2024年04月25日( 木 )

滞在型レクリエーション拠点 多世代が楽しめる海の中道海浜公園へ

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全体イメージ
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公園のなかで非日常体験が可能に

 国土交通省・九州地方整備局は、2019年8月からPark-PFI(公募設置管理制度)を活用して民間事業者を公募していた国営海の中道海浜公園における新たな滞在型レクリエーション拠点の整備運営を行う事業予定者として、三菱地所(株)を代表企業とし、積水ハウス(株)、(一財)公園財団、(株)オープン・エーで構成されるグループを選定した。

 今回の三菱地所グループによる提案では、事業コンセプトを「海の中道 パーク・ツーリズム」と掲げ、“公園”のなかで“非日常体験ができる旅”を行える場所の提供を目指している。

 事業対象区域は、入園料を徴収している「パークエリア」の一部で、園内では中央~東部にあたる「光と風の広場」「博多湾パノラマ広場」「環境共生の森エリア」と位置付けられているエリアの約159ha。ここに、収益部分の公募対象公園施設として、ヴィラや20数基の球体テントによる宿泊施設のほか、大人が楽しめる立体アスレチック、レストラン&カフェバー、バーベキューも楽しめるデイキャンプ場、ドッグランや厩舎、センター棟などの多様な施設を計3万825m2にわたって整備する。

センター棟イメージ
センター棟イメージ

 また、公共部分となる特定公園施設として、大屋根下の交流施設や屋内遊び場、サニタリー棟の合計906m2も整備。管理運営計画では“リフレッシュ”“遊び”“学び”といったテーマを示し、それに対応する多様なアクティビティを提案。海の中道海浜公園の特性を踏まえたうえで、「憩う」「学ぶ」「泊まる」の3つの機会提供により、公園および周辺地域を最大限楽しめるものにしていく意向だ。

 これまで、水族館や動物園、児童公園、プールなどを擁する西~中央部に比べて、今回の事業の対象エリアは賑わいに乏しいという課題を抱えていた。また、利用実態調査による年代別の来園者割合では、子どもから30・40代までの主にファミリー層の利用に比べて、50代以上の利用は少ないという偏りもあった。今回の新たな滞在型レクリエーション拠点の整備によって、東部エリアでの賑わいを創出するとともに、幅広い世代への誘客効果が期待されている。

 今後は、今年5月をメドに基本協定を締結。その後に各施設の整備着工を経て、21年春ごろの運営開始を予定している。事業期間は、協定締結から約20年間。

立体アスレチックイメージ
立体アスレチックイメージ

国営公園内で民間活用による活性化を

 海の中道海浜公園は、福岡市東区の志賀島と奈多・和白・三笘エリアをつなぎ、博多湾と玄界灘とを隔てる陸繋砂州―通称“海の中道”の中央部の東西約6kmの区間において、約540haという広大な敷地で展開されている国営公園である。全国に17カ所ある国営公園のなかで、5番目に設置された。なお、九州においては同園のほか、吉野ヶ里歴史公園(佐賀県)が国営公園である。

 同園は、元々は旧米軍博多基地として使用されていた場所だが、1972年に返還されたことで、その後の跡地利用についての種々の検討が行われていた。その結果、同地においては良好な自然環境を有していたことから、大規模都市公園として広く国民の利用に供されることとなり、73年から公園建設に関する本格的な調査を実施。75年5月に都市計画が決定されて翌76年度から事業着手となり、大芝生広場や動物の森などが位置する西エリアから本格的な整備が進んでいった。

 そして81年10月、全体の約10分の1にあたる約59haの供用開始をもって開園を迎えた。その後、整備が完了した区域より順次供用が開始され、83年7月に「サンシャインプール」、87年4月に「ホテル海の中道」(現・「ザ・ルイガンズ スパ&リゾート」)、89年4月に「マリンワールド(海洋生態科学館)」などの主要施設も次々とオープン。計画面積539.4haのうち、現在までに297.7haが供用されている。

 なお、主に東エリアに広がる未供用区域の一部には、15年まで福岡ソフトバンクホークスが2軍本拠地および練習場として使用していた野球場や、アビスパ福岡が練習場として使用する球技場のほか、テニスコートや児童公園などの多彩なスポーツ施設で構成される「福岡市雁の巣レクリエーションセンター」も含まれている。

 これまで同園では、国営公園としては初めてPFI事業を導入し、民間の資金と経営力、技術力などを活用した官民連携による長期的な管理運営を推進してきた。すでにPFI事業として、水族館(マリンワールド)やホテル、マリーナ、テニス場などは管理運営を民間事業者が実施。各施設とも利用者数が増加するなどの効果が出ている。また、19年3月には、新たな官民連携の取り組みを推進することを目的に、「官民連携による魅力向上推進方針」を策定。今回のPark-PFIによる滞在型レクリエーション拠点の整備運営を始めとして、長期的かつ継続的な魅力向上の取り組みを進めていくとしている。

 都市部の至近地でありながらも、国営公園とすることで自然や緑を担保している海の中道海浜公園。多世代が楽しめる都市のなかの憩いの空間として、これからもさらなる存在感を示すことが期待される。

バーイメージ
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【坂田 憲治】

九州地方整備局建政部 公園調整官 平塚  勇司  氏

 ここ海の中道海浜公園は、旺盛な土地利用が進む福岡市内でありながらも、国営公園として整備されていることで、豊かな自然と緑がきちんと保護されていることが特徴の1つです。福岡都市圏における“緑の軸”の構成要素でもあり、皆さまの憩いの場として親しまれてきました。ただし、これまでの園内施設はどちらかといえば子どもやファミリー層向けのものが多く、大人向けのものは手薄な印象でした。今回の事業では、これまで足りなかった大人向けのアクティビティなどを補うことが目的でもあります。来年迎える開園40周年の記念事業的な位置づけでもあり、あらゆる世代に楽しんでいただける、より魅力あふれる公園にしていきたいと思います。

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