2024年03月28日( 木 )

【BIS論壇No.312】『コロナウイルス問題』

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 NetIB‐Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。今回は2020年3月8日付の記事を紹介。

 中国湖北省武漢を震源地とするコロナウイルス新型肺炎(COVID-2019)は3月7日現在、世界100カ国・地域へ伝染が広がり、世界全体の感染者10万3,000人、死者は18カ国・地域で合計3,519人に達し、2002~3年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の死者774人を4倍上回っている。

 とくに発生元の中国は8万人(死者3,070人)、韓国7,041人(48人)、イラン5,823人(145人)、イタリア4,636人(197人)、日本1,157人(13人)~ カッコ内は死者数~が上位5傑だ。(朝日新聞3月8日)。日本では北海道98人(死者3人)、愛知69、東京64(1)、神奈川42(1)、大阪41、千葉24、和歌山14(死者1)、兵庫10、高知10、クルーズ船707人(死者7)、チャータ便15名、その他11人だ。

 当初、発生源は武漢の生鮮市場で、とくに蝙蝠が原因だとの説が流布された。その後、コロナウイルス単独ではなく、HIV菌や4種類の蛋白なども混在しており、人工説もささやかれた。武漢の細菌研究所からの漏えい説や、陰謀論も取りざたされたが、その後、下火になった。メディアは毎日、感染発生数のみの報道に躍起となっているが、発生の原因とその対策についてもう少し目を向け、原因を分析すべきではないか.

 ともあれ、感染が100カ国、地域に拡散し、世界的な感染爆発が起こりつつあり、これはかつてのペストにも比肩する様相を呈しつつある。しかし国連のWHO(世界保健機構)の対応も今1つ頼りない状況である。G7やG20が対応に積極的に動き出している様子も見えず、世界的対応が後手後手に回っている状況である。各国とも「Me First」の感を免れない。

 日本では遅ればせながら、中国、韓国からの訪日客の隔離などに動き出しているが、遅きに失したとの意見も強い。これらの根底には情報の的確なる分析によるリスク管理のまずさがある。安倍政権には米国のNSA(国家安全保障局)をまねた同じような機関があるが、この機関はいまこそ日本のコロナウイルスの危機管理に動き出すべき時であるにも関わらず、ほとんど姿が見えないのは嘆かわしい次第だ。有名無実では情けない。日本版NSAの奮起を期待する。

 一方、安倍首相はまともな議論もなく、急きょ藪から棒に3月2日から4月8日までのひと月以上も小中高校の問鎖を一方的に決定し、混乱を招いている。専門家の意見を慎重に聴取し、学校開鎖の悪影響などの十分な分析もなく、藪から棒に学校閉鎖を決定したことに国民の間に批判が多い。「選択」3月号によれば、これは今井首相補佐官と安倍首相の独断専行とのことだが、TPPや日米FTAについても今井補佐官の動きが問題視されているが、メデイアはさらに真相を究明すべきであろう。

 これらの根底には安倍首相の「森かけ問題」「桜を見る会」、さらには不法な「検事長定年延長」問題などに関する常識を逸する不祥事があるのではないか。まさしく日本では行政の司法、立法府に対する越権が頻発し、民主主義の根底たる三権分立が日常茶飯事に侵されつつあるように見える。それをメディアも国民もさして問題視していないのは情けない次第だ。かつてマッカーサーは日本人の程度を小学生に例えたそうだが、昨今の安倍政権のやり方は小学生以下ではないか。

<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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