発覚した。

中国当局の調査結果報告
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 武漢は最も外出規制が厳しく、警察、防犯カメラなどが厳重にチェックしており、当局の許可がない者は出入り不可能であり、かつ首都・北京は武漢を含む湖北省からの出入りを禁じている。そのため、黄がどうして武漢を抜け出せたのか、また北京に入れたのか、疑惑を呼んでいた。中国政府もこの問題を重視し、調査に乗り出した。司法、公安当局からなる合同調査チームが結成され、3月2日に発表された同チームの調査結果によると、主な経緯は以下の通りとなる。

 黄は2月17日に武漢女性刑務所での刑期を終えたが、すでに武漢で新型肝炎が爆発的に流行し、交通が規制されているなか、湖北省西部の恩施市在住の黄の弟、北京在住の黄の娘は武漢まで黄を迎えに行くことができないと刑務所に訴えていた。当時、刑務所内に新型肝炎の感染が疑われる者がいたことから、黄は2月17日も刑務所内に残り、隔離監察の措置を受けることとなった。17~21日、黄は13度検温を受け、18、19日には37.3°Cの熱が出ていた。その間、黄は警官に対し、帰宅させてくれるよう何度も頼んだ。警官は黄の娘と連絡を取り、同人の元夫を交えて、21日午前に黄を監獄から武漢北高速道路料金所まで連れて行き、娘らに引き渡すことを約束した。

 21日午前、警官は黄に14日間自宅で隔離を受けることの保証書を書かせたうえで武漢北高速道路料金所まで連れていった。武漢北高速道路料金所には、ほかにも李という名の湖北省孝感市出身の刑期満了による釈放者がおり、そこで李の息子に引き渡されている。当時、そこで勤務していた武漢市西湖区公安分局長青街派出所の公安警察は黄に対して感染の原因を探査し流行を防ぐという職責を怠った。黄らは北京ナンバーの車で22日未明に北京に戻り、その後の24日に黄は新型肝炎であることが確認された。

 合同調査チームは、同案件は武漢女性刑務所で発生したものの、その根源は湖北省司法庁、同省監獄局にあると結論づけている。また、武漢市西湖区公安分局を含めて責任を有し、法に則って関係者に処分を下すとしている。

 上記の報告によると、現地の警官が独断で人道的配慮から手助けしたかのように見えるが、現場の者がこのような大胆なことを行うにはリスク高すぎる。また、同報告は黄が北京に入れたことを説明していない。中国のSNSには、黄が党幹部の関係者ではないかという投稿がなされては削除されているようだ。なお、北京市政府の副秘書長(市長室副室長に相当)は2月29日に、今なお少数の者が湖北省から北京に入ってきていると述べている。

【茅野 雅弘】

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